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  • 2022年7月4日 株情報追加

    2022年7月4日 株情報追加

    (2022年7月3日執筆)

    【カギその1】インフレピークアウト数値出現に関して、追加で出された重要な報道まとめ

    1週間前に執筆した前回の株情報の内容において、「しかしここに至り、短期的な近い未来においてインフレピークアウトを予感させる指標数値がついに出そうな気配であるが、ゲームチェンジャーが幻想だったとして、今回の窓空け大陽線が本当にトレンドの大転換につながるほどのエネルギーを秘めているのだろうか? 今までが今までだけに簡単には信用できないというのが現在の多くの個人投資家の心境だろう」と述べました。その後の株価の動きは4営業日続落するも、直近最安値を割ることはなく小反発という迷いを体現したような動きとなっています。これも前回の内容で述べたことですが、次回CPIでヘッジファンドによる再度の大規模売り仕掛けをかけられる危険性が大きいとは言え、この小反発が例えば過去の2016年6月下旬から7月上旬にかけての大局的な転換点の初動の期待はあります。今回もロイター、ブルームバーグ、ストックボイスなどの報道記事を参考にしています(これまで何度も述べてきた通り、個人投資家にとって各社記事の日々のチェックはファンダ動向をつかむ上で必要不可欠な作業と言えるでしょう)。さてまずは、6月後半の報道によれば機関投資家ブルーベイ・アセット・マネジメントの最高投資責任者は、「市場が安定し相場が上昇するには、インフレがピークアウトしたという材料がある程度出てくる必要がある。それは弱気相場が終わるための前提条件といってよい。それはまず債券で、次に株式で起こるだろう」との見方を示したそうです。他にも、この数日の報道から筆者が注目した記事がいくつかあります。例えば機関投資家プリンシパル・グローバル・インベスターズの分析として「米国のインフレはピーク到達に近づきつつあるようだ。消費者はモノからサービスにシフトし、全体の需要は鈍化し、コア消費財の物価圧力もよりデフレ気味になりつつある」といった内容や、機関投資家インガルス・アンド・スナイダーの「インフレがピークに達した可能性を示す初期の兆候が出ているが、依然として経済と物価動向を巡る多くの不確実性が存在している。FRBが利上げ継続の姿勢を変更するには、さらに多くの証拠が必要になる」といったものです。このように機関投資家もインフレピークアウトの手ごたえをそろそろ感じている模様です。他にも特に驚いた記事として、機関投資家ウェルズ・ファーゴの「長く続けてきたバリュー株選好の方針を転換した。景気が減速しつつある状況にあり、より長期のインフレ期待も和らぎつつあるようだ。我々は一定の成果を挙げた後、約2週間前にシクリカル(景気循環)陣営を離れた」といった投資方針の劇的な転換を知らせる内容もありました。だからと言って即時トレンド転換につながると断言できないのは、上記ブルーベイの見解にもある通り、これでようやく前提条件をクリアできたに過ぎないと機関投資家が依然として慎重姿勢を崩さないからです。機関投資家も余剰キャッシュの投入タイミングを伺っているというのは前回株情報で述べた通りですが、それは今後の企業業績の動向次第ということなのでしょう。

    次に、前回の株情報において、【1-1】から【1-3】まで執筆しましたが、その続きは以下のトピックに整理できそうです。

    【1-4】住宅市場の動向

    【1-5】消費者の好みの変化による在庫問題とサプライチェーンの相関性、及び仕入れ価格の下落の見通し

    【1-6】労働市場と貯蓄低下、クレジットカード利用増の相関性

    【1-7】石油・資源価格下落の見通し

    【1-8】需要、生産拡大の見通し

    以上に分類できるのですが、いかんせん今回も筆者の執筆時間に限りがあって、これらのネタもおおよそインフレピークアウトを感じさせる内容であること、そして今後の真のテーマとなりそうなセクターごと業績の見通しに関することなので、今回は以下の【カギその2】の執筆を優先すべきと思い、今日はそちらから先に書いていきたいと思います。

    【カギその2】中間選挙や過去の暴落場面から学べる株価アノマリー

    このネタについては、先に内容をどんどん書いてしまいましょう。

    【2-1】月次系各種アノマリー

    【2-1-1】1月株価マイナス影響アノマリー

    機関投資家LPLファイナンシャル(2月1日付け報道)

    1950年以降でS&P500が1月にプラスだと残りの11カ月は平均11.9%上昇したが、マイナスになった場合は平均2.7%の上昇にとどまった。しかし最近では傾向が異なるといい、1月にS&P500がマイナスとなった直近10回のうち9回はその後11カ月でプラスとなり、平均上昇率は13.1%(4500*13.1%=約5100ポイント)だった。

    【2-1-2】4月株価マイナス影響アノマリー

    ※これは2022年5月23日株情報の記事の中で、【Ⅲ】ファンダ要因【19】③機関投資家BofAの分析が該当します。その重要点を再度まとめると、1928年以降のデータを分析し、4月の月間騰落率がマイナスの年は、その年の残りの期間に同指数が苦戦する傾向があるというものです。

    【2-1-3】1月から5月株価マイナス影響アノマリー

    機関投資家LPLファイナンシャル(5月30日付け報道)

    S&P500種はこれまで、年初100営業日間のパフォーマンスが最も悪かった5年はいずれも年内に反転し、その後の7カ月間で平均19.1%上昇(S&P500種で4100*19.1%=約4900ポイント)している。

    【2-1-4】1月から6月株価マイナス影響アノマリー

    機関投資家LPLファイナンシャル(6月27日付け報道)

    1932年以降の下落局面に関するデータによると、S&P500が年央時点で15%以上下落した年は、下半期に毎年株価が上昇し、平均リターンは24%近く(3800*24%=約4700ポイント)に達する。参考までに、BoFAグローバルリサーチが注目している一部の逆張り指標も、買いシグナルが点滅しているという。またナティクシスのストラテジストは、経済に関する多くの悪材料は織り込み済みで下半期は上半期より良くなる可能性が高いとみているそうで、特にグーグルの親会社アルファベットのような株価が大幅に値下がりしたバランスシートの強い大手ハイテク企業の株式に強気な見方を強めている。

    【2-2】中間選挙アノマリー

    機関投資家LPLファイナンシャル(1月24日付け報道)

    1950年以降のデータから分析したところによると、中間選挙年の最後3カ月と翌年1-3月(第1四半期)と4-6月(第2四半期)は、4年間の大統領選挙サイクルで好調が目立つ時期だという。

    【2-3】戦争アノマリー

    調査会社ネッド・デービス・リサーチ(2月24日付け報道)

    歴史を振り返ると、危機的出来事が市場の調整を引き起こしてきたが、相場は通常数カ月以内に下げを回復した。1907年以降54回の危機を検証した結果、ダウ工業株30種平均は危機のさなかに平均7.1%下落し、危機が終わって半年で平均9.7%反発したと分析できた。同社によると、ロシア・ウクライナ関連のリスクがエネルギー価格の高騰に拍車を掛け、企業利益の減速がコンセンサス予想より大幅になりかねないことはあるが、大局的に見れば、米株式相場が年前半に弱含み後半に回復する可能性があるという見通しに変更はないという。

    【2-4】利上げサイクルアノマリー

    機関投資家トゥルーイスト・アドバイザリー・サービシズ(1月24日付け報道)

    同社の最高投資責任者によれば、1950年代以降の12回の米利上げサイクルで株式相場は年率で平均9%上昇し、そのうち11回でプラスのリターンだった。唯一の例外は、1973年から75年のリセッション(景気後退)に重なった72年から74年の期間だが、過去のデータでは基本的に米金融当局の利上げ局面では米国株は歴史的には好調な傾向があり、2022年は年初よりも良い基調で終了する可能性が高いと分析している。

    ※次に2022年5月23日株情報の記事の中で、【Ⅲ】ファンダ要因【24】①機関投資家東海東京調査センターの分析が該当します。その重要点を再度まとめると、1980年以降の過去9回の米国の金融引き締め局面で、1回目の利上げ後のS&P500種株価指数の推移(中央値)を試算すると、利上げ開始の2カ月後にボトムを付け、4カ月後にはプラス圏に浮上。6カ月後まで上昇した後は、もみ合い商状へと転じていた。今回では、3月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で最初の利上げが決定。米S&P500種は4月以降に調整色を強め、約2カ月後である5月12日に年初来安値を付けた(実際には約3か月後の6月中旬)。それに対し、日経平均株価は最初の米利上げ後はほぼ右肩上がりで推移し、8-9カ月後にピークを付け、この間はS&P500種をおおむねアウトパフォームする傾向がある。この過去の経験則にのっとれば、米利上げ開始から8-9カ月後の本年11-12月まで日本株は強含むことになる。過去のピークまでの中央値は、最初の利上げ時(今回は3月16日終値2万5762円)に比べ10%強の上昇率(28300円)だったが、もっとも10カ月後からは日本株は調整し、高値圏で推移する米国株とパフォーマンスが逆転することもデータは示唆している、というものです。

    【2-5】逆イールドアノマリー

    ※これは2022年5月23日株情報の記事の中で、【Ⅱ】需給動向【1】①機関投資家JPモルガンの分析が該当します。その重要点を再度まとめると、景気後退は通常、利回り逆転よりも前に始まることはなく、時差は最長2年後(2024年3月)と極めて大きい。さらに、この時間軸で株式のパフォーマンスは債券を大きく上回る傾向があって歴史的に見ると、株式市場のピークは利回り逆転から1年前後で起きている(つまり2023年3月)、というものです。

    ※次に2022年5月23日株情報の記事の中で、【Ⅲ】ファンダ要因【5】②機関投資家シティグループの分析が該当します。その重要点を再度まとめると、3月下旬、2019年以降で初めて逆転した米国債の逆イールドは、リセッション(景気後退)入りの警告サインと捉えられる一方、逆イールド発生後に米国株は通常上昇する。歴史的に見て、米国の2年債と10年債の利回りが逆転した翌年(つまり来年の2023年)にはリターンが限定的なものにとどまることが多いとは言え、米株は通常上昇してきた。そして3年目(つまり再来年の2024年)には米国株は下落することになるが、それでもなお国外の市場をアウトパフォームする、というものです。

    【2-6】需給アノマリー

    ※これは2022年5月23日株情報の記事の中で、【Ⅱ】需給動向【2】①機関投資家岩井コスモ証券の分析が該当します。その重要点を再度まとめると、4月は長期資金の買い需要で、日米共に最大の現物買い現象が起きる傾向がある。次に11月と12月も買い越しが大きい、というものです。

    【2-7】クレジットスプレッド変動アノマリー

    ※これは2022年5月23日株情報の記事の中で、【Ⅱ】需給動向【21】②債券調査会社クレジットサイツの分析が該当します。その重要点を再度まとめると、このところ、S&P500種株価指数は1月高値から20%近く下げたが、クレジットスプレッドの変動はそれほど大きくなくなってきた。債券調査会社クレジットサイツはこれを、株式相場の底入れが近いことを示唆していると指摘する。クレジットサイツは1998年以降、S&P500種が週間ベースで特に大きく動いた7つの期間を調査した結果、S&P500種が持ち直し始める平均42日前にクレジットスプレッドの変動がピークを付けていた。では今年はいつ、クレジットスプレッドの変動がピークを付けたのかと言うと、それは42日前よりさらに遡る3月だった。クレジットサイツによれば、過去のパターンがまだ生きているとすれば、株式の変動ペースは高くなり、S&P500種は底に近づいていくという、というものです。

    【2-8】ボラティリティー関連アノマリー

    機関投資家JPモルガン(2月9日付け報道)

    同行ストラテジストによれば、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)が1カ月移動平均を50%余り上回る水準に上昇した場合に買いシグナルが現れる。この指標は過去30年間にわたり、リセッション(景気後退)期を除けば100%正確だという。直近では1月25日にシグナルが見られた。VIXの同シグナルが現れたのは1990年以降で21回。S&P500種株価指数はその半年後(2023年8月)に平均9%上昇(4300*9%=約4700ポイント)した。この法則が唯一当てはまらなかったのは2008年の金融危機時で、S&P500種はその6カ月後も33%安と低迷していた。

    ※次に2022年5月23日株情報の記事の中で、【Ⅱ】需給動向【23】②機関投資家モルガン・スタンレーの分析が該当します。その重要点を再度まとめると、連邦準備制度の利上げと差し迫った量的引き締めの影響を巡る不透明からボラティリティーのロングポジションのコストは上昇し、中国経済減速とウクライナでの戦争もこれを増幅させた。ボラティリティー上昇を見込む取引はヘッジ手段としてコスト高になり過ぎているため、一部の資産については相場変動がピークに達したとみるポジションを組むべきだ。ボラティリティー市場は、スポット市場が底を打つ前にピークを付ける傾向がある。例えば、S&P500種株価指数の1年間のレンジは32604930と示唆され(25日終値は3978)、10年物米国債利回り2.3-4.5%の範囲を示唆しているが、弊社の予想レンジは2.2-3.4%だ。ボラティリティー市場は弱気相場を十分織り込んでおり、現在の水準でボラティリティー上昇に賭ける意味はなく、インプライドボラティリティー(IV、予想変動率)は過去の水準に照らして全体的に高い、というものです。

    【2-9】シティチェックリストアノマリー

    ※これは2022年5月23日株情報の記事の中で、【Ⅲ】ファンダ要因【30】⑤機関投資家シティグループの分析(5月26日付け)が該当します。その重要点を再度まとめると、シティの「弱気相場チェックリスト」のうち警鐘を鳴らしているのは18項目中6項目のみ。世界金融危機の前は13項目、2000-03年の株安前には17.5項目だった。過去において市場の警戒信号が現在と同じような水準まで減った際には、その後12カ月で株式相場は平均31%の健全な上昇(S&P500種で3900*31%=約5100ポイント)を演じた、というものです。

    【2-10】暴落回復パターンアノマリー

    ※これは2022年5月23日株情報の記事の中で、【Ⅱ】需給動向【21】③調査会社ネッド・デービス・リサーチの分析が該当します。その重要点を再度まとめると以下となります。

    株式相場は急落した後、底入れまで4段階のプロセスに従うことが多い。

    第1段階では、主要な指数が極めて売られ過ぎの水準に低下する。
    第2段階では、相場は反転上昇する。
    第3段階では、反発が持続するか確認するために再び安値を試す。
    最終段階では、短期間に下落銘柄数と比べて上昇銘柄数が極めて多くなる「ブレドス・スラスト(breadth thrust)」のクラスターが発生する。

    本記事執筆時点の7月3日において、6月中旬からの反発が本当に最終第4段階(ブレドス・スラスト)の初動なのであれば、短期間に下落銘柄数と比べて上昇銘柄数が極めて多くなるクラスターがほどなく発生することになる。

    【2-11】景気後退アノマリー

    機関投資家ビスポーク・インベストメント・グループ(6月16日付け報道)

    データによると、景気後退を伴う弱気相場はより長く深刻になる傾向があり、約35%の下落幅が中央値(SP500で、4800*0.65=3120)となっている。

    【2-12】危機発生後定量分析アノマリー

    機関投資家ソシエテ・ジェネラル(6月24日付け報道)

    同行によれば、利益予想やバリュエーションと対立する要因として、1870年代以降の危機後の市場バリュエーションを定量分析を用いて研究した結果、底値のレンジ上限は3150(ピークからの下落率は約34%)、レンジ下限は2900(ピークから最大40%下げ)と導き出した。ソシエテ・ジェネラルは、歴史的な危機後の市場バリュエーションのトレンドライン(傾向線)に沿ったS&P500種の適正価額として、3020という数字を算出した。

    【2-13】まとめ

    さて、以上から推定到達株価をまとめると、以下のようになります。視覚的に認識しやすいように、ブル予想は赤字で、ベア予想は青字で書きました。なお、本稿執筆時点におけるS&P500種は3825ポイント、日経平均先物は26320円です。これらアノマリー群から筆者が持った印象は、2-11の景気後退と2-12の金融危機だけはどうにか回避して、今回の始末を景気の一時的減速で済ませることができれば、年末には他多くのアノマリーが示す結果になりそうに思えてきます。それはつまり、2週間前の株情報チャート分析の項目で述べたように、これからの下半期でWトップをつけにいく、というものです。

    【2-1-1】1月株価マイナス影響アノマリー:S&P500種で年末5100ポイントに到達
    【2-1-2】4月株価マイナス影響アノマリー:4月の月間騰落率マイナスの年は残りの期間にS&P500種指数が苦戦する傾向
    【2-1-3】1月から5月株価マイナス影響アノマリー:S&P500種で年末4900ポイントに到達
    【2-1-4】1月から6月株価マイナス影響アノマリー:S&P500種で年末4700ポイントに到達
    【2-2】中間選挙アノマリー:本年10月から2023年6月までは、4年間の大統領選挙サイクルで好調が目立つ
    【2-3】戦争アノマリー:大局的に米株式相場は、年前半に弱含み後半に回復する
    【2-4】利上げサイクルアノマリー:S&P500種2022年末は年初4800ポイントよりも高く終了する。また、日経平均株価は本年11-12月まで強く28300円に到達する。
    【2-5】逆イールドアノマリー:株式市場のピークは2023年3月前後(ただしリターンは限定的)で、2024年には下落
    【2-6】需給アノマリー:日米共に11月と12月に長期資金の大きな現物買い需要が起きる傾向あり
    【2-7】クレジットスプレッド変動アノマリー:3月以降、株式の変動ペースは高くなり、S&P500種は底に近づいていく
    【2-8】ボラティリティー関連アノマリー:S&P500種は本年8月に約4700ポイントへ到達、また1年間の予想レンジは32604930
    【2-9】シティチェックリストアノマリー:S&P500種で2023年5月頃に5100ポイントに到達
    【2-10】暴落回復パターンアノマリー:第4段階のシグナルは、下落銘柄数比の上昇銘柄数が極めて多くなるクラスター発生
    【2-11】景気後退アノマリー:景気後退発生でS&P500種は平均3120ポイントまで下落
    【2-12】危機発生後定量分析アノマリー:金融危機発生でS&P500種は少なくとも3150ポイント(適正3020、最悪2900)まで下落

  • 2022年6月27日 株情報追加

    2022年6月27日 株情報追加

    (2022年6月26日執筆)

    先週金曜日のアメリカ市場において、S&P500種株価指数は前日比3.1%高の3911.74と2020年5月以来の大幅高となり、週間ベースでは6.5%上げて約1カ月ぶりの大幅上昇となりました。さて問題は強いこの上昇力が持続するかどうかですが、これまでの原稿で何度も触れてきたように、「インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇というのが機関投資家の総意」という前提がマーケットを支配しているうちは、とにかくインフレがピークアウトしたという指標数値が出現してくれない限り、空売りトレードの基本である「戻りは売り」圧力の前に株価反発は持続できないでしょう。しかしここに至り、短期的な近い未来においてインフレピークアウトを予感させる指標数値がついに出そうな気配なのです。そこで今回は、前回で述べたところの今年後半相場の最大のカギとした以下テーマについてまとめました。

    【カギその1】インフレピークアウト数値出現

    【1-1】機関投資家が「ゲームチェンジャー」と表現した6月のミシガン大学消費者マインド指数速報値が修正された

    タイムリーなことに、非常に大きな材料が先週金曜日に投下されました。そもそも6月9日から17日に至るS&P500種株価指数の約4100ポイントから3650ポイントに至る7営業日の急落のファンダ的原因の解釈は、米ミシガン大学が6月10日に発表した1年先の期待インフレ率の「速報値」が5.4%、5-10年先の期待インフレ率のこれまた「速報値」が3.3%だったことで、FRBがこれをインフレ急加速のシグナルと解釈する危険が高いとみなされたからです。どういうことかというと、その数日後に機関投資家野村証券から分かりやすい解説が出たので、その概要を以下に引用してみましょう。

    (以下引用)
    衝撃を与えたのは10日のニューヨーク市場引け間際に発表された6月のミシガン大消費者マインド指数だったが、それも比較的大きく報じられる「信頼感指数」ではなく、「5-10年長期期待インフレ」という平常時にはあまり気にされない指標である。その6月の速報値がプラス3.3%と、5月の同3.0%から上振れたことは株式市場にとって不意打ちかつ明確な悪材料と言える。なぜならこの指標はコロナ禍にあっても最大で3.1%にとどまっていたので、一部のFOMCメンバーに「インフレ率はいずれ自然に低下する」という見方をさせる重要な論拠になっていたからだ。しかし3.3%という予想外の上振れになったことで論拠が失われたと言える。これまで米国の消費者は、昨年来のガソリン高、食料品の大幅値上げ、外食・宿泊の大混雑と価格高騰といった一連の現実のインフレ率上昇に歯止めがかからない中でも、これらをコロナ禍特有の現象と受け止めていたと当社は仮説している。つまり消費者の長期期待インフレは落ち着いており、それはコロナ終息とともに沈静化するだろうと消費者は直感していた。しかしウクライナ情勢の悪化という新たなグローバル要因が加わったことで、物価高に拍車がかかり、米国の消費者は「インフレは長期化するのではないか」と疑念を抱き始めたため、高賃金の要求などを通じて、自己実現的なインフレ上昇圧力は強まっていく見通しに変化した。そのために株式市場では10日以降、インフレを鎮静化させるためにFRBは大幅利上げで景気をリセッションに追い込むのをやむなしとする悲観シナリオが勢いを増したことが株の投げ売りにつながった。
    (以上引用終わり)

    そして結局、パウエルFRB議長は6月のFOMC後の記者会見で、この3.3%という数値を「強く目を引く統計だった」と表現し、予想を上回った5月の消費者物価指数(CPI)とともに、今回75bpの利上げを決定する一因になったと説明したのです。

    上記機関投資家野村証券の他にも多くの機関投資家が、このミシガン大学が発表した消費者マインド指数(速報値)で、5-10年先のインフレ期待が3.3%(前月3.0%)に上昇して2008年以来の高水準を記録した点について深刻な懸念を表明しました。中でも今回のFOMCでの0.75ポイント利上げを最初に予測した機関投資家バークレイズとジェフリーズは、インフレ期待が不安定化しつつある可能性示す証拠にミシガン大学の調査結果を掲げ、ジェフリーズはそれを「ゲームチェンジャー(状況を一変させるもの)」とすら呼んだのです。ただ、パウエルFRB議長は会見において、今後数カ月はインフレ低下の説得力のある証拠を探すので利上げペースはそのデータ次第になるが(筆者注※後述【1-2】につながる)、指標は「短期的なインフレ率は高いが、中期的にはインフレ期待が急激に低下する」という見通しも示したのです(筆者注※後述【1-3】につながる)。

    ところが?!
    実に14年ぶりの高水準となっていたこのインフレ期待の速報値が、なんと確定値で下方修正されてしまったのです。5-10年先のインフレ期待確定値は3.1%と、速報値の3.3%から下向きに修正され、1年先のインフレ期待確定値も5.3%と、速報値の5.4%から下向きに修正されてしまったのです。ミシガン大消費者調査ディレクターは発表文で、6月確定値での長期インフレ期待の下方修正は、数年先に関して極めて低いインフレを予想する消費者の割合が高まったことが理由だと説明したそうです。

    あれ?!
    先ほどの機関投資家野村証券の見解では、5-10年長期期待インフレ6月速報値の3.3%という数字は、コロナ禍最大値3.1%より予想外に上振れてしまったので、インフレ率はいずれ自然に低下するという一部FOMCメンバーの重要な論拠を失わせたと論じていました。さらには、機関投資家ジェフリーズが表現した「ゲームチェンジャー」は言わば、勇み足的な過大表現となり、結局は5-10年長期期待インフレ6月確定値3.1%という数字は、コロナ禍最大値3.1%とギリギリ同じだったわけで、結局は「ゲームチェンジャー」という言い方は大げさだったということになります。よって、利上げペース加速を巡る米金融当局の切迫感を和らげる可能性がにわかに急浮上したとされ、それが先週金曜日のアメリカ市場の大陽線示現につながったようですね。

    【1-2】次の最大の焦点は、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが「前月比」で低下するかどうか

    では、そのゲームチェンジャーが幻想だったとして、今回の窓空け大陽線が本当にトレンドの大転換につながるほどのエネルギーを秘めているのでしょうか?
    (●トレンド大転換のシグナルについては、渋谷高雄大百科第3章第7~8項(P135~139)等を参照)
    しかし今までが今までだけに簡単には信用できないというのが現在の多くの個人投資家の心境でしょう。しかし前回の株情報原稿で筆者は以下のように述べました。

    >情報入手の早い機関投資家は、例えばウクライナ侵攻を確信してイチ早く売りに動いた時と今度は反対に、インフレピークアウトを確信させる数値が出る前にイチ早く買いに動くことが予想される。

    仮に今回の大陽線が、これまで様子見を続けてきた機関投資家の買い転換への変化の初動であれば、置いてきぼりされないように私たち個人投資家もせめて打診買いくらいはしておかないと後で猛烈な後悔に襲われそうではあります。例えば、6月20日付けロイター報道では、機関投資家ダコタ・ウェルスのシニア・ポートフォリオ・マネジャーの見解として「インフレ鈍化の兆しをしっかりと確認したい。それまでは余剰キャッシュを抱えたまま様子見を続ける」と語ったことが紹介されていましたが、この記事が出た時点がS&P500種株価指数の直近最安値3650ポイント付近であったのが、いきなりわずか5営業日後に今回の大暴騰が発生した不可思議から、待機を続けてきた機関投資家の余剰キャッシュに買いの大逆流が発生しつつあるかもしれないのです。なぜなら、前述のようにパウエルFRB議長は会見において、今後数カ月はインフレ低下の説得力のある証拠を探すので利上げペースはそのデータ次第になると述べましたが、情報の早い機関投資家は必ずデータが出そろう前に買い始めるのは間違いないからです。そこでまもなく到来する参考になりそうな指標に注目したいと思います。それはやはり、7月上旬発表予定の次回消費者物価指数(CPI)でしょう。前項でも述べたようにパウエルFRB議長をして、予想を上回った6月公表の5月分CPIがミシガン速報値と共に、これが75bp利上げ決定の一因になったと言わせたからです。そして、余剰キャッシュを抱えたまま様子見を続ける機関投資家の総意としては、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが、「前月比」で低下することが重要らしいのです。ちなみに5月分(6月発表)は前月比では0.6%の上昇でした。このコアCPIが重要なのは、インフレのせいで秋の中間選挙で大敗の恐れがあるバイデン民主党政権が「変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが落ち着いたのは良いこと」だと声明を出したことからも伺えるのです。ここでバイデン政権が「コアCPIが落ち着いた」と評したのは、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが、「前年同月比」で前4月が6.2%の上昇で、5月の予想中央値が5.9%上昇のところ、実際には6.0%上昇だったので、予想中央値を0.1%だけ超えたものの、前4月より0.2%の低下はしたことによるものです。しかし、秋の選挙が気になる政治家ではなく、実際にマーケットで余剰キャッシュの投入タイミングを伺う機関投資家の目線は少し違っている模様で、例えば投資調査会社22Vリサーチの創業者は、金融状況のさらなる引き締まりを意味するシグナルのひとつとして、コアCPIが「前月比」で低下しなかった(前月比0.6%上昇)ことを挙げたそうです。では、来月7月公表予定の6月分のコアCPIが「前月5月比」で低下する見込みはあるのでしょうか?それについては、過去3回のインフレ持続予想を的中させて、約1年前にアメリカで高インフレが長引くことも的確に予測したブルームバーグのコラムニストであり著名な債券市場ストラテジスト、モハメド・エラリアン氏の見通しが参考になりそうです。同氏によれば、懸念しているのは6月の「前月比」上昇率が5月よりも悪化するのではないかという点だそうです。つまり、前月比0.7%以上の上昇が見込まれるということになります。同氏の過去の的中率の高さを考えれば、次回の悪化の可能性は極めて高いと推定せざるを得ません。よって、次回CPIでヘッジファンドに大規模な売り仕掛けをかけられる危険性が大いにありうるのです。ただ、衝撃的だった6月公表の5月分CPIの次回悪化が広く予想されてしまっている以上、すでにチャートには織り込み済みかもしれません。よって悩ましいのは、仮に機関投資家がさらにその次の8月公表予定の7月分が前月比下落という情報先回り入手をしているのであれば、予想される次回CPIでのヘッジファンド大規模な売り仕掛けが、それこそ第3段階「反発が持続するか確認するために再び安値を試す」の最終段階最後の下げになる可能性は大いにありえます。
    (※筆者注釈:この第3段階については、2022年6月3日 株情報(追加【Ⅱ】)の【21】5月25日「株式相場は急落した後、底入れまで4段階のプロセスに従うことが多く、現在はその第2段階の相場は反転上昇」の③調査会社ネッド・デービス・リサーチの項目参照のこと)
    前回の株情報のチャート分析でのテクニカル面における今後の下値が限定的と思えることも合わせて考えれば、今の局面での打診買い+次回CPI通過での第2次買いが筆者の想定する今回のメインシナリオです。

    【1-3】半導体セクターや海運セクターの調子の悪さとインフレピークアウトの相関性

    次に、インフレのピークアウトを裏付けるような各種数値や機関投資家の分析については、いくつかのカテゴリーに分類できると思えます。それらを羅列していくと、以下のようになります。

    ・住宅市場の動向
    ・消費者の好みの変化による在庫問題とサプライチェーンの相関性
    ・労働市場と貯蓄低下、クレジットカード利用増の相関性
    ・石油・資源価格下落の見通し(2022年6月3日 株情報(追加【Ⅱ】)【27】6月1日「原油相場は現在の1バレル120ドルに対し、適切水準は70ドル」参照)
    ・仕入れ価格の下落の見通し
    ・需要、生産拡大の見通し

    などに分類できるのですが、いかんせん今回も執筆時間の都合によりこれらを体系的にまとめるのは次回にさせて頂いて、今日は筆者が最重要と考える記事の紹介だけはしておきたいと思います。それは6月7日付けブルームバーグ報道なのですが、現在の高インフレをもたらしている供給サイドの主要ファクターのうち、
    ①半導体価格
    ②コンテナ輸送のスポット(随時契約)運賃
    ③北米の肥料価格

    の3つの指標が既にピークを打ったとみられ、世界の消費者が待ち望むインフレ減速が間近に迫っている可能性があるというものです。その3つの指標の各詳細ですが、

    ①については、ノート型パソコン(PC)や自動食洗機、LED電球、医療機器など多様な電子機器完成品の将来コストの目安となる半導体価格の指標は現在、2018年7月のピーク時の半分まで下げており、昨年の年央時点の水準を14%下回っている。

    ②については、シカゴのアパレルやシンガポールの高級品、欧州の家具・インテリアの流通経路での費用の目安となるコンテナ輸送のスポット運賃は、過去最高を記録した昨年9月から26%下げている。

    ③については、世界の食料品価格上昇の先行きを示す北米の肥料価格は3月の過去最高値を24%下回っている。

    さらにこの3つの指標に加えて、中国の生産者物価指数(PPI)の上昇率が昨年10月にピークを付けた後に鈍化していることも世界的な輸入インフレの緩和を示唆する有望な兆候だとオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のアジア調査責任者が分析しています。それによれば、「世界の一部地域のインフレはまだピークに達していないものの、年間インフレ率が下がり始める転換点がそれほど遠い先ではないことを示す少なくとも幾つかの兆候がみられ、購買担当者指数(PMI)のコンテナ輸送運賃が下落し、サプライヤー納期が改善したことは供給面のボトルネック緩和を示しており、年内に物価圧力は抑制される」という予測をしています。なるほどたしかに、前述のようにパウエルFRB議長は会見において、指標は「短期的なインフレ率は高いが、中期的にはインフレ期待が急激に低下する」という見通しを示しましたが、こうした価格や運賃の下落が根拠になっている可能性が大いにありそうですね。そう言えば最近の日本株でも半導体セクターや海運セクターの調子は確かに悪いですね。これは2022年5月30日 株情報(追加【Ⅲ】)【31】5月28日「いきなりバリュー株の投資判断が引き下げされる。そして、ほくそ笑むパウエル議長と相場に底を打ち始めた兆候」①機関投資家クレディ・スイスとバンク・オブ・アメリカ(BofA)の項目で「27日、バリュー株の投資判断をそれぞれ引き下げた」という記事に遠因があると筆者は考えていたのですが、それと合わせてこの①と②の影響も大きかったのでしょう。

  • 2022年6月20日 株情報

    2022年6月20日 株情報

    (2022年6月19日執筆)



    前回のチャート分析から約1ヶ月が経過しましたが、その後の展開と今後の予想を分析してみましょう。その前回のチャート分析の内容ではS&P500について以下のように述べました。

    >カギを握るのは、やはりアメリカ株にリバウンドの動きが出てくるかどうか
    >ですがS&P500には、その後も黒色のレジスタンスD、短期的下降トレンドラインC1、そして大局的下降トレンドラインA2などが次から次へと立ちはだかってくるので、アメリカ株での新しい上昇トレンドチャネルの形成はまだまだ遠そうな気配

    そして「まだまだ遠そう」の予想通りにS&P500は、立ちはだかった黒色のレジスタンスDラインと、緑色の短期的下降トレンドラインC1を突破することができずにもたついている間に、インフレがピークアウトしたという手ごたえを感じさせるような指標結果が出なかったことで一挙に反落させられました。今回新たに掲示したSP500日足大局チャートをご覧下さい。株価は反落後に青色の下降トレンドラインAを割ってしまい、緑色の短期的下降トレンドラインC2に上から接近して、ギリギリ踏みとどまっているのが現在の状態です。それにしてもなぜ、せっかく反発した株価は、C1とDを上方ブレイクアウトできなかったのでしょうか?ここで改めて思い起こされるのが、前回分執筆内容の中で【Ⅲ】ファンダ要因における以下の項目です。

    【1】3月30日「さらなる株価上昇の追い風が起きるとすればインフレが緩和していくことが条件だが、まだそうした状況ではない」

    【18】5月6日「持続的な株価反転につながる唯一の状況はインフレがさほど過熱していないように見え始めるかどうかであり、インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇というのが機関投資家の総意」

    なるほど、こうした機関投資家の分析から分かるように、とにかくインフレがピークアウトしたという指標数値が出現してくれない限り、空売りトレードの基本である「戻りは売り」圧力の前に株価反発は持続できない、ということのようです。この「インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇というのが機関投資家の総意」という見解については、前回の原稿執筆後も繰り返し機関投資家からレポートで述べられています。例えば、6月16日付けロイター報道では、機関投資家Tロウ・プライスの債券運用担当者が「インフレ緩和の明確な兆候が現れるまで下げ止まりは期待できない。ボラティリティーは高止まりし、わたしを含め市場参加者は総じてリスクを取る意欲を失っている」と述べたそうです。また他にも6月3日付けブルームバーグ報道では、米クリーブランド連銀のメスター総裁が「インフレ率がピークに達したと結論付ける前に、インフレの後退を示す数カ月にわたる数値の低下など説得力ある証拠を見る必要がある」と指摘した上で、「そうした状況をまだ目にしていない」と付け加えたそうです。

    さてこうなると、どうやら今年後半相場の最大のカギが見えてきたような気がしますね。それはすなわち、

    【カギその1】インフレピークアウト数値出現

    これがいつなのか?ということであり、情報入手の早い機関投資家は、例えばウクライナ侵攻を確信してイチ早く売りに動いた時と今度は反対に、インフレピークアウトを確信させる数値が出る前にイチ早く買いに動くことが予想されるのです。もちろん私たち個人投資家もイナゴ習性の本領を発揮して彼らの動きにコバンザメの如く喰い付いて離さないことこそが今年後半の最重要課題となると言えるでしょう。さらには、今年前半6か月の機関投資家の予想や見解を改めてまとめて読み返してみると、他に3つのカギが想定されるのです。

    【カギその2】中間選挙や過去の暴落場面から学べる株価アノマリー

    【カギその3】機関投資家や各分析機関による今年の株価予想ゾーン(高値4900から安値3250くらい)

    【カギその4】10年債利回りの3%割れが定着するかどうか?

    これら4つのカギについては筆者渋谷がネタを大量に収集してストックしてあるので、さっそく読者の皆さまに羅列したい・・・ところなのですが・・・ いかんせん今回も執筆時間に限界があるので、まずはとにかくチャート分析の完成を優先せざるを得ないかと。そして4つのカギの詳述については今後、週に1つずつのUPを目標に取り組みたいと思います。

    そこで改めて、掲示したSP500日足大局チャートをご覧下さい。今回は、機関投資家の今年の株価予想レンジやコロナ禍当初との株価比較を視覚的に把握しやすくするために、あえて期間を長めに設定しています。
    (このチャート表示期間長めの設定メリットについては、渋谷高雄大百科第3章第3項(P103~)内「このとき、もし2~3ヶ月の短期間のチャートしか見ていなければわからなかったのですが~(中略)~このように短期間だけ見ていたら見えてこなかったことが長期間のチャートを見ることで理解しやすくなることもある~(中略)~それでも難しければ、もっと期間を伸ばすか、週足や月足で見てみるようにするなど、トレンドがわからなければ期間を伸ばしてみるといいでしょう。」等を参照)

    ピンク色の最終サポートラインZが、コロナ前では最初はレジスタンスラインとして、その後は役割を逆転させて今度はサポートラインとして機能していたことが分かります。
    (●この役割の逆転については、同大百科第3章第4項(P107)等を参照)
    そしてこのZラインこそ、チャートにコメントを書き込んだように、最も弱気系機関投資家の2022年安値予想ゾーンである3400ポイントから3250ポイントに合致するのです。そして現在の株価水準は、オレンジ色の最高値4800ポイントゾーンのYラインから、すでにこれだけ下がってしまったのが視覚的に認識できます。そしてチャートに書き込んだ赤色のコメントの通りに、残りの下げしろがあとたったこれだけなら、インフレピークアウト数値出現(カギその1)や、中間選挙アノマリー(カギその2)や、最も弱気系機関投資家でも今年の高値予想ゾーンが4700ポイントから4900ポイント(カギその3)、すなわち大局的にWトップをつけにいくことに賭けて、買いに走る流れが多くなる? これが筆者の考える今年後半のメインシナリオです。
    (●Wトップについては、同大百科第5章第10項等を参照)
    また、短期的なテクニカル的買いサインもあります。次にSP500日足半年チャートをご覧下さい。これは大局チャートの右端拡大図です。直近において株価が緑色の短期的下降トレンドラインC2を上方ブレイクアウトした後に、上から再度C2に接近しているのが分かります。これは上記のZラインのところでも述べたように、レジスタンスラインとサポートラインの役割逆転のパターンなので、通常はZの時と同様に強いサポート機能を果たすと予想できるのです。そして株価がC2に沿ってズルズル下がったとしても、Zまでの距離はたかが知れていると言えるでしょう。

    そしてこの大局チャートからおぼろげながら読み取れるのは、パウエル議長の隠された本音が「コロナ禍で国民に大盤振る舞いしたお金が今は貯蓄として滞留しているわけですが、景気をあえて多少冷やして株価をZラインまで一時戻すことによって、これを貯蓄取り崩しによる消費という体で合法的に国が回収します。これこそがコロナリセットであり他に方法がないのです、ご理解下さい。」という推定結論に至るわけなのです。筆者がこう思ったのは、6月8日付けブルームバーグ報道において機関投資家パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のポートフォリオマネジャーが、パウエル議長が数十年ぶりの高インフレを抑制しながら、景気後退を回避するという難題への解決の答えとして、「当局の望みはグロース・リセッションだ。それは成長率ゼロから1.8%へのソフトランディングとなる」とした記事を見たからです。このグロ-ス・リセッションの意味こそが、コロナばら撒きの回収ということなのかと腑に落ちたわけなのです。

    そして最後に日本株の動向ですが、掲示したTOPIX日足大局チャートをご覧下さい。赤色で示した新しい上昇トレンドラインレンジB-B‘の形成は失敗となったのがチャートから読み取れます。しかし下値も限定的と思えます。なぜなら緑色の◎が現在の株価位置ですが、これもS&P500のC2ラインと同じくTOPIXにおいても緑色のCラインがサポートラインとして機能しそうだからです。加えて、もはやなりふり構わず金融緩和を続行せねばならないであろう日銀黒田総裁が1800ポイントラインでは強力な年金買いを入れてくることが想定されるからです。かといって上値も限定的っぽくて、上がったところの2000ポイントラインでは、たまりにたまったETFのステルス換金を黒田総裁がいつも通りにしてきそうなので、今年後半のTOPIXはボックスレンジに移行するというのが筆者の考えるメインシナリオです。あとは今年3月27日分の株情報でも詳述した泥濘の季節が実は晩秋にも到来するのです(つまり年2回、春と秋に来ることになる)が、つまり早ければ10月にもウクライナの大地が再び泥沼化してしまうので、その前にウクライナ軍が何らかの戦術的決定的勝利を手にすることができれば、それが世界サプライチェーンの混乱緩和=インフレ低下の連想につながる可能性もあります。何より侵略を受けたウクライナの勝利と解放を祈ってやまないのは、3月の原稿執筆時から変わらない想いです。