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  • 2022年3月27日 株情報

    (2022年3月27日執筆)
     
    恥ずかしながら昨年9月5日以来、実に半年ぶりの更新となります。
    この原稿執筆に要する時間は大体平均8~10時間(今回は、保存資料にざっと目を通して原稿の全体構想練る時間も含めて完成まで20時間強かかりました)くらいかかるのですが、最近は休日も他にやらなければいけないことが多く、書く時間を思うように取れない中で気がついたらあっという間に半年経っていました・・ 年度末が近づいて更新作業をお願いしている業者さんと話す機会があり、一発奮起して今ようやく書き始めたものです。もうしばらくは更新頻度が低い状態が続くかもしれませんが、当サイトに書かれている数々の内容は、1999年に個人投資家の自由なオンライン取引が可能になった元祖の時代に株を始めた筆者自身の数多くの試行錯誤や実地体験なので、最近の変動の激しい相場で、壁に当たって悩んでいる方にはヒントになることがどこかに隠されているかもしれません。当サイトが個人投資家の皆さまの活路の糸口になれば幸いです。
     
    それでは今回は、以下4項目に沿って解説していきます。
    (なお前回原稿の末尾で触れた損切りポイントについては、途中【Ⅳ】で解説が出てきます)
     
    【Ⅰ】ウクライナ情勢
    【Ⅱ】需給動向
    【Ⅲ】ファンダ要因
    【Ⅳ】チャート分析

     

    【Ⅰ】ウクライナ情勢

     
    改めて日々の経済ニュースチェック作業&その体系化整理の重要性を再認識したのが、このウクライナ問題でした。今となって明暗を分けるほどに非常に重要な記事だったと分かるのが、昨年11月12日のブルームバーグのこの記事だったのです。その内容を大まかに箇条書きにして抽出すると、
     
    ・情報源は事情に詳しい複数の関係者
    ・アメリカは欧州連合(EU)の同盟国に対し、ロシアがウクライナ侵攻を検討している可能性があるとして警告を発した
    ・ウクライナ国境付近でのロシア軍増強の動きを米政府が注視する中、米当局者らはEU側に軍事行動の可能性を巡る懸念を伝えた
    ・同関係者によると、この見解はアメリカが欧州各国政府とまだ共有していない情報に基づいている
    ・バイデン政権の考えに詳しい複数の当局者は、アメリカの懸念は公になっている証拠に裏付けられていると語った
    ・ホワイトハウス当局者は11日夕、アメリカはロシア軍増強の動きについて同盟国と協議していると説明
    ・アメリカはウクライナをパートナーと考えているとした上で、ロシアによる一切の攻撃的行動を非難
     
    こうした内容だったのです。
    私も当時のこの記事は「まさかね?」と思いながらも保管はしましたが、この現代に戦争が起きるわけないと思い込んですぐに忘れていたのです。この記事が決定打のひとつだったと理解するのは、もっと後になってからでした。しかし、アメリカ政権内にOBを送り込んでいる機関投資家は、すでに当時この情報の決定的な重要性を認識していたと思われます。そうです、株価の大暴落につながることを見越していたのです。ダウ、ナスダック、S&P、日経平均、TOPIX、マザーズ指数などのチャートを見返してみると、ばらつきはあるものの、11月下旬からダウントレンドに入り始めたことが分かります。今回掲示した日経平均の日足チャートをご覧下さい。ポイント①(11月26日 筆者注・・この日付を覚えておいて下さい、数行後の日経新聞:信用買い残14年ぶり過去最高のニュースが出た日と同じ日です)で短期的上昇トレンドラインB割れを起こしています。ひそかに売りに転じる機関投資家が徐々に増加していたことが、当時のこうした各チャートに現れていたと言えるでしょう。
    先ほどウクライナの件が決定打のひとつと述べましたが、昨年11月には別にもうひとつの決定打もありました。私はそちらのほうには気がついて、懸念を持ったのです。それは「株、信用買い残が14年ぶり高水準 3兆7401億円・26日時点: 日本経済新聞」というニュース(次項【Ⅱ】需給動向で詳述)でした。
    (●ニュースの分析については、渋谷高雄株式投資大百科第6章第5項等を参照。また信用取引の「売り残」「買い残」に関しては同大百科363ページ前後を参照)
    そして驚くべきことに、このニュースが出た11月26日当日こそが先の日経平均チャートの短期的上昇トレンドラインB割れポイント①の大陰線だったのです。
    (●トレンドラインについては、同大百科第3章第3項等を参照。またトレンドライン割れについては、同大百科第1章第3、4項等を参照)
    よって昨年11月末の時点で「しばらく上値は重いかもしれない」という予想をすることはできました。そうした警戒をしつつ、翌12月のマーケットを観察していましたが、日経平均、TOPIX、ダウ、S&Pは再び上がってきているのに対し、横ばいのままのナスダックと、下がり続けるマザーズ指数は気になっていました。もっとも、日経平均、TOPIX、ダウ、S&Pが上がっているのは、昨年末特有の外国人機関投資家による税制対応による需給要因が大きいと思っていました。それはアメリカでは、特に昨年は数年に1回の税制改正で節税対策をやらないといけない年だったので、11月後半から持ち株をいったん売却する動きが多く、そして年内には買い戻す必要があるため、ダウ、ナスダック、S&Pには昨年11月後半に下がり、12月にかけて上がる動きとなっているわけと理解できたのです。よって12月のマザーズ指数以外の上げは節税対策による買戻し、そこまでは動きの理由を追うことはできていたわけです。
    (こう振り返ってみると、ロイター、ブルームバーグ、モーサテ、ストックボイスなどのチェックは、やはりサボってはなりませんね)
    問題は年明け以降でした。
    今度はマザーズ指数の下げを追う形で他の全指数も下がり出してしまい、1月上旬にいったんもみ合い状態となった時に分水嶺の場面が到来したのです。
    ここからさらに下がるのか?
    それともここが大底なのか?
    迷う場面・・
    この時点でマーケットには金利上昇とインフレ懸念が台頭しておましたが、
    売り煽りの記事は、それらが株価の大暴落につながると言い、
    買い煽りの記事は、むしろそれは景気の強さなのだから今が底と言い、
    (後述の【Ⅲ】ファンダ要因の冒頭で「買い:ゴールドマン」VS「売り:モルガン・スタンレー」の掛け合い的な記事比較が具体的な参考になるでしょう)
    私も含めて多くの個人は迷いに迷ったと思います。
    そうした迷いの中で、急速にクローズアップされてきた大問題が、ロシアはウクライナを本当に攻撃するのかどうか?ということでしたね。いわゆる有名な戦争アノマリー「開戦前は売り、開戦後は買い」が、その後の未来予測に影響してくるであろう大問題です。筆者も含めて誰もが
    「戦争なんて起きてほしくない」
    「この現代に、いくらなんでも戦争が起きるとは思えない」
    このように思うのは人間心理として仕方のないことです。そうしたバイアスがかかりがちな中で、以下のような迷いが生じます。
     
    ・原油価格を高く維持したいだけのプーチンのポーズに過ぎないのでは?
    ・侵攻しても東部ドンパス地域併合だけが目的の限定的なものに過ぎず、ベラルーシやクリミアに配備したロシア軍は、ウクライナ軍を分散させるための囮では?
    ・まさか本当に全面侵攻するつもりなのか?それにしてはロシア地上軍の兵力20万人では少ないように思えるが?
     
    などなど、筆者も迷いがさらに迷いを生んで、迷路に迷い込んだような感覚に支配されたことをよく覚えています。ただ1月上旬のこの時点で、その後にプーチンが本当にウクライナに侵攻するのであれば、その時期だけは以下ふたつの理由から予想することはできたのです。
    (実際には2月24日に侵攻を開始)
    ひとつめは北京オリンピックが終了する2月20日まではおそらく大丈夫で、それ以降が危ないこと。この理由は、プーチンとしては開戦後に西側から経済総制裁が予想されるので、中国は味方にしておく必要があり、そのために習近平のメンツは立てる必要があったからです。
    ふたつめは、実はコレかなりマニアックなことで気象に関することなのですが、筆者も含めて何らかの第二次世界大戦での独ソ戦ゲームをプレイしたことがある方にはピンとくることなのです。それが何かと言うと、酷寒のソビエトの地では冬は川も凍って、その上を重たい軍事車両すら通れるのですが、冬から春にかけての雪解けの季節になると、一転して大地は雪解けの水でぐちゃぐちゃと化すために(泥濘地形と言います)、暖かくなって大地が乾くまではドイツ軍でもソ連軍でも戦車部隊が動けなくなるのです。つまりその時期になってしまうと、実質的に侵攻ができない。よって、オリンピックが2月20日に終了して、ウクライナの大地が3月の春到来と共に泥沼と化すことを考えれば、逆算すると2月21日からの数日が危なそう(実際にその通りになった)との予想は、情報をロイター、ブルームバーグ、モーサテ、ストックボイスなどにしか頼ることができない個人でもできたと言えるでしょう。
    (番組のアナリストの方にも、このウクライナ特有の地形と気象のことを一生懸命勉強したと照れていた方がおられました。それを聞いていた筆者は、この方は独ソ戦ゲームをプレイしたことがないんだなと思ったものです)
    今となっては1月上旬の段階で(チャートがまだ揉み合っている時点)、すでに機関投資家は2月下旬のロシアの全面侵攻の確定情報を得ていたと推定されます。それは後述する【Ⅱ】需給動向を読めば確信できることです。しかし情報皆無同然の個人投資家でも、「2月21日からの数日が危なそうで、戦争アノマリーで開戦までは下がる過去の経験則があるのであれば、1月上旬のもみ合いはいったん様子見」という判断は、ギリギリできたと言えるでしょう。
    さて問題は今後どうなっていくかです。
    2月下旬の報道によれば、アメリカ上院議員マルコ・ルビオが公表したプーチン大統領の作戦計画の内容として、24時間以内に制空権を確立、36時間以内にウクライナの軍事通信を破壊、48時間以内にキエフを包囲、72時間以内に傀儡政権を樹立することにあったそうです。それが1カ月に及んで、ロシア軍はウクライナ軍の激しい抵抗にあい、主要都市を占領できておらず、代わりにロシア軍は主要都市を砲撃し、住宅エリアを荒廃させており、ウクライナの人口4400万人のうち約4分の1が避難する事態となっています。一方でロシア国防省はこの3月25日、ウクライナにおける特別軍事作戦の第一段階はほぼ完了したとし、ウクライナ東部ドンバス地域の完全解放に焦点を当てると発表しました。ウクライナ軍主力をキエフ戦線から東部戦線に振り向けさせるための欺瞞作戦(ソ連時代からロシア軍はフェイク工作をよくやる)の可能性もあり油断できませんが、マリウポリだけは何としてでも陥落させて(例え生物化学兵器を使ってでも)、ロシア本土からクリミアまでの回廊を確保した上で、それらの地の割譲を条件に停戦を持ちかけてくる可能性は考えられます。ロシア軍が短期決着に失敗した以上、制裁の長期化でロシア国民が窮乏して打倒プーチンの機運が高まってくるリスクが想定されるのであれば、できるだけ多くの分かりやすい手土産(領土)を手にして早期講和を目指すのは、たしかにプーチンの心理としてしっくりきます。とにかくウクライナ問題は、終わりがいつ、どのような形で見えてくるのか?これを探すことに尽きます。見えてくれば、安心感から株価が急騰するシナリオが考えられるからです。もっとも、見えてこないうちから最近のようにひたすら上がり続け、終わりが見えたら材料出尽くしで急落というケースもあり得ます。マーケットは皮肉に動くことも多いからです。
    もともとは、多くのエコノミストの共通コンセンサスとして、今月3月がインフレのピークと言われていたのです。それがウクライナ問題で長引きそう、というのが新たな共通コンセンサスです。またマーケットは、2.5%の7回利上げまでは折り込んでいる模様です(詳細は後述【Ⅲ】ファンダ要因にて)。つまり今後の利上げは悪材料にはもうならないが、ウクライナは展開次第で悪材料が残るということになります。例えばロシア軍が生物・化学兵器を使う誘惑に負けた場合など・・それ以外の材料は折り込み済みと言え、それが最近の株価上昇のひとつの潜在的理由なのでしょう(他の理由は後述【Ⅱ】需給動向にて)。
    例えば2月26日のロイター報道では、機関投資家の見解として、世界中が物理的な介入を行わずに、ウクライナで起きていることを是正、または少なくとも食い止める方法を模索しており、NATO軍ウクライナ直接派兵を避けるためにできるどんな対応も、ウォール街はおそらく肯定的と見なすゆえに最悪期は過ぎ去った可能性が高いという伝え方をしています。
    また3月1日のブルームバーグ報道では、同じく機関投資家の見解として、「直近の地政学的な動き(ここではウクライナ問題)を背景に売りに向かえば、激しい相場変動に飲み込まれるリスクがある」という指摘と、「歴史的に見ると軍事衝突の大半において、特に局地的な衝突では、投資家心理への悪影響が長くは続かない傾向にあり、最終的に買い場となる」という説明を紹介しています。
    そして実際に確かに、ダウ、ナスダック、S&Pの各日足チャートは、いわゆる「W底」のチャートパターンを形成しました。
    (●W底については、同大百科第5章第3項等を参照)
    そして外国人投資家比率の高い日本株も連動して上がってきたという構図なのが現状です。

     

    【Ⅱ】需給動向

     
    次に、買い方と売り方の力関係を示す需給動向を探っていきましょう。
    今回の大暴落はリーマンショックに匹敵するという声も聞かれますが、例えばマザーズ指数に関して言えば、今回の下げは確かにリーマンに匹敵するものだったのです。リーマンショックの時の日経平均は、直近の高値約14000円から約4ヶ月で半額近い約7000円まで大暴落しました。そして今回のマザーズも、11月直近の高値約1200ポイントから約3ヶ月で同じく半額近い約650ポイントまで大暴落したからです。
    (●リーマンショックと、そこからの立ち直りについては、同大百科第1章を参照)
     
    問題はここから先です。
    先ほどの【Ⅰ】で、昨年11月26日の信用買い残が14年ぶり高水準というニュースについて触れましたが、もう少し詳しく見ていきましょう。昨年11月26日時点の日経平均は約28800円、マザーズ指数は約1130ポイントでした。この時の信用買い残は3兆7401億円。それが約4ヶ月後の先週3月18日時点で3兆0400億円と、実に7000億円も減少しています。現在の3月25日時点での日経平均は約28200円、マザーズ指数は約760ポイントですが、個人投資家の特性から、戻り待ち売りにより買い残はさらに減少していると予想されます。つまり、日経平均に関して言えば、約4か月の期間を経て株価はたったの600円しか下がっていないのに、信用買いは7000億円分(率にして2割近く)も投げさせられてしまった。人間心理として、これは悔しい。よって、押したら買い直したいという個人投資家の潜在的買い圧力は強いと推定できるのです。
    さらに需給に関する注目点を、時系列的に追っていきましょう。
    昨年の夏から秋にかけての早い段階で、機関投資家は上記【Ⅰ】で述べたようにロシア軍によるウクライナ侵攻が本当にあると確信していたと強く推定されますが、そう思う根拠のひとつに、昨年12月14日の機関投資家BofAの調査による「ファンドの現金保有が拡大、逆張りの株買いシグナル」というニュースがありました。この時期はまだ、下がり続けているのはマザーズ指数だけで、ダウ、S&P、日経平均、TOPIXは上がっており、ナスダックは横ばいといったチャートでした。つまり逆張りも何も、マザーズ以外の株価は上がっているので問題はないと解釈できる場面であるにも関わらず、「機関投資家が、このタイミングでキャッシュ比率を高める? それは逆張りの株買いシグナルというよりも、むしろ株価下落に備えてのことでは?」という警戒感が頭によぎったのです。ファンドが現金保有を拡大させていたということは、先々において下落を想定していたからという解釈こそ、むしろ成り立つわけです。そして12月28日は、朝の株情報番組においてファンドマネージャーさんが「キャッシュが大量にMMFに滞留」と解説していましたが、これもまた先と同じく、機関投資家の大量キャッシュ化の動きに不安がさらに増幅したのも今でもよく覚えています。それが上述【Ⅰ】で述べた1月上旬のチャートもみ合い状態におけるウクライナ侵攻の実現性の場面を悩む場面につながっていきました。そこで仮に2月下旬に本当に戦争になるのであれば、機関投資家が先回りして現金比率を高めていたことにつながってしまう・・とハッとなったのです。
    そして1月25日と27日の急落時前後に目にした機関投資家の動きを示すニュースが26日付けの以下のものです。
    『世界の株式相場は1月に、コロナ禍の始まり以降で最悪のパフォーマンスになろうとしているが、ゴールドマンやシティのストラテジストは今が買い時だとの見方を示した。ゴールドマンのストラテジストは26日のリポートで「当社の見解では、ここからの指数の大きな下落は買いの好機と見なすべきだ。」と論じ、シティのストラテジストは「実質利回りが安定するに伴い、成長株の急速な水準訂正は緩やかになる可能性がある」との見方を示した。特にシティのストラテジストらは、意外なことにアメリカ外の市場に強気で、中でもイギリスと日本の生活必需品やヘルスケアなどのディフェンシブセクターを選好しているというのです。もちろん機関投資家によるハメコミ記事の危険性は個人投資家として常に想定しなければなりませんが、しかしこれの裏付け的なニュースは別にあったのです。1月24日にダウ、ナスダック、S&Pが猛烈な下ヒゲをつけましたが、JPモルガンがまとめたデータによれば、取引開始後1時間以内に13億6000万ドル(約1550億円)相当の株式が投げ売りされて、例えばナスダック指数などは一時約5%安となったものの、売り疲れの兆候を待っていた強気派に投げ売り株が丸呑みされて、その後の目覚ましい反転で下ヒゲ終了したというのです。さらに意外なことにそのデータでは、ヘッジファンドは株式へのエクスポージャーとレバレッジが低下しているものの、JPモルガンプライムブローカレッジ部門がまとめたデータによれば、低下は市場全体とほぼ一致しているので、ヘッジファンドは積極的にポジションを解消しているわけでもない、というのです。つまり機関投資家は、ウクライナの未来を知ったことで昨年から現金比率を一定レベルで高めてきたものの、積極的なポジション解消まではしていない、ということになります(この具体的数字については、後述で100兆とか46兆とか27兆とか23兆などの金額が出てきます)。その行動の意味するところは、ゴールドマンやシティの「ここからの指数の大きな下落は買いの好機」という推奨は、あながちハメコミでもなく彼ら自身の実際の行動も伴っていたわけで、今回は信頼できるかもしれないと思うに至ったわけです。
    関連して今度は2月9日に機関投資家JPモルガンが、今後の株式相場は上昇が見込まれるとの主張を補強する上で、ほぼ間違いないと同行が説明する指標を特定したと発表しました。同ストラテジストによれば、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)が1カ月移動平均を50%余り上回る水準に上昇した場合に買いシグナルが現れ、この指標は過去30年間にわたり、リセッション(景気後退)期を除けば100%正確だといい、直近では1月25日にシグナルが見られたそうです。VIXの同シグナルが現れたのは1990年以降で21回で、S&P500種株価指数はその半年後に平均9%上昇。この法則が唯一当てはまらなかったのは2008年の金融危機時で、S&P500種はその6カ月後も33%安と低迷していました。
    (筆者補足:もっとも時期が数カ月ズレただけで、その後は上がっていきました。そう考えると100%の法則になってしまいますね)
    そして2月24日にプーチンは本当にウクライナに侵攻しました、しかも東部限定ではなく全面的侵攻です。いくらアノマリーで「開戦前は売り、開戦後は買い」と言われても、今度は一方が核兵器を持つ軍事大国ロシアなので、筆者も恐ろしく、普通は躊躇してしまう場面でしょう。ところがその日の午前で日経平均は下げ止まり、その原動力が長期資金勢とみられる断続的な大口の買いが観測されているというヘッドラインが流れたのです。つまりゴールドマンやシティの言う「ここからの指数の大きな下落は買いの好機」というのは、他の多くの機関投資家も同じことを考えていたのか、と思えたわけです。なお、その2月24日に朝の株情報番組においてファンドマネージャーさんが「ここから先の株価下落はダメ押し程度の延長戦に過ぎないので、戻りが急速すぎるかもしれず、戻った時にはあっという間に置いていかれる、だから打診買いくらいはしておいたほうがいい」と述べていましたが、現在、まさに本当にその通りとなっていることには驚きです。この「戻りは急速で、戻った時にはあっという間に置いていかれる」という警告は、これに先立つ1月24日にもすでに聞かれており、機関投資家インガルズのストラテジストなどは「売りがあまりにも大きく、パニック売りや積極的な売りが多く見られたものの、それが反転する時は、極めて速く反転する可能性があると思う」とすでに警鐘を発していました。1月下旬時点で、株価バリュエーションが新型コロナ禍初期の水準に低下していたほか、ナスダック100指数が2018年以降で最も売られ過ぎの水準に達しており、他にも売りの強さに対する買いの強さを示すテクニカル指標、ブルームバーグ・フィア・アンド・グリード指数は約2年ぶりの低水準に低下していました。この時はまだ、FOMCでタカ派的な政策への傾斜があらためて示されることは警戒され、金利上昇が株のバリュエーション上昇に打撃を与えると見込まれているとの論調大でした。しかしながらそうした論調の中でも、虎視眈々と相場反転のチャンスを伺うことが必要だったわけです。
    そして3月3日になると、ゴールドマンがまとめたプライムブローカーのデータによれば、株式ロングショート戦略のヘッジファンドは2月、4カ月ぶりに個別銘柄の買い越しに転じ、それも過去1年で最大級だったそうです。ウクライナ侵攻やインフレ懸念で、個別銘柄の買いはリスクだらけに思えて、筆者も含め多くの個人の足がすくむ中、ハイエナヘッジファンドは機会到来と完全に勢い付き、ヘッジファンド運用者らは、最近の下落を受けた押し目買いが2022年には奏功すると考えていることが、これらのデータに現れていると言うのです。
    またしても、してやられたのかもしれません・・・
    そして3月8日。
    東証1部の売買代金が4兆768億円と、今年初めて4兆円の大台乗せ。筆者がこれまで書き述べてきた一連の流れから、投げ売りと突っ込み買いで商いが膨らむホントの教科書通りのセリング・クライマックスだったようです。
    さらに注目すべきは、同日に目にしたこのニュースでした。先に触れたように、昨年来ヘッジファンドはリスクを減らすためにポジションを解消し株式を売却、ショートカバーを進めてきたわけですが、完全なるポジション解消に至ったわけではないものの、それでもモルガン・スタンレーの集計したデータによれば、ボラティリティーファンドやトレンド追随の商品投資顧問業者(CTA)などシステミック戦略ファンドは昨年12月以降に世界で株式2000億ドル(約23兆1000億円)相当を売却したそうです。これの意味するところは、これまでのいきさつも含めて箇条書きに整理してみると以下になります。
     
    ・昨年のアメリカは、数年に一度の税制改革で11月に売り、12月に買いの需要が発生した
    ・機関投資家は2月にウクライナ侵攻で株価の崩壊が起きることを予見していたが、12月の買い需要は税制対策に伴うものなので、それはそれとして執行した上で、ウクライナリスクに備えてファンドの現金比率は「ある程度」は高めるようにしておいた
    ・しかし日本のマザーズ指数だけは、11月26日に信用買いが過去最高水準に達したため、買いは見送られた、よって同指数だけ12月以降も下げ続けた
    ・昨年12月から今年3月8日までに全世界で約23兆円相当の株が売却され換金された
    ・しかしゴールドマンなどの機関投資家が言うには、それでも全体の中での部分的なリスク低減の動きに過ぎず、買いの好機がいま到来している(後述するBofAなどのデータによれば、アメリカの株式ファンドに2021年に流入した資金が約46兆2000億円であり、その規模は世界的ファンドとほぼ同じ。つまり昨年は全世界で100兆弱の資金が流入して、今回はそのうちの23兆が換金されたという試算が成り立つ。そして後述するように、これから27兆が買い直されそうということだ)
    ・ロングショート戦略のヘッジファンドは2月、4カ月ぶりに個別銘柄の買い越しに転じ、それは過去1年で最大級
     
    書いていて筆者も、なんか狐につままれたような感覚になります。
    するとあれよあれよという間に今度は3月10日、クイックヘッドラインで、債券から株式に大量の資金流入の可能性(by グローバルストラテジー)というニュースが流れました。さらに数日後、これでもかと3月15日に以下のニュースを目にした筆者は驚きました。JPモルガンによれば、年金基金と政府系ファンドが評価額の落ち込んだポジションを再構築する態勢にあると予想。それは2300億ドル(約27兆1000億円)相当の株式買いにつながり、世界の株式相場を最大10%押し上げる可能性があると分析。その分析では、株式買いという点で2020年以来の大規模なリバランスであり、1000億-2300億ドルの資金が流入すれば、世界の株式相場は5-10%上昇し得るそうです。つまり整理すると、昨年12月から先日3月8日まで全世界で23兆円分の株が売られましたが(そのうちの0.7兆円分が日本の信用買い分ということになりますね)、これから先は27兆円分の株が買われる需給の見込みがある、ということになります。そして現に、3月8日以降の日経平均は、たった3週間で3500円近くも戻ったのです。
    それにしても、中国などの海外市場に比べて日本株の戻りが強い印象を受けますが、思い当たるのが以下のニュース群です。これらの根拠から想定するに、もしかすると27兆の買い直しのうち、日本株の比率が高く中国株の比率が低いのかもしれません。
    まずアメリカには、中間選挙のある年は株があまり上がらないというアノマリーがあります。ということは、より大きなパフォーマンスを求めて、27兆の買い直し資金はアメリカ外により大きな割合で振り向けられる可能性が考えられます。それは上述した1月26日にシティが意外にもアメリカ外の市場に強気でいることにつながります。
    開戦「前」の2月17日に、それを裏打ちするようなシティも含めた機関投資家の分析報道がありました。その内容を簡潔にまとめると、シティグループによれば、
     
    ・アメリカ株式市場から他国の株式市場へと資金が向かうローテーションの動きは始まったばかり
    ・投資家はアメリカを除く世界的なファンドを選好する姿勢を見せ始めている
    ・シティはアメリカ株に関して特に弱気というわけではないが、投資家が資金をアメリカ外に振り向ける土台はできている
    ・BofAとEPFRグローバルのデータによれば、アメリカの株式ファンドには2021年に約4000億ドル(約46兆2000億円)の資金が流入し、その規模は世界的ファンドとほぼ同じだったが、こうしたトレンドは変化し始めていて、運用資産に占める比率で見た場合、アメリカを除く株式ファンドへの資金流入ペースはアメリカを含むファンドを過去8カ月のうち7カ月で上回った(※筆者考察・・この記事が出たのが2月17日なので、過去8か月ということは昨年の7月くらいから資金シフトが起きていたことになる)。こうした動向は今年に入って市場で見られる動きと一致しており、S&P500種株価指数のパフォーマンスはMSCIオールカントリー・ワールド指数を下回っている
    ・投資家はインフレ抑制を目指すFRBの積極的な政策引き締めにより、将来の業績期待で評価されている割高なハイテク中心のアメリカ株は圧迫される状況
    ・さらなるローテーションにつながる資金はまだ大量にあり、アメリカ外への分散化を目指す投資家に好機をもたらし得る投資先として、伝統的なバリュートレードであるイギリス、業績モメンタムが健全に見える日本、先進国が政策を引き締める中で政策を緩和している中国が主な候補
     
    さてここで注意を払わねばならないのが、この分析はロシアによるウクライナ侵攻前のものだということです。では、ウクライナ侵攻後で何か変化が生じたのか?その点を考える上でハッとさせられたのが、開戦後1か月が経過した3月24日になってから、外国人投資家が今年に入ってから、中国株を香港コネクトスキーム通じて相当に売り越しており、これは同スキームが始まった2014年以来四半期として最大というヘッドラインを見たからでした。そしてこの原稿を執筆している現在、3月25日に国際金融協会(IIF)によると、ロシアが2月下旬にウクライナに侵攻して以来、中国から投資マネーが前例のない規模で引き揚げられており、新興国の資本フローで極めて異例の変化を示したというニュースが新たに出たのです。
    これはどうしたことでしょうか?
    開戦前では、上述の通りにアメリカ外への分散化を目指す投資家に好機をもたらし得る投資先として、イギリス、日本、中国が主な候補になっていたのに。それが開戦後、IIFの24日のリポートでは、他の新興国市場への資本流入が続いているにもかかわらず、高頻度データで中国の株・債券から大規模な資本の流出を検知したことが明らかにされた。このリポートでは「我々が目にしている中国からの大規模かつ激しい資本流出は、前例がない。特に他の新興市場からの同様の流出が見られない」と指摘されています。「もっとも、資本流出のタイミングはロシアによるウクライナ侵攻後に当たり、外国人投資家が新たな観点で中国を見ている可能性があるが、この点に関して明確な結論を出すのは時期尚早だ」と慎重な言い回しに留めています。つまり、ロシア株と同じく独裁国家の中国株は、台湾への野心で紙屑になる危険をはらんでいるから早いうちから減らした方がいいと言いたいけど今は言えないのが本音なのでしょう。
    しかし同じく3月25日の別のニュースで、香港に拠点を置く欧州企業の半数近くが、事業や人員の一部もしくは全てを香港から移す方針という衝撃のニュースも出ました。1年以内に全面移転計画との回答が約25%、部分移転は24%という高さであり、その主な理由として、新型コロナウイルス対策として講じられている厳しい入境・隔離規制が主要金融都市としての魅力を損ねているということですが、潜在的な本当の理由が先ほどのように容易に想像できるわけです。それこそが、ロシアという独裁国家の今回の暴走により、ロシア投資やロシア資産が紙屑になる可能性が高いことで懲りた世界の投資家が、台湾だけでなく全世界に向けての野心をもはや隠そうともしなくなってきた共産党一党独裁国家の中国が投資対象から外されつつある大逆流の初動であるというものです。中国はESG投資(社会正義の投資)の対象外になっていくということであり、そうなると先の投資対象から中国が脱落して、イギリスと日本に余剰分が向かう流れができる、だから3月上旬以降の日本株急反発という現象につながった?というロジック?? 
    加えてもともとアメリカ株にも4月から5月は税金の再投資で株価が堅調というアノマリーがあることも気にはなります。
    いずれにせよ、答えはこれから株価が明らかにしてくれるでしょう。
    そういえば、上述の1月25日と27日の株価急落時前後の26日付けのニュースにおいて、シティが意外にもアメリカ外の市場に強気で、中でもイギリスと日本を選好しているという材料を引用しましたが、1月のこの時点で中国には言及がなかったということは、ロシアのウクライナ侵攻後に、独裁体制国家に対する自由主義陣営の目線が厳しくなり、そして投資対象から外されていく近未来すら読めていた??
     
    まさか?!

     

    【Ⅲ】ファンダ要因

     
    次に、今後の景気動向を占うファンダ要因を探っていきましょう。
    まず時は、昨年4月14日のパウエル議長講演のあたりまでさかのぼります。それまでFRBが、金融政策の正常化の第一歩となるテーパリングの開始に関して慎重な姿勢を維持してきた最大の理由は、長期金利の上昇が先行することで景気回復を阻害するという事態を防ぐことにありました。この点、日本の黒田総裁が今だ依然として金融緩和を続けている(続けざるを得ない?)のは、金融緩和縮小が景気後退を招く危険性大と恐れているからでしょう。しかしアメリカでは、4月当時すでにテーパリングの開始が早まるとの見方が台頭しつつあって、その最大の理由がアメリカの景気回復が本格化した点にあるとされていました。もともとFRBには、リーマンショック後の低インフレ環境にいずれは終止符を打たねばならないという強い意向が存在していたそうです。このようにファンダ要因の今後最大の着目点は、もともとはアメリカでは景気回復が本格化したという前提があったところに、それがウクライナショックで腰折れして軌道修正せざるを得なくなるほどの影響が今後あるのか、ないのかを見極めることにあると言えるでしょう。それについては、先ほど【Ⅰ】ウクライナ情勢のところで、金利上昇とインフレ懸念が台頭しつつある中で、売り煽りの記事は、それらが株価の大暴落につながると言い、買い煽りの記事は、むしろそれは景気の強さなのだから今が底と言いましたが、本年1月14日に出た以下の記事に具体的なことが書いてあります。
     
    【買い煽り】ゴールドマン
    ゴールドマンは2022年末までに10年物米国債利回りが2%になると予想し、現水準からの上昇は限られるとの見通しを示した。従って、将来利益の割引率による成長株のバリュエーションへのリスクも限られるとリポートで分析した。2022年の成長減速の可能性が高いことが成長株を支持する論拠になり、金利環境で調整した成長株のバリュエーションは2000年に比べはるかに無理がないと説明。また、米連邦準備制度による金融引き締めが経済成長を損なうとの懸念は成長株よりも、シクリカルなバリュー株により大きな打撃を与えるだろうとも指摘した。

     
    【売り煽り】モルガン・スタンレー
    モルガン・スタンレーは13日のリポートで、債券市場はバリュー株が成長株に対しさらにアウトパフォームすることを示唆しているとし、成長懸念はバリュー株への主要なリスクではあるものの、この懸念が顕在化している兆候はまだほとんどないと論じた。

     
    どちらの言い分もそれぞれもっともらしく聞こえ、迷いは深まるばかりと思っていると、今度は1月24日に、S&P500種は1950年代以降12回の利上げ局面で平均リターンは9%であり、中間選挙が市場のリターンを抑制するも年終盤から好転か?という記事が出ました。これによれば、FOMCの引き締めサイクル開始時にアメリカ株式相場が過去にどう推移したかをまとめたところ、歴史的には堅調というのです。過去のデータでは、FRBの利上げ局面ではアメリカ株は好調な傾向があり、2022年は年初よりも良い基調で終了する可能性が高そうであるとの事。1950年代以降の12回のアメリカ利上げサイクルで株式相場は年率で平均9%上昇し、そのうち11回でプラスのリターンで、唯一の例外が1973年から75年のリセッション(景気後退)に重なった72年から74年の期間だけだったそうです。ただし11月の中間選挙は今年の株式相場に打撃を与えかねないもう一つの要因で、市場のリターンは選挙結果とそれに伴う政策変更を巡る不確実性から、年終盤まで抑制される傾向があります(上述した中間選挙のある年は株があまり上がらないというアノマリーのこと)。ただ、中間選挙年の最後3カ月と翌年1-3月(第1四半期)と4-6月(第2四半期)は、4年間の大統領選挙サイクルで好調が目立つ時期だと1950年以降のデータから分析しているそうです。
    たしかに、FRBが昨年にアメリカの景気回復が本格化したと自信を持ったのなら、ウクライナ問題さえなければ、仮定の数式として、
     
    経済成長率>インフレ率>金利
     
    こうなって、結果として成長率がインフレや金利を丸呑みしてくれたら、トータルではお釣りがくる皮算用が成り立つのですね。そういえば過去のバーナンキショック時、金利は1%台から3%台へ上昇しましたが、それでも株は上がっていました。
    ですがやはり、ロシアによるウクライナ侵攻の今後の影響は、これまでのそうした景気回復の見かたを軌道修正せざるを得ないほど深刻な可能性はありそうです。直近の3月23日に、国際通貨基金(IMF)はウクライナでの戦争を理由に2022年の世界成長率予想を下方修正する見通しだと発表しました。IMFゲオルギエワ専務理事はまた、リセッション(景気後退)に陥るリスクのある国が増加していると明らかにしました。ゲオルギエワ氏は2022年の世界経済はなお拡大が見込まれるとしつつ、成長率は従来予想の4.4%を下回るとの見通しを示したそうです。IMFは春季会合を開催する4月に最新の世界成長率予想を公表します。ただアメリカについては、ファンダメンタルズが非常に強いと評価したことは注目に値します。一方で、コロナ危機からまだ脱せず、大きく後れを取っている国は一段と大きな打撃を受けるとした上で、リセッションに陥るリスクもあり得ると述べたそうで、これはゼロコロナ政策に固執する中国のことを暗に指していると思われます。アメリカをはじめとする先進国で利上げの動きが広がっているが、そうした金融環境の引き締めは多くの国に大きなショックを与えると同氏は予想したそうです。
    そして同日の3月23日、新たな解釈として「インフレ時に株式は債券に比べ有利」という記事も出ました。どういうことかと言うと、アメリカの企業業績回復が本格化したこととウクライナ問題の狭間の中で、1970年代と80年代初頭のインフレ期からの経験則から、株式市場は経済がこうした金利上昇では崩壊しないという見かたもでき、機関投資家のファンドマネージャーによれば「インフレ環境では株式は債券よりも明確な利点があって、それは株式は価格を調整できる企業と連動するのに対し、債券はそれほどではない」という指摘がされたそうです。この3週間の株価急反発を見れば、FRBが利上げ方針を表明し、ウクライナでの戦争は激化し、米国債利回りが大幅上昇する中でも、株式投資家は数十年ぶりの高インフレやそれに伴う長期債利回りの急上昇にひるむ様子を全く見せていないと指摘し、こうした状況を説明する方法をアナリストらが模索する中で支持を集め出した1つの理論が、株式が消費者物価の高騰時に保有すべき最良の資産の1つだという説と言います。S&P500種構成企業の利益は、顧客への価格転嫁力を支えに今年も増加が見込まれていて、ブルームバーグの集計データによれば、S&P500種構成企業の2022年1株利益のアナリスト予想は、過去1カ月に1%余り上方修正され225.70ドルに増加。機関投資家クレディスイスは、資源高など投入コスト上昇が企業の利益率を圧迫すると言う人もいるが、データでは利益率が材料価格上昇と連動していることが示されており、これは価格決定力と営業レバレッジによるものであり、最近の資源価格高騰は今年のより堅固な利益率と矛盾しないとリポートに記しました。
     

     

    【Ⅳ】チャート分析

     
    さて、以上の【Ⅰ】【Ⅱ】【Ⅲ】で収集した情報を念頭に置きながら、チャート分析をしてみましょう。
    今回掲示した日経平均の日足チャートをご覧下さい。
    まず、大局的な下降トレンドチャネル(トレンドラインレンジとも言う)AとA’が認識できます。
    (●下降トレンドチャネルについては、同大百科第5章第13項等を参照)
    現在はA’に下から接近しつつある状態なので、セオリーからすれば、いったん反落するか、もみ合いに入ることをメインシナリオとすべき場面です。先の②ポイントがまさにそれです。ただ、上記【Ⅰ】【Ⅱ】【Ⅲ】で述べてきたように、ロシアが生物・化学兵器を使う恐れがあるとはいえ、潜在的な買い圧力も無視できない状態が迷いを生みます。特に【Ⅱ】需給動向の前半部分で述べたように全世界27兆バズーカもそうですが、株価がたったの600円しか下がっていないのに、信用買いを0.7兆円も投げさせられてしまった日本の個人投資家の復讐に燃えるリベンジ買いが控えている可能性も高い。かといってチャート的に筆者の私でも今この位置では買いたくないなあ、もうちょっと下がらないかなあ、といったような気にさせられている絶妙なチャートです。一番無難な買いポイントというのは、ここからいったん押して再度の上昇に転じた時に新しい上昇トレンドチャネルが形成されるので、そのチャネルの下限ラインで拾っていくというものです。このチャート上では、先にBとB’が形成されていました、それと似たようなイメージですね。
    (●上昇トレンドチャネルについては、同大百科第5章第6項等を参照)
    時間はかかりますが、【Ⅱ】需給動向での分析と、ウクライナの勝利と解放と復興を信じるのであれば、新しい上昇トレンドチャネルの形成に成功すれば、長い期間に渡って機能しそうではあります。しかし前回のBとB’では、ほどなく①ポイントにおいてトレンドラインB割れを起こしてしまったので、新しい上昇トレンドチャネルの形成失敗となったのですが、今にして思えば機関投資家が当時すでにウクライナ侵攻を知っていたはずなので、このトレンドライン割れ①は必然であったと言えます。では今回はどうでしょうねえ・・? 27兆の買いを信じるかどうか、そして中国が減らされる分だけ日本とイギリスに振り向けられる資金が本当に増えるのであれば・・? 5日移動平均線をなかなか割らないパターンで上がり続けるアベノミクス初動のようなパターンもあり得るのが悩ましい。これの可能性は低いと思うのですが(どうも機関投資家にそう思わせられ惑わされて、買うな買うなと催眠術をかけられているような気もしますが)、つまりこちらのシナリオとは、前回の②ポイントで上方ブレイクアウトに賭けるのと同じことであり、もはや5日移動平均線を大きく割ることはなく、割ってもちょっとで、それも1日2日もすればすぐに切り返してくる展開に賭けるということになります。ここで半年前のことで恐縮ですが、前回原稿で次回解説しますと述べたロスカットポイントというのは、チャート上の③ポイントで、ここでいったん5日移動平均線を割ってしまって、かつ5日移動平均線が下向きになってしまったものの、なんとか切り返して9月24、27、28の3営業日は5日移動平均線上で粘れたが、29日にまた割って5日移動平均線も完全に下向きとなってしまった場面で、ここでロスカットでした。当時にメインシナリオと考えていたのが、このままバブル崩壊以降最高値奪還というものだったので、そのシナリオでA’ライン付近で買いを入れたのなら、③でいったん引くのがシナリオセオリーになるわけで、今回も今大きく買うのであれば、前回③と同様な展開になったら少なくとも部分ロスカット、そして5日移動平均線割れが短時間で済み、再び出来高を伴った上昇でA’を上方ブレイクアウトしてきたら買い直しといった見通しになります。これがサブシナリオでしょうか。
    (●上方ブレイクアウトについては、同大百科第5章第5項等を参照)
    対してメインシナリオは先に述べたように、時間はかかりますが、新しい上昇トレンドチャネルの形成を待つというものです。
     
     
     
     
    言い遅れましたが、ウクライナの皆さまの勝利を祈ってやみません。民衆の犠牲と悲しみには心が痛みます。ウクライナ国民の心痛はいかほどか、降伏すれば目先短期的にはこれ以上の死者も出ませんが、しかしそれは、過去の栄光と亡霊に捉われしがみつく独裁者・独裁国家の奴隷になるということです。彼らが約束を守るはずがない。ソ連の過去の大粛清事件、シベリア、チベット、ウイグル、そして日本の大坂冬の陣を歴史の教訓とするならば、目先の安易な道を選択することが、どういう未来を招くか長期的視野に立っているからこそ、ウクライナがあきらめないと推察します。しかし、そのせいで犠牲者は増えてしまう。どうにもならないこのジレンマに言葉がないです。ただ日本も、台湾・尖閣問題を抱えており、決して他人事ではないのです。ウクライナと日本の違いは、日米安全保障条約の存在と、「海」の存在でしかありません。
    ウクライナに、日本海海戦のような劇的な大勝利があらんことを、心より願っています。
     

  • 2021年9月5日株情報

    (2021年9月5日執筆)


    暑い季節は、どうにも更新が滞りがちで今回は恥ずかしながら前回の原稿執筆から52営業日が経過してしまいましたが(申し訳ありません・・)、その後の株価の動きがどうなったのか分析してみましょう。いよいよ秋相場の到来ですね、これまでの株情報において何度か、「今年の株価の動きは2017年型に似ていく可能性が高い、その2回目の下げが夏あたりにあるかもしれない、その上で秋から再上昇開始の型になるのではないか?」といった予想を立ててきましたが、感染力の強いデルタ型コロナウイルスの蔓延といった予想外の不確定要素は残るものの、現在の日経平均は8月からその通りに反発上昇の動きをしています。
    まず、前回の6月20日分の株情報において、「今年の日経平均が2017年型のチャートに似てくるという予想の実現可能性が高まる」と述べました。また、5月10日分の株情報においても、箇条書きにして抽出すると、以下のように述べています。


    高値を追うのは自己と外国人、安値を買い支えるのは日銀黒田という構図が当面は続くわけで、この需給関係では2017年型のチャートが示現するだろうというのが今年のメインシナリオになる。


    今年の日経平均の動きのイメージは2017年型であることが予想できる。2016年11月12月に急騰したのも似ている。
    2017年では調整場面は2回あり、
    一、3月下旬から4月下旬までの19600円から18200円の▲1400円(約7~8%下落)
    二、8月上旬から9月上旬までの20200円から19200円の▲1000円(約5%下落)
    その2回目の調整の後に、9月から11月上旬までの2ヶ月強の期間で一気に19200円から23400円まで▽4200円も上げた(約22%上昇)。


    では、30000円から38000円バブル高値奪還までの上げが、夏から秋にかけて本当に来るのか?やや先の話しになるが、2017年同様に今年の夏以降に来るであろういったんの調整の様子を見てから再度予想してきたいと考える。

    整理すると上記①~③の通りですが、今後はどうなるのでしょうか? 菅首相退陣のニュースや、選挙は買いというアノマリー的な思惑からか、先週の金曜日の日経平均は急騰しましたが、まずはナスダックのチャートから分析していきましょう。
    前回の6月20日分の株情報において、「ナスダックが今度こそ緑色の最終レジスタンスCを上方ブレイクアウトできれば、これまた前回で述べたことと同様にWトップ&三尊天井のチャートパターンの形成失敗となり、非常に強い買いシグナルとなる」と述べましたが、掲示したナスダック日足チャートをご覧下さい。分かりやすいように、これまで説明した上限上昇トレンドラインAと下限上昇トレンドラインA’(赤色)に挟まれた上昇トレンドチャネル(トレンドラインレンジとも言う)、下降トレンドラインレンジD-D’(青色)、
    (●トレンドチャネルについては、渋谷高雄株式投資大百科第5章第6項等を参照)
    レジスタンスライン(抵抗線)C(緑色)は、そのままの色やアルファベットで記入してあります。前回の株情報公開後に株価はCを上方ブレイクアウトして、その後は上昇トレンドを継続しています。途中で株価が反落する場面もありましたが、Xポイント(Cが今度は役割を逆転させてサポートライン(支持線)に変化した位置)や、Yポイント(上昇トレンドラインA’上)で支えられて教科書通りの反発もしてきたことが分かります。そして前回の株情報でも述べたように、金利やテーパリングが株価に折り込まれつつある以上、これらが今後に大きな悪材料になるとは限らず、そうなるとこの上昇トレンドは簡単には転換しないと思われるのです。しかし気になることもあります。それは上昇トレンドラインの上値が、赤色点線のAからオレンジ色のBに後退して切り下がってきていることです。この感触として「上昇トレンドではあるのだが、かといって強いという手ごたえに満ちているわけでもない・・」といった感じでしょうか? 8月下旬のCPIが思ったほど伸びておらず、10年金利低下の要因がデルタ株蔓延などからくる経済活動鈍化による景気の悪さにあるのが本当であれば、この中途半端さも何となくは理解できるのです。いずれにせよ、Bを上方ブレイクアウトできるかどうかが当面のナスダック最大の注目ポイントです。
    次に、掲示した日経平均の日足チャートをご覧下さい。
    今年の2月以降、長く続いた大局的下降トレンドラインレンジD-D’(青色)を、ついに上方ブレイクアウトできたことが分かります。すでにTOPIXのほうは高値を更新していることや、夜間の日経平均先物がさらに400円以上上げていることを考えれば、いよいよこれが「N字型チャートパターン」の形成初動か、という期待も高まります。
    (●N字型チャートパターンについては、渋谷高雄株式投資大百科第5章第16項等を参照)
    そこでチャート図に記入したピンク色のラインをご覧下さい。
    Aで株価が7700円上昇した後にBで調整しているので、いよいよCにおいては青色の下降トレンドラインDを上に抜けた位置(大体28700円前後)を起点として、上昇トレンドが2~3か月ほど続き、その間の値幅がAと同じくらいの7000円から8000円と想定すれば、基本的セオリーから確かにバブル最高値奪還の可能性があるかもしれないのです・・
    では、いわゆる格言:バスに乗り遅れないためには、どういうシナリオで今後臨むべきなのでしょうか? 買い遅れている場合は、まずは打診買いから始めて、そして前回高値の30700円付近を超えていくか、もしくはナスダックのBライン上方ブレイクアウトで買い乗せていくのです。
    なお、損切りポイントについては、原稿執筆の時間の関係上、次回に解説しましょう。

  • 2021年6月20日 株情報

    (2021年6月20日執筆)

    前回の原稿執筆から30営業日が経過しましたが、その後の株価の動きがどうなったのか分析してみましょう。本原稿執筆時点において、ダウ533ドル安(▲1.58%)、ナスダック130ポイント安(▲0.92%)、日経平均先物510円安(▲1.76%)という状態であり、6月21日月曜日は軟調な展開でスタートすることが予想されます。果たして今後の株価の動きはどうなっていくのでしょうか?
    まず、ニューヨークダウの日足チャートですが、6月4日に陽線が立って以降、実に10営業日連続で陰線が続いており、いよいよ今週は1000ドル級の大暴落が発生しそうなチャートに見えてしまうのも仕方のないところです。
    (編集の都合上、ダウの日足チャートは今回の原稿では当サイトにおいて画像表示しておりませんので、各自証券ツールなどで確認をお願いします)
    特に昨年の11月に28500ドルから29200ドルのあたりで「マド」が空いているので、いわゆる「窓埋め理論」により、これをいつかは必ず埋めるというのであれば、これから1000ドル級の大陰線が4連発でもして、あっという間に達してしまうのではないか?といった漠然とした不安もかすかに頭をよぎります。
    次に、掲示したナスダックの日足チャートをご覧下さい。
    不思議なのは、ダウが下がり続けた10営業日の期間中のナスダックの下げはたいしたことがないばかりか、ダウに反対連動して上がっている日すら散見されることです。ナスダックは先週の金曜日はダウ同様に下がりましたが、ダウがマド空け大陰線で下がったのに対し、ナスダックは前日木曜日の始値すら割っていない限定的な下げにとどまっています。これは、ダウを構成するセクターには売り圧力が強く、ナスダックを構成するセクターには一定の強い買い圧力が存在することを示しています。
    (●セクターごとの循環物色については、渋谷高雄株式投資大百科第6章第2項等を参照)
    これは意外です、なぜなら30営業日前に執筆した前回原稿において、『しかし気になるのは、ダウが新高値を更新して上昇トレンドが強力であるのに対し、ナスダックは新たに形成された抵抗線C(緑色のライン)によって上昇が阻まれ、いわゆるWトップのチャートパターンを形成しそうになっている』と書きましたが、このように今とは正反対の状況だったからです。いつの間にか入れ替わったということなのでしょうか? また、同じく前回の原稿において、『ダウが高値更新中である以上、出遅れ物色と称してナスダックもいずれ追随して上昇することがメインシナリオとなる』とも述べていましたが、30営業日後の現在、その予想通りの展開となっています。しかしながら一度、ハラハラする展開があったのです。掲示したナスダックの日足チャートを再びご覧下さい。5月上旬の★ポイントにおいて、下限上昇トレンドラインA’を割っているのです。これも前回原稿で述べていたことですが、『再びナスダックが下限上昇トレンドラインA’を割るとWトップのチャートパターン完成と言えるので注意が必要』と言っていたにも関わらず、ナスダックの株価は切り返してきたのです。なぜ? Wトップのチャートパターン完成であったのなら、セオリー通りにナスダックの株価は11500ポイント付近まで下がってもおかしくはなかったわけです。これには実は明確な理由がありました。この5月上旬というのは、アメリカにおける納税時期であり、納税のための換金売りが5月17日(月)あたりまで出ることが分かっており、それまでは株価が下がりやすいというアノマリー的需給環境があったのです。そしてその納税期限経過後は、反動で株価が上がるというアノマリーもまたあったのです。
    つまり5月上旬のナスダックにおける下限上昇トレンドラインA’割れは、本格的な大暴落につながるようなWトップのチャートパターンの完成ではなく、単に納税資金捻出のための一時的な換金売りに過ぎないノイズであることが予見できたのです。そしてその通りに株価は反発してきて、今や最終レジスタンスと化した緑色のCラインブレイクアウトに再び挑戦しようとするまで上がってきたのです。しかしここからナスダック株価が反落してしまうと、今度はいわゆる『三尊天井』のチャートパターン完成の可能性が出てきます。
    (●三尊天井については、渋谷高雄株式投資大百科第5章第11項等を参照)
    反対にナスダックが今度こそ緑色の最終レジスタンスCを上方ブレイクアウトできれば、これまた前回で述べたことと同様にWトップ&三尊天井のチャートパターンの形成失敗となり、非常に強い買いシグナルとなります(俗称:「バスカヴィル家の犬」というパターン)。
    あとは興味があるとすれば、日経平均先物が510円安(▲1.76%)の28420円という状態なわけなのですが、このあたりの値位置は上述の5月上旬のアメリカ納税換金売り局面以外では、3月4月に三度に渡って株価が反発してきた強力なサポートラインなのです。ここで黒田日銀がTOPIXETF買いを発動するのかどうかも重要な注目ポイントでしょう。そうなるとこれもまた前回の原稿で述べたことですが、今年の日経平均が2017年型のチャートに似てくるという予想の実現可能性が高まるからです。
    あとは現在のマーケットにおける懸念材料として「金利」と「テーパリング」があるわけですが、金利については、金利急騰を恐れる機関投資家による債券ショートポジションが多くなりすぎて、どうやら需給関係でこれ以上上がりにくいという構図が見て取れるのです。例えて言うと、個人投資家による信用買い残が多くなりすぎて、株価が上がりにくいといった構図と言えばイメージしやすいでしょうか・・・
    またテーパリングについても、これだけ事前に騒がれてしまうと、マーケットがテーパリングを早めに折り込んでしまうといった事態も想定しなくてはならなくなってしまう可能性が新たに出てきたのが悩ましいところです。そうなると金利も上がりにくくなってしまうわけで、前述の需給関係と考え合わせれば、今回のダウの10営業日連続陰線にリーマンショックやコロナショックのような世界同時多発的全面換金売りの初動の気配は感じられず、単に上がりにくい金利事情を背景としたバリューセクターからハイテク&グロースセクターへの物色動向の変化の予兆に過ぎないというのがメインシナリオになるわけなのです。
    反対にサブシナリオが三尊天井のチャートパターン完成になります。
    よって今週は、そのどちらの流れになりそうなのかを見極めるのが最大のテーマとなるでしょう。