(2022年5月29日執筆)
先週にUPした株情報の未執筆部分のうち、今回は【Ⅲ】ファンダ要因をUPします。
【Ⅰ】ウクライナ情勢(近日中UP)
【Ⅱ】需給動向(近日中UP)
【Ⅲ】ファンダ要因(今回UP)
【Ⅳ】チャート分析(前回UP)
【Ⅲ】ファンダ要因
3月27日に執筆した株情報以降に発生したファンダメンタルズ事象を時系列的にまとめました。参考とした記事の多くは主にロイターとブルームバークです。時間を追うごとに変化していく株価とファンダ情勢をもとに、機関投資家の見解も少しずつ軌道修正されていくことがよく分かります。その見解とは大まかに以下の2通りに分かれるという印象です。すなわち、
<ブル派>今を押し目買いの好機と見なして、ロングポジションを構築していく
<ベア派>戻り売りの好機と見なすタイミングにおいて、ショートポジションを構築していく
やはりこの2派に分かれるのです。
では前回株情報原稿執筆から今回原稿執筆時点までの期間において、仮にドルコスト平均法に則ってSP500上でエントリーを重ねていったら、両派のエントリー平均株価はいかほどになっているのでしょうか?筆者自身も興味がわいたので、以下に試算してみました。裁量トレードになりますが、簡潔なエントリールールとして、引け間際の段階で、その日のローソク足がある程度の実体を伴う陽線で引けそうなら、そのタイミングでブル派ならロングを、ベア派ならショートをかけることとします。そこそこの長さの陽線で引けそうな日を双方が共に選ぶ理由は、まずロングで入りたいブル派の心理は、落ちるナイフをつかむのはやはり怖く、少しでも反発の可能性を感じさせるシグナルが出ないと買う気になれないと仮定できそうだからです。反対にショートで入りたいベア派の心理は、仮に底値追撃売りをかまして急速反転踏み上げでも喰らったら、地合いが基本的には下降トレンドである以上は数週間も待てばまた下がってくる自信はあっても、その間に含み損を抱える時間も長くなるので、空売りの基本である「戻りを叩く」のがトレード方針になりそうだからです。
3月27日に執筆した株情報以降、本日までに該当する日とSP500の終値が以下です。
全部で15営業日あります。
4月4日 4582
4月7日 4500
4月13日 4446
4月19日 4462
4月25日 4296
4月28日 4287
5月2日 4155
5月4日 4300
5月12日 3930
5月13日 4023
5月17日 4088
5月23日 3973
5月25日 3978
5月26日 4057
5月27日 4158
以上からベア派のショートポジションは、単純にこの平均で4215ポイントと試算できます。ただしブル派のロングポジションは、基本的には今回の急落を買いの好機を捉える機関投資家JPモルガンが、4月上旬に売られすぎの状態に見えなくなったので利益確定にいったん動くようにリポートで指摘したことと(後述【7】①参照)、その後に再び、今が買い場であると再指摘したのが4月20日なので(後述【11】⑤参照)、ブル派ロングポジション構築開始日は4月25日からとしましょう。全部で11営業日となります。よってブル派のロングポジションは、平均で4113ポイントになります。5月27日のSP500終値が4158ポイントなので、両派共に含み益が乗った状態であるのは、さすが機関投資家と感嘆します。
次に時系列的なトピックは以下31個になります。これらを読んで得られた筆者の印象は、パウエル議長の本当の狙いが「一時的な株安を受け入れても利上げを断行した先に、利下げ余地を作ることによって元に戻す」という巧妙な仕掛けだったというものでした。読者の皆さまはいかがでしょうか?
【1】3月30日「さらなる株価上昇の追い風が起きるとすればインフレが緩和していくことが条件だが、まだそうした状況ではない」
【2】3月31日「米株式相場の目先の上昇余地はほとんどないと考えているが、自社株買い&高配当企業は一定の逃避先」
【3】4月1日「現時点で弱気相場の長期化を予想するのは時期尚早だが、4-6月(第2四半期)は軟調に推移する可能性が高い。しかし2022年後半(つまり7月以降)に新たなラリーで高値を付ける見込み」
【4】4月4日「弱気相場の株高は終了したが、投資家は依然として下がれば、押し目買いに動く傾向にある」
【5】4月7日「FOMC議事要旨では、経済成長と株式市場にマイナスの影響が及ぶとしても、金融当局は今後インフレ抑制に重点を置く。米国債の逆イールドはリセッション入りの警告サインと同時に、逆イールド発生後に米国株は通常上昇する」
【6】4月8日「数年ぶりの本格的な相場停滞は始まったばかりだ」
【7】4月12日「相場は3月初めの下落分の大半を帳消しにした。地政学や政策引き締め、成長などを背景にリスクが高まる中で、もはや売られ過ぎの状態には見えない」
【8】4月13日「アメリカ決算発表スタート、その後21日あたりから株式各指数の急落が始まる」
【9】4月17日「決算発表本格化、過去最高水準の予想株価収益率(PER)21.9倍の公益事業セクターの行方を占う」
【10】4月19日「FRBの利上げによって真っ先に減速するセクターが住宅市場だが、『健全な』不動産減速軟着陸につながれば理想的なインフレ抑制につながる?」
【11】4月20日「ネットフリックスが35%安と急落するも、インフレは今四半期にピークに達する見通しで、今が最悪期になるとの見方が市場の焦点になりつつある」
【12】4月22日「FRBのパウエル議長は5月3─4日のFOMCで50bpの利上げが検討されると述べ、景気後退を招くことなくインフレを抑制しようとしているが、これは容易ではないと認めた上で最善を尽くすと発言する」
【13】4月23日「利益見通しを下方修正したHCAヘルスケアが21.8%安となり、競合他社も大幅安」
【14】4月27日「アルファベットの二段下げと金利低下の組み合わせ、それは『インフレよりも成長維持』への機関投資家の目線の変化か?」
【15】4月28日「パウエル議長にとって株式市場のこれまでの下げは、実は悪くない。むしろこれは恐らく、最良のシナリオに近い」
【16】5月3日「長期筋にとっては今が好機であり、大型ハイテク株は「特価」。短期筋にとっても明るい材料が出ればそれが何であっても、たちの悪いベアマーケットラリー(弱気相場の一時的な株高)につながる可能性あり」
【17】5月5日「FOMC後の買い安心感、短命に終わる可能性も。立ちはだかる6月からの前回ほぼ2倍ペースで実施予定の量的引き締め(QT)」
【18】5月6日「持続的な株価反転につながる唯一の状況はインフレがさほど過熱していないように見え始めるかどうかであり、インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇というのが機関投資家の総意」
【19】5月10日「インフレの道筋が明らかになりさえすれば、株価急落の一方で利益拡大予想は改善し続けているため、株価水準は割安になりつつある。よって1430兆円失った株式市場は、近く底を打つ可能性がある」
【20】5月11日「アナリストによる駆け込み下方修正の急増は、相場底入れの兆候を探してセンチメントに注目する向きにとって警戒解除のシグナル。そこに4月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)の伸びが前月から減速したことで、インフレはピークを付けた可能性が出てきたという」
【21】5月13日「企業業績は好調」
【22】5月14日「インフレがピークアウトした兆候、従って性急に手じまわないよう助言する。今後12カ月間はリセッションが回避されるのが中心シナリオ」
【23】5月16日「最終的な底値はまだ先だが、ベア相場では一時的な反発が起こりやすい」
【24】5月18日「過去の米利上げ時の経験則アノマリー」
【25】5月19日「小売り大手のウォルマート、ターゲットの大暴落は、実はインフレには朗報。相場の下落を見て売りを急ぐのは賢明ではない」
【26】5月21日「新たな見方が急浮上、物価抑制なら23─24年に一転利下げの余地あり」
【27】5月22日「ヘッジファンドは、今年予想される積極的な利上げの先に、来年の利下げを見据え始めた」
【28】5月23日「パニック売りは終わったと想定する。ボラティリティーの影響を受けにくい長期投資家にとって、適切なエントリーポイントの水準となった」
【29】5月24日「ブルータスよ、おまえもか」
【30】5月26日「最終審判:エヌビディアと3人目のブルータス。そして利上げペースを減速させるかいったん停止するかを決める秋の時期に真のハルマゲドンがやってくるが、その前に株式相場には平均31%の健全な上昇が到来するかもしれない」
【31】5月28日「いきなりバリュー株の投資判断が引き下げされる。そして、ほくそ笑むパウエル議長と相場に底を打ち始めた兆候」
【1】3月30日「さらなる株価上昇の追い風が起きるとすればインフレが緩和していくことが条件だが、まだそうした状況ではない」
<ブル派>
①機関投資家JPモルガン
経済指標はこれまでのところ予想を上回っており、リセッションに備えたポジション構築は時期尚早。全ての中央銀行が引き締めに動いているわけではなく、日本銀行と中国人民銀行は反対方向に動いている。そうした国では、株式は財政面での刺激策により一定の底堅さの可能性が高い。
<中立派>
②機関投資家バンク・オブ・アメリカ(BofA)
マクロの状況悪化と市場に非友好的な金融当局の姿勢から米国株上昇が持続する可能性は低い中で、さらなる株価上昇の追い風が起きるとすればインフレが緩和すればだが、現時点でそうした状況は予想していない。
<ベア派>
③機関投資家モルガン・スタンレー
株式相場は底堅いが、こうした上昇局面で売却する機会を探るよう投資家に勧める。この2週間で11%に達する米国株上昇は弱気相場における上昇局面の特徴で、相場はさらに下げる可能性がある。
【2】3月31日「米株式相場の目先の上昇余地はほとんどないと考えているが、自社株買い&高配当企業は一定の逃避先」
<ベア派>
①機関投資家ゴールドマン
米株式相場の目先の上昇余地はほとんどなく、S&P500種株価指数が今年4700で終了すると予想(ウォール街のコンセンサスは4900)。企業業績を巡り下向き方向のサプライズがかなりの数に上るだろう。利益成長の鈍化と金利の上昇は通常、株価の大幅高にはつながらない。但し、自社株買いを行う企業の株価がアウトパフォームする可能性が高いとみており、景気が減速する中で配当を支払う企業は投資家にとって一定の逃避先となり得る。
②機関投資家UBS
米株式相場がさらに大きく反発することはなく、株価の上昇余地はわずかしかないというのが当社の基本シナリオ。S&P500種株価指数の年末目標は4700としており、現水準から2%未満の上昇しか見込んでいない。
【3】4月1日「現時点で弱気相場の長期化を予想するのは時期尚早だが、4-6月(第2四半期)は軟調に推移する可能性が高い。しかし2022年後半(つまり7月以降)に新たなラリーで高値を付ける見込み」
<ベア派>
①機関投資家JPモルガン
S&P500種株価指数は4-6月(第2四半期)は軟調に推移する可能性が高い。これまでの株高ラリーは減速して現在の水準からさほど遠くないところで頭打ちして、今後数週間ないし数カ月はボックス圏内での動きが依然として予想される。
<ブル派>
①’同 機関投資家JPモルガン
そうしたボックス圏内の値動きが成熟するのに伴い、S&P500種は22年後半に新たなラリーでの高値に向け少なくとも1回の中期的な動きを見せる。そうして2022年後半に新たなラリーで高値を付ける見込みなので、現時点で弱気相場の長期化を予想するのは時期尚早だ。
【4】4月4日「弱気相場の株高は終了したが、投資家は依然として下がれば、押し目買いに動く傾向にある」
<ブル派>
①機関投資家シティグループ
現金と債券の実質利回りがマイナスとなっているため、ファンダメンタルズが悪化しているにもかかわらず、投資家は依然として下がれば買う傾向にある。
②機関投資家IGグループ
押し目買いは依然として健全な戦略。
<ベア派>
③機関投資家モルガン・スタンレー
弱気相場の株高は終了した。今後は経済成長を巡る懸念が中心的な材料となるため、短期的には株式よりも債券がより建設的だ。ディフェンシブな見方に倍賭けしている。
景気は急降下させる要素として、
・昨年の財政出動による需要の反動
・価格上昇による需要の崩壊
・増税として機能する戦争による食料・エネルギー価格上昇
・需要に追い付き積み上がる在庫
こうした企業利益をむしばむマクロ環境を投資家はますます無視できなくなる。
【5】4月7日「FOMC議事要旨では、経済成長と株式市場にマイナスの影響が及ぶとしても、金融当局は今後インフレ抑制に重点を置く。米国債の逆イールドはリセッション入りの警告サインと同時に、逆イールド発生後に米国株は通常上昇する」
<ベア派>
①機関投資家ミラー・タバク
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨は、当局者がインフレ抑制に重点を置いていたことを浮き彫りにした。経済成長と株式市場にマイナスの影響が及ぶとしても、金融当局は今後かなり積極的な姿勢で臨むだろう。
<ブル派>
②機関投資家シティグループ
米国債の逆イールドはリセッション(景気後退)入りの警告サインと捉えられる一方、逆イールド発生後に米国株は通常上昇する。歴史的に見て、米国の2年債と10年債の利回りが逆転した翌年(つまり来年の2023年)に米株は上昇した。しかしリターンは限定的なものにとどまることが多い。そして3年目(つまり再来年の2024年)には米国株は下落することになるが、それでもなお国外の市場をアウトパフォームする。両年限の利回りは先週、2019年以降で初めて逆転した。(※筆者考察・・翌年2020年はコロナショックがあったが米国株は上昇して、3年目には終盤に下落したという意味では、このアノマリーは傾聴に値すると言えます)
【6】4月8日「数年ぶりの本格的な相場停滞は始まったばかりだ」
<中立派>
①好成績ファンド運用マネージャー(1月に利益を確定させ、その後の新たなヘッジは控えているという)
相場は今後1年以上、乱高下を繰り返しながらも横ばいに終わる可能性があり、この長期に及ぶ相場停滞を「時間軸での調整(Time Correction)」と表現できる。前回、高値を1年以上更新しなかったのは原油価格が暴落した2015-16年の逆石油ショック時であり、市場全体の適切な株価収益率(PER)を予想するのは難しくなっていて、S&P500種はしばらく横ばいとなり上下10%以内の範囲で推移するとみられるため、1年後に今日と同じ水準であっても驚かない。
【7】4月12日「相場は3月初めの下落分の大半を帳消しにした。地政学や政策引き締め、成長などを背景にリスクが高まる中で、もはや売られ過ぎの状態には見えない」
<ベア派>
①機関投資家JPモルガン
これまで投資家に株式の押し目買いを促してきたが、最近の相場急回復によりいったん楽観的な姿勢を修正して、今は利益の確定に動き、大きく売られた国債に一部の資金を割り振るべきだ。(ただ今回の修正後も、持続的な経済成長の恩恵は受けるため、ベンチマークとの比較で引き続き株式はオーバーウエート、債券はアンダーウエートは推奨)
②月間ファンドマネジャー調査調査(対象運用額総額8330億ドル以上)
・世界の経済成長に対する楽観度が過去最低水準に落ち込み
・世界経済がスタグフレーションに向かっているとの懸念は2008年8月以降で最大
・世界経済の見通しについて、71%の回答者が悲観的だと回答(1990年代初期の調査開始以降で最高)
・キャッシュの保有比率は5.5%で、前月の5.9%からはやや低下
・コモディティーへの配分比率は過去最高の38%(石油・コモディティー投資が最大の「クラウディッド・トレード」に急浮上)
・ロングポジションは資源株とヘルスケア
・ショートポジションは債券と景気敏感株
・過半数のファンドマネジャーがインフレが今後12カ月で鈍化すると予想(この部分はブル分析と言えるかもしれない)
・地域別の株式配分では米国株に最も強気な見方が示され(この部分はブル分析と言えるかもしれない)、欧州株と英国株が最も弱気
【8】4月13日 アメリカ決算発表スタート、その後4月21日あたりから株式各指数の急落が始まる
【9】4月17日「決算発表本格化、過去最高水準の予想株価収益率(PER)21.9倍の公益事業セクターの行方を占う」
<ベア派>
①ヘルスケア、公益事業、生活必需品、不動産といったディフェンシブセクター
株式市場全般が下落しても4月に入ってから上昇しており、今年に入ってS&P500種指数を上回る傾向が続いている。機関投資家、個人投資家を問わずディフェンシブ銘柄に買いが集まり、その株価がアウトパフォームしている理由は、経済成長への逆風がみられるため。物価が急騰するなか、ディフェンシブ銘柄が一定のインフレヘッジになりえるのと、物価の上昇に関係なく消費者は生活必需品、医療、公共料金には支出を続けざるを得ないとの見方が背景にある。S&P500種指数年初来8%近く下落しているが、公益事業は6%超、生活必需品は2.5%それぞれ上昇して、ヘルスケアは1.7%下落し、不動産は6%下落。
●参考・・後述する【13】②参照
<ブル派>
②機関投資家エドワード・ジョーンズ
経済の先行きが全面的に悲観されているわけではなく、経済が好調を維持すれば、市場の勢いはすぐに他の分野に移る可能性がある。差し迫った景気後退への懸念が和らげば、ディフェンシブ株への資金注入も後退する。ディフェンシブ銘柄の急騰でバリュエーションも押し上げられている。リフィニティブのデータストリームによると、公益事業セクターの予想株価収益率(PER)21.9倍と過去最高水準。5年間の平均PER18.3倍を大幅に上回っている。生活必需品セクターは5年平均予想PERに対して約11%のプレミアム、ヘルスケアは5%のプレミアムとなっており、一定の平均回帰(ミーン・リバージョン)取引があっても意外ではないが、成長に対する懸念が続く限り、ディフェンシブ株は相対的にアウトパフォームするだろう。
●参考・・後述する【13】②参照
【10】4月19日「FRBの利上げによって真っ先に減速するセクターが住宅市場だが、『健全な』不動産減速軟着陸につながれば理想的なインフレ抑制につながる?」
<ブル派>
①機関投資家JPモルガン
米家計の可処分所得に対する債務の比率はコロナ禍前が約90%と、2001年以来で最低であり、これは2008年の金融危機前の130%弱に比べて大幅に低い。コロナ禍以降、多少の変動はあったものの、現在も90%前後で推移している。住宅の供給不足が、住宅価格の下落に歯止めをかける可能性もある。一部の指標を見ると、中古住宅の供給は少なくとも過去40年間で最もひっ迫しており、現在は原材料価格が高いため新規の建設も限られる公算が大きい。従って、住宅価格は仮に下落するとしても急落には至らないかもしれない。(※筆者見解・・つまり健全な不動産減速軟着陸につながれば、それは理想的なインフレ抑制につながるとも言え、それはパウエル議長の狙い通りということでしょうか?)
<ベア派>
②各データが予兆させる事象
Yチャーツがまとめた全米リアルター協会のデータでは、住宅の購入しやすさは2008年以来で最低となっている。全体的に見て、米国の住宅の購入しやすさ(アフォーダビリティ)は2008年以来で最低となり、なお低下を続けている。主な要因は米国債利回りの急上昇が、米住宅市場に影響を及ぼし始めたためであり、過去何年間も見られなかったような強い警戒信号を発している指標もある。30年物の固定住宅ローン金利は5%を超え、2011年以来で最高となり、年初からの上昇スピードは過去屈指の速さだ。これらは注意を要する兆候だ、なぜなら固定資産投資と関連サービスを含む住宅部門は、米経済の18%前後を占めるからだ。現在は2008年9月に顕在化した世界金融危機の前のピークに近い状態にあり、当時の危機では、米住宅市場が崩壊した時の影響の大きさを見せつけられた。そして一部の指標を見ると、住宅市場は間もなく減速しそうだ。機関投資家ノムラとナットウエストはFRBの利上げによって、真っ先に減速するセクターの中に住宅市場が入ると予想しており、最初に暗い見出しを躍らせるセクターの1つが住宅市場で、住宅販売は今後数四半期中に大幅に減少するのが基本シナリオとしている。ウェルズ・ファーゴ銀行は15日、住宅ローン需要に陰りが見られると発表して、同行の第1・四半期の住宅ローン件数は前年同期に比べて33%減少したという。賃金の上昇率が住宅価格と住宅ローン金利の上昇スピードに追い付いていないため、住宅購入が有意に減少する可能性は排除できない。94─95年にFRBは1年半にわたって利上げを進め、この間に住宅販売は20%減少した。今回も同じことが起こるとすれば、住宅販売は1月の720万戸強から来年は600万戸弱に減ることになる。だが住宅価格が少なくとも目先、はっきりと下落するかどうかは、まだ分からない。今のところ、需給要因、潤沢な家計資産、強い労働市場といった要因が、分厚く快適な緩衝材の役割を果たしているからだ。
【11】4月20日「ネットフリックスが35%安と急落するも、インフレは今四半期にピークに達する見通しで、今が最悪期になるとの見方が市場の焦点になりつつある」
<ベア派>
①ネットフリックス
ストリーミングサービス会員数が1-3月にここ10年余りで初の純減となったことが嫌気され、35%安の大暴落。世界全体の有料会員数が3月末時点で初めて減少に転じ、同社はこの落ち込みが加速する恐れがあると警告した。その下落圧力はウォルト・ディズニーなど競合他社の株にも及んだ。機関投資家ケーン・アンダーソン・ラドニックは、物価高騰の中、各地でビジネスや娯楽、旅行などが次第に正常な状態に戻ってきたことで、出費が増え続けて消費者の行動に影響を及ぼし始めたと分析。簡単に支出を減らせる分野を探した結果、人々はサブスクに目を向け出した。消費者の心理は変わろうとしている。食品とエネルギーの価格高騰によって家計貯蓄が目減りしたため、多くの人々は膨大になった直接引き落としリストの圧縮に乗り出している。独立系ストラテジスト、アンドレーズ・ステノ・ラーセン氏は、人々が必要とする物をそろえ、必要とされない物は手放すという単純な話で、アマゾンやテスラなど裁量的な支出に依存する銘柄ではなく、ウォルマートやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)といった生活必需品を扱う企業を買うよう投資家に提言している。
<ブル派>
②10年債利回り
2.84%に低下。インフレはピークに近づいており、利上げの予想は行き過ぎだとの指摘が資産運用担当者の間で増える中、米国債は買われたという。(※筆者見解・・利回りが上がればハイテク株が下がり、利回りが下がればハイテク株が上がるという逆相関構図が崩れ出した印象です)
③機関投資家バンク・オブ・アメリカ
10年債について、買いの好機だと指摘。
④機関投資家シティー
インフレは今四半期にピークに達する見通しで、今が最悪期になるとの見方が市場の焦点になっている。米国で非常に積極的な利上げが行われるとの予想は、やや行き過ぎていたかもしれない。
⑤機関投資家JPモルガン
商品高や各国・地域で異なる金融政策、最近の株安を背景に成長株と割安株は異例の買い場になっている。センチメント、ポジションの両方が現在はあまりにも弱気であり、特に小型株や高ベータ株は近いうちに上昇する可能性が高い。金属・鉱業といった割安株とともに、テクノロジーやバイオテクノロジー、イノベーション分野などの成長株から成るポートフォリオを構築すべきだ。現在はまれなケースだが、商品のスーパーサイクルや異なる金融政策、1-3月(第1四半期)の高ベータ株と成長株(国内外)の大規模な売りといったマクロ要因が重なった。成長株は十分に売られており、過去10年間に割安株と見なされてきたエネルギーや金属・鉱業分野などの割安株は今では成長株でもある。こうした銘柄はなおファンダメンタルズの観点から依然として割安株と見なし得るが、勢いや質が大幅に改善する中で成長株とも考えられる。
【12】4月22日「FRBのパウエル議長は5月3─4日のFOMCで50bpの利上げが検討されると述べ、景気後退を招くことなくインフレを抑制しようとしているが、これは容易ではないと認めた上で最善を尽くすと発言する」
<ベア派>
①機関投資家ブライト・トレーディング
インフレが手に負えない状態になっており、抑制する必要がある。これは人為的に経済減速を招くことになる。無論、株式にとって良いことではなく、金利が上がり、特定の企業は成長が鈍化する。既にそのようなことが起きている。ウクライナ戦争が続いており、どのような影響があるのかは全く分からない。市場はリスクを改めて織り込みつつあり、高バリュエーション、高株価収益率のグロース・ハイテク株のような銘柄が最も打撃を受けている。高金利環境では将来的な利益が目減りするため、そのような銘柄の価値が低下するからだ。
②機関投資家野村ホールディングス傘下のノムラ・シンガポール
連邦準備制度の当局者によるタカ派的意見の表明が相次いだことを受け、6月と7月のFOMC会合で、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標が連続して0.75ポイント引き上げられると予測。
<中立派>
③機関投資家BMOキャピタル・マーケッツ
5月と6月の50bp利上げは妥当だが、7月の50bpについては今後数カ月でデータがどう動くかに左右される。
<ブル派>
④機関投資家JPモルガン
マクロ・地政学的な逆風、金利上昇、継続的な供給ショック、ドル高などにもかかわらず、企業のファンダメンタルズは引き続き堅調。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)によると、これまで第1四半期決算を発表したS&P500種企業89社のうち、78%が市場の利益予想を上回っている。
⑤機関投資家アセットマネジメントOne
日本の大型連休中にFOMCがあるため、本格的な買いには入りにくい。決算発表が株価浮上のきっかけになるとは言いがたい。業績見通しを出さない企業や保守的な見通しを出す企業が増えそうだからだ。円安は基本的に経済にプラスで、企業収益にも余裕はあるはずだが、ウクライナ情勢や新型コロナウイルス感染拡大を巡る不透明感は残る。値ごろ感から外国人投資家などの買いが入るのは5月中旬ごろになるのではないか?
【13】4月23日「利益見通しを下方修正したHCAヘルスケアが21.8%安となり、競合他社も大幅安」
<ベア派>
①VIX指数28.21 1カ月ぶりの高水準
投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)は急伸し、3月中旬以来の高水準を付けた。軟調な企業決算に加え、米連邦準備理事会(FRB)が積極的に利上げを実施するとの見方が引き続き重しとなった。ナスダックが1日で2%以上の上昇または下落を記録するのは4月の15営業日のうち22日で8回目。機関投資家OANDAの見方では、指数が1日で2%動いているにもかかわらず、そこから読み取れることがほとんどないのは非常に稀という。
②S&P主要11セクター全てが下落
利益見通しを下方修正したHCAヘルスケアが21.8%安となり、競合他社も大幅安。S&Pヘルスケアは3.6%値下がりして、素材が3.7%下落した。決算を受け前日に最高値を付けていたニューコアが8.3%安となったほか、フリーポート・マクモランも6.8%下げた。
(●参考・・前述【9】の①②参照)
【14】4月27日「アルファベットの二段下げと金利低下の組み合わせ、それは『インフレよりも成長維持』への機関投資家の目線の変化か?」
<中立派>
①機関投資家ニューヨーク・ライフ・インベストメンツ
経済成長が危うい状況であることに疑いの余地はない。賃金やインフレ率が上昇する中、中央銀行が何とかソフトランディング(軟着陸)するための余地がますます小さくなっているのも間違いない。資産配分における大きな問題は、インフレが進むかどうかではない。それは既知の事実だ。むしろ、成長が維持できるかどうか。
<ベア派>
②アルファベット
引け後の決算発表を前に4%近く下落。さらにアルファベットは決算内容が失望を誘い、引け後の取引でさらに6.5%下げた。
③マイクロソフト
引け後の決算発表を前に4%近く下落。第3・四半期(3月31日までの3カ月)決算は、売上高と利益が市場予想を上回った。コロナ禍を受けて浸透するハイブリッド勤務を追い風にクラウドベースのサービスに対する需要が堅調だったが、引け後の時間外取引で株価は1%弱下落した。
④S&P総合500種一般消費財セクター
4.99%安と最大の下げを記録。テスラに加え、アマゾン・ドット・コムの4.6%下落が重しとなった。
⑤機関投資家ベアード
企業決算は総じてかなり良好だが、株式市場全体にはあまり影響していない。主にFRBと他の中銀、中国とコロナが材料になっている。相場は現在、無差別的な売りと恐怖の局面にあり、上振れよりも下振れのリスクのほうが大きい。
<ブル派>
⑥10年債利回り
8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.74%(ニューヨーク時間午後4時26分現在)。
(●参考・・前述【11】②参照)
【15】4月28日「パウエル議長にとって株式市場のこれまでの下げは、実は悪くない。むしろこれは恐らく、最良のシナリオに近い」
<ブル派>
①機関投資家リチャード・バーンスタイン・アドバイザーズ
金融当局にとって、これは恐らく最良のシナリオに近い。調整局面にあるのは株式市場でも比較的泡立った部分で、金利の異例なボラティリティーの高まりにもかかわらず、クレジット市場にそれほど広範な波及的影響はないからだ。
②連邦準備制度理事会(FRB)議長パウエル氏
米連邦準備制度の当局者の目には、過去数週間の米株安基調は悪くない兆しと映っているかもしれない。高値で推移していたテクノロジー銘柄を中心とするこのところの株価下落傾向を背景に、株式市場や債券市場など金融ストレスの全体的な水準を示すブルームバーグ米金融状況指数にもようやく引き締まりの様子が見られ始めた。同指数は一時マイナス0.73を付け、2020年の新型コロナウイルス感染拡大に伴うショックを除けば、18年以来のタイトな水準に近づいた。5月3、4両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で00年以来となる0.5ポイントの大幅利上げを決めると予想されている当局者にとって、こうした状況は歓迎すべきニュースであると考えられる。パウエルFRB議長は3月の時点で、金融環境は政策が「実体経済に波及する」メカニズムであり、当局が利上げを進めるのに従って引き締まりが見込まれると強調していた。(※筆者考察・・この株安という金融環境の引き締まりは、議長にとって実は最良のシナリオだったということでしょうか?)
(●参考・・後述する【22】②参照)
【16】5月3日「長期筋にとっては今が好機であり、大型ハイテク株は「特価」。短期筋にとっても明るい材料が出ればそれが何であっても、たちの悪いベアマーケットラリー(弱気相場の一時的な株高)につながる可能性あり」
<ブル派>
①機関投資家デファイナンスETF
市場はFRBの動きをすでに織り込み済みで、とりわけ長期筋にとっては今が好機であり、大型ハイテク株は「特価」と指摘。
②米著名投資家ウォーレン・バフェット
バフェット氏は30日、自身が率いるバークシャー・ハサウェイがゲーム大手アクティビジョン・ブリザード株9.5%を取得したと明らかにした。ゲーム大手アクティビジョン・ブリザードは3.3%高。
●参考・・後述する【22】①参照)
③機関投資家JPモルガン
投資家の不安は行き過ぎであり、世界経済の成長は年後半に回復が見込まれ、米景気拡大は減速しているが腰折れしていない。米株式市場で弱気の心理が圧倒的に優勢となっており、相場反発は遠い先でないかもしれない。米個人投資家協会(AAII)の調査で示されたのは、2009年3月初め以降で最も弱気の評価。投資家のセンチメントは極端に弱くなっており、軽度の投資家のポジショニングや懸念されたより良好な1-3月(第1四半期)の企業利益も手伝い、相場回復を可能にするはずと分析した。
<ベア派>
④10年債利回り
一時3.01%に上昇。終盤は10ベーシスポイント(bp)上昇の2.9905%で推移。
⑤機関投資家モルガン・スタンレー
S&P500種株価指数には短期的に少なくとも3800までの下げ余地があり、場合によっては3460まで下落する可能性がある。ただプラス面に関して言うと、株式市場は現在かなり売られ過ぎの状態にあり、明るい材料が出ればそれが何であっても、たちの悪いベアマーケットラリー(弱気相場の一時的な株高)につながる可能性がある。よって短期的にはいかなる可能性も排除できないが、現在の弱気相場が終了に程遠いということは明確にしておきたい。
【17】5月5日「FOMC後の買い安心感、短命に終わる可能性も。立ちはだかる6月からの前回ほぼ2倍ペースで実施予定の量的引き締め(QT)」
<ベア派>
①機関投資家クアドラティック・キャピタル・マネジメント
今後の焦点は年内に予想される計2ポイントの追加利上げにシフトした。これらの利上げは既に織り込まれている。米当局の利上げでインフレ高進に歯止めがかかるとなぜ市場が考えるのか困惑している。インフレ抑制で金融政策が短期的にできることはほとんどない。なぜならインフレの要因は大規模な政府支出やサプライチェーンの混乱、直近ではロシアによるウクライナ侵攻だからだ。FRBのパウエル議長が4日の記者会見でより大幅な利上げ観測を後退させる発言を行ったことで、市場には安堵のため息が広がったが、そうしたムードは短命に終わる可能性がある(※筆者注記・・短命どころかわずか1日)。引き続き市場は長引く高インフレと成長減速という有害な組み合わせに直面する心配があるからだ。
②機関投資家アルファTrAI
残ったテールリスクを取り除くことは、市場が今手にすることができる最高のごちそうの骨だ。こうした理由でS&P500種は喜ぶ子犬のように跳ねた。議長がより高い水準に言及しなかったことが一部の強気派をあおった可能性もある。
③6月から開始予定のFRB保有資産の縮小、いわゆる「量的引き締め(QT)」
QTとは、新型コロナウイルスのパンデミック対応で約2倍の約9兆ドルに膨張したFRBの保有資産を、前回のほぼ2倍のペースで縮小する予定のことだ。歴史的なインフレ高進に直面し、より短期間で圧縮しなければならなくなった。前回ではFRBは2017年から2019年にQTを実施しているが、今回のQT計画と比較した点を以下にまとめた。
ア)縮小規模は倍
4日の発表によると、資産縮小は6月から開始。規模は8月までは月475億ドルで、9月から月950億ドル(国債600億ドル、住宅ローン担保証券=MBS350億ドル)となる。これは前回の最大月500億ドル(国債300億ドル、MBS200億ドル)のほぼ倍。
イ)終了の見通し
銀行がFRBに預ける準備金が「潤沢と見なす水準をいくらか上回る」水準になった場合、QTプロセスを減速させた後に停止するとの見通しをFRBは示した。QTは中銀準備を減少させる作用がある。前回は準備金の水準を下げ過ぎた結果、短期金融市場が動揺した。FRBはそのような事態の再発を避けたいと考えている。
ウ)MBS売却の見通し
3月のFOMC議事要旨は、MBSの償還が月350億ドルの上限を下回るとFRB当局者が予想していることを示した。これは住宅ローン金利がすでに大幅に上昇しているため、低金利時にみられるローン借り換えによる「期限前返済」の割合が縮小しているためだ。議事要旨によると、保有資産縮小が「十分に進んだ」後、MBSの売却を検討することが適切である点でおおむね合意したとされる。しかし4日の発表は、MBS売却の可能性に言及しておらず、パウエル議長の記者会見でそれに関する質問はなかった。
<ブル派>
④株式デリバティブトレーダー
当局は今日のFOMC会合で市場を『クラッシュ』させようとはしていない。当局は基本的に各会合で0.5ポイントずつ利上げすると言っているのであって、それ以上でもそれ以下でもない。それが大きな安心材料。
⑤機関投資家TDセキュリティーズ
パウエル議長が非常に明確な言葉を発した。あまりに多くの利上げ予想が織り込まれたと考えていい。従って年限が短い方の債券はこれで安定するはずだ。パウエル議長は市場のプライシングほどタカ派ではなかった。
【18】5月6日「持続的な株価反転につながる唯一の状況はインフレがさほど過熱していないように見え始めるかどうかであり、インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇というのが機関投資家の総意」
<ベア派>
①機関投資家ブライト・トレーディング
投資家は姿勢を急転換し、株式や債券、暗号資産(仮想通貨)の売りに動いた。なお大きな不安があり、人々は昨日は青信号だと考えたが、今は再び身動きが取れなくなっている。個人のトレーダーは次々に入ってくるが、粉砕されている。逆張り派が今年は成功しているが、持続的な好転につながる唯一の状況はインフレがさほど過熱していないように見え始めるかどうかに尽きる。つまりインフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇だと分析する。
【19】5月10日「インフレの道筋が明らかになりさえすれば、株価急落の一方で利益拡大予想は改善し続けているため、株価水準は割安になりつつある。よって1430兆円失った株式市場は、近く底を打つ可能性がある」
<ブル派>
①機関投資家ゴールドマン
インフレと成長減速、中央銀行の政策引き締め、ウクライナでの戦争など多くの懸念材料が相場に織り込み済み。株式は中長期の投資家にとって魅力的に見え始めている。下振れリスクは依然としてあるが、その全ては実は既に市場に織り込まれた。大幅な調整が既に見られた後は、下落分の一部を取り戻すときが必然的にある。
②機関投資家JPモルガン
インフレやウクライナ戦争、中国のゼロコロナ政策、金融政策正常化という逆風は、現時点で多くが相場に織り込まれている。近く底を打つ可能性がある。しかしインフレの道筋が明らかになるまで変動は大幅なままであり、金融環境の引き締まりと市場の乏しい流動性のため、3月下旬と同様の規模の短期的反発は難しい。投資家にとって唯一の希望の兆しは、最近の下げ相場を受けて悪材料の大部分が価格に現在織り込まれている可能性が高いこと。3月末から11兆ドル(約1430兆円)を失った世界の株式市場は、差し当たり底を打ちつつあるかもしれない。テクノロジー株を中心としたバリュエーション低下が、押し目買い狙いの投資家を引き付けている。ストラテジストらはテクニカル指標や、企業の強力なバランスシート、高い配当利回りなどに注目する。
<ベア派>
③機関投資家BofA
S&P500種予想の下方修正には至らずとも、株安の流れはさらに続く。1928年以降のデータを分析し、4月の月間騰落率がマイナスの年は、その年の残りの期間に同指数が苦戦する傾向がある。
【20】5月11日「アナリストによる駆け込み下方修正の急増は、相場底入れの兆候を探してセンチメントに注目する向きにとって警戒解除のシグナル。そこに4月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)の伸びが前月から減速したことで、インフレはピークを付けた可能性が出てきたという」
<ベア派>
①多くのアナリスト
個別銘柄に注目するアナリストは決算発表時に「買い」や「ホールド」、「売り」の投資判断を示し、株価が上昇すると予測する場合がほとんどだが、ここにきてS&P500種株価指数構成企業の目標株価を新型コロナウイルス禍による2020年の相場急落時以降で最速のペースで下方修正している。彼らの圧倒的な強気な株価予想は猛スピードで引き下げられている。SP500指数の予想水準は11週連続で低下となり、ここ10年では最長の下方修正局面となった。
<ブル派>
②機関投資家ストラテガス・セキュリティーズ
相場底入れの兆候を探してセンチメントに注目する向きにとって、アナリストによる下方修正の急増は、市場に戻っても安全な時期についての手掛かりになり得る集団心理を見極める新たなレンズとなる。下方修正のデータが相場急落時に増加しがちなのは当然のことだが、われわれはこうしたデータを警戒解除のシグナルとして注目する。増加が止まれば、それを前向きに受け止めることになる。
③機関投資家グレート・ヒル・キャピタル
米労働省が11日に発表した4月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年同月比8.3%上昇と、1981年12月以来の高水準だった3月の8.5%から減速した。減速は昨年8月以来初めてであり、インフレはピークを付けた可能性がある。ただし7カ月連続で6%を上回っており、伸び率は予想を上回った。つまり決定的ではないが、正しい方向に向かっていると言える。
【21】5月13日「企業業績は好調」
<ブル派>
①投資調査会社リフィニティブIBES
データによると、S&P500指数採用企業の2022年第1・四半期利益は、前年同期比11.1%増加する見通し。エネルギーセクターを除くと、同4.9%の増加が見込まれている。これまでに第1・四半期決算を発表した458社のうち、利益がアナリスト予想を上回った企業の割合は77.9%。長期平均は66%、過去4四半期の平均は83.1%。また第1・四半期の売上高は前年同期比13.8%増加する見通し。エネルギーセクターを除くと、10.4%の増収となる見込み。これまでに第1・四半期決算を発表した企業のうち、売上高がアナリスト予想を上回った企業の割合は74.7%。長期平均は61.6%、過去4四半期の平均は79.5%。
【22】5月14日「インフレがピークアウトした兆候、従って性急に手じまわないよう助言する。今後12カ月間はリセッションが回避されるのが中心シナリオ」
<ブル派>
①米著名投資家ウォーレン・バフェット
投資会社バークシャー・ハザウェイによるオキシデンタル株の買い増しが材料となり、石油・ガス大手オキシデンタル・ペトロリアムは8.2%上昇。
●参考・・前述【16】②参照)
②機関投資家UBS
米国株式市場は上昇して取引を終えた。インフレがピークアウトした兆候に安心感が広がる一方、連邦準備理事会(FRB)による金融政策引き締めで米経済がリセッション(景気後退)に陥るとの懸念もくすぶっている。米労働省は過去6営業日で賃金の伸び、消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)、輸入物価を発表し、インフレが3月にピークに達したことを示唆。FRBがインフレ対応で利上げすることにより米経済がリセッションに陥ると懸念していた市場参加者にとって歓迎すべきニュースとなった。多くの投機的なフロス(泡)が既に市場から取り除かれた。従って、性急に手じまわないよう当社は助言する。今後12カ月間はリセッションが回避されるとの見方が当社の中心シナリオだ。ただし、投資家は高いボラティリティーに引き続き身構える必要はある。
③米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)と米10年債利回りの相関関係
米4月消費者物価指数(CPI)は総合と変動の激しい品目を除いたコアがともに市場予想を上回った。今までインフレをけん引してきたモノ・財に関する価格にピークアウト感が見られた一方、新たにサービス分野での価格上昇が目立った。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は12日、2.59%(前日比-0.11pt)と大幅に低下。4月21日に付けた最高値3.02%から大きく低下している。米10年債利回りも今週後半には一時2.8%台へと低下するなど、低下基調にあり、債券市場ではインフレ加速を見込んだトレードの巻き戻しが進められている様子。米BEIは4月21日の3.02%をピークに12日時点の2.59%まで低下しているのに対し、米10年債利回りは5月6日の3.14%の高値から12日時点の2.85%まで低下。米BEIの方が先にピークを付け、下落率も大きい。インフレ懸念が払しょくされていないことを踏まえれば、BEIがここから更に低下する余地は小さいとみられ、遅れて調整を始めた米長期金利の方がまだ低下余地があるが、BEIが上昇を続ければ、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の低下につながり、ハイテク株を中心に相場の反転が期待できるシナリオも浮上する。実際に今週末は、本決算を発表したソフトバンクグループ<9984>が大幅な赤字を計上しながらも、あく抜け感から株価が急伸した。
【23】5月16日「最終的な底値はまだ先だが、ベア相場では一時的な反発が起こりやすい」
<中立派>
①機関投資家BofA
キャピチュレーションのチェックリストに照らすと、投資家の現金保有規模など幾つかの指標は重大な領域に入っているが、なお過去の値下がりのピークにつけた水準に達していない指標もあるので、弱気局面では一時的な反発が起こりやすいく、最終的な底値はまだだろう。
【24】5月18日「過去の米利上げ時の経験則アノマリー」
<ブル派>
①機関投資家東海東京調査センター
1980年以降の過去9回の米国の金融引き締め局面で、1回目の利上げ後のS&P500種株価指数の推移(中央値)を試算すると、
・米国株は利上げ開始の2カ月後にボトムを付け、4カ月後にはプラス圏に浮上。6カ月後まで上昇した後は、もみ合い商状へと転じていた。
・それに対し、日経平均株価は最初の米利上げ後はほぼ右肩上がりで推移し、8-9カ月後にはピークを付けていた。この間、米S&P500種をおおむねアウトパフォームする傾向がある。
今回では、3月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で最初の利上げが決定。米S&P500種は4月以降に調整色を強め、約2カ月後である5月12日に年初来安値を付けた。半面、日経平均は3月安値を下回ることなく、米利上げ後もおおむね堅調に推移している。ここまでの株価の動きは過去の経験則とまったく同じで、日米株の格差は米長期金利が与えるインパクトの違いがあるため。金利上昇が株価バリュエーションの逆風になる米国株に対し、世界の景気敏感株としての色彩が強い日本株は金利上昇の背景にある景況感の改善ぶりがむしろ評価されやすい。過去の経験則にのっとれば、米利上げ開始から8-9カ月後の本年11-12月まで日本株は強含むことになる。過去のピークまでの中央値は、最初の利上げ時(今回は3月16日終値2万5762円)に比べ10%強の上昇率だった。もっとも、10カ月後からは日本株が調整し、高値圏で推移する米国株とパフォーマンスが逆転することもデータは示唆している。その理由は金融引き締めで米景気の悪化が次第に重しになってくる日本株に対し、米国株はバリュエーション低下圧力が一巡して1株利益の成長分が株価を押し上げるため。
②機関投資家三菱UFJ国際投信
日本株がアウトパフォームしやすい経験則について、米国は日米欧の中でいつも金融引き締めでトップバッターとなるのに対し、日銀は遅い。このように米国と日本との政策にタイムラグがあることが背景にある。今回も米国や欧州が利上げしても日銀は引き締めできる状況にはないとして、米欧はリセッション(景気後退)懸念が強いが、日本はまぬがれるかもしれないとの期待がある。
【25】5月19日「小売り大手のウォルマート、ターゲットの大暴落は、実はインフレには朗報。相場の下落を見て売りを急ぐのは賢明ではない」
<ブル派>
①米金融当局(連邦準備制度理事会FRB)
我々の観点では、商品価格のインフレ鈍化は朗報だ。小売り大手の業績悪化の意味することは、米国の消費者が物品から旅行などのサービスに支出をシフトさせているということ。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を背景とした個人消費ブームから恩恵受けていた小売業者にとっては心配な傾向である半面、サプライチェーンの混乱とインフレーションの面では明るい兆しだ。エコノミストの間では何カ月も前から、新型コロナ感染への懸念が後退して米国民が休暇や娯楽などの体験に支出するようになれば、物品需要は減少すると予想されていた。物品への支出が減ればサプライチェーンへの圧力は改善され、数十年ぶりの高インフレ率の押し下げに役立つと見込まれる。こうした動きがようやく始まりつつある。そして、小売り大手の堅調な収益や利益率に慣れていた株式市場には劇的な影響を及ぼしている。S&P500種株価指数は18日に4%強下落し、S&P500種一般消費財・サービス指数は6.6%下落した。小売り大手ウォルマートとターゲットが今週発表した決算では、利益を過去2年間押し上げてきた雑貨への支出鈍化が示された。ターゲットは、消費者が飲食店のギフトカードや旅行かばんを買うためにテレビなどの高額商品から離れていると指摘した。ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスやサウスウエスト航空などの米航空会社は、夏の旅行需要の積み上がりで今後数カ月の好調な収入見通しを示している。物品需要の減少はまた、運送や労働市場における圧力を緩和する。
②機関投資家ゴールドマン
シクリカル銘柄とディフェンシブ銘柄の相対的パフォーマンスは「劇的な成長減速」を示唆しているが、そういう見方は米供給管理協会(ISM)の製造業データに裏付けられていない。
③機関投資家クレディ・スイス
相場の下落を見て売りを急ぐのは賢明ではないと投資家に注意を促したい。実質利回りが天井を付ければ、急速に回復する可能性があり、特に株式市場には回復の余地がある。
④機関投資家ブリークリー・アドバイザリー・グループ
こうした弱気な市場では、不穏なムードが根強く、相場反発のタイミングを探ろうとしても全く無理な状況だが、これが弱気な市場では起こることであり、売りが売りを呼んでいる。とはいえ、これほどの弱気な地合いは、常にそれなりの上げ相場につながり得る。
<中立派>
⑤投資調査会社22Vリサーチ
ウォルマートの決算発表は、物品のデフレと消費者の好みの変化を示す最新例だ。これはインフレには朗報だ。ただ、引き続き問題なのはディスインフレが米金融当局にとって十分なスピードで進むかだ。
【26】5月21日「新たな見方が急浮上、物価抑制なら23─24年に一転利下げの余地あり」
<中立派>
①株式や上場投資信託(ETF)のオプション満期日
20日はオプションの満期日だったこともあり、いつもながらボラティリティーが増幅。推計1兆9000億ドル(約240兆円)に上る既存のポジションから新たなポジションを構築するタイミングとなったため、今後はオプション満期日通過後の米国市場の動向が注目されることになるだろう。
<ブル派>
②米セントルイス地区連銀ブラード総裁
連邦準備理事会(FRB)は高インフレをより迅速に抑制するために年内に政策金利を3.5%まで引き上げるべきとの見解を改めて示す。インフレとインフレ期待を前倒しでコントロールできればより良い結果が得られる。2023─24年にインフレが抑制されれば利下げが可能になる。このように今年中に3.5%まで利上げすべきだと主張してきたブラード総裁でさえ、インフレが抑制されれば来年の利下げもあり得るとの発言に波紋が広がる。
●参考・・後述する【29】①参照)
③機関投資家ソーンバーグ・インベストメント・マネジメント
1年以内にリセッション(景気後退)入りするというのが見解だ。よって当社は米国外にもっと高いバリューを見いだし、グローバルに投資先を見ている。
④機関投資家ロバート・W・ベアード
小売企業の決算で個人消費のひび割れが露呈したが消費全般はなおもかなり強く、貯蓄の余剰分もある。賃金の伸びもなお強い。インフレはいずれセンチメントを本格的に押し下げ、消費を圧迫すると思われるが、今も消費は堅調で利益も当面は伸びている。従ってこれまでの縮小は総じて多面的なものだった。状況はひどいが、実際には水面下ではそれほど悪くない。
<ベア派>
⑤米3指数
週足ではダウが8週連続で下落し、1932年の世界大恐慌以来の最長を記録。S&Pとナスダックも7週連続での下落となり、ドットコム・バブルがはじけた2001年以来最長となった。
⑥ディスカウント小売ロス・ストアーズ
22.5%の急落。22年度の業績見通しを下方修正したことが嫌気された。
【27】5月22日「ヘッジファンドは、今年予想される積極的な利上げの先に、来年の利下げを見据え始めた」
<ブル派>
①多くのヘッジファンド各社
米国株が低迷する一方、米国債相場が反発している。これはリセッション(景気後退)が訪れて米連邦準備理事会(FRB)の利上げサイクルが予想より早く終了し、来年後半には利下げもあり得るとの観測が強まっていることの表れ。商品先物取引委員会(CFTC)の金利先物ポジションデータを見ると、ヘッジファンドもこうしたシナリオに賭けている様子という。17日までの1週間のデータでは、3カ月物の担保付き翌日物調達金利(SOFR)先物は投機筋の売り越しが38万8207枚と、前週の46万0721枚から減り、過去7週間で最低となった。わずか1カ月前には過去最大の60万枚に達していた。SOFR先物の建玉は、トレーダーが予想する今後数年間の金利パスを最も正確に反映する指標の1つであり、その変化は多くを物語るという。30日物のフェデラルファンド(FF)金利先物も買い越しが続いている。SOFR先物の売り越しが減少したのは、売り建玉そのものの減少というよりは買い建玉の急増でほぼ説明がつく。つまり現場の運用者らは、今年予想される積極的な利上げの先に、来年の利下げを見据え始めていることになる。来年から利下げの見通しの理由の第1は、来年のインプライド金利は急低下していること。2023年6月限が織り込むFF金利は現在3%前後と、今月4日に付けた高水準から約0.5%ポイント低下。4日は50ベーシスポイント(bp)の利上げが決定された日だ。第2は、市場が予想する引き締めサイクルの期間が急激に短期化したこと。コンセンサスは数カ月前、利上げの終着点を来年9月と予想していたが、その後来年6月に変わり、今では来年3月も視野に入っている。23年12月のSOFR先物のインプライド金利は2.80%と、約2カ月ぶりの低水準となっている。来年6月に利上げが終わるという予想と併せて考えると、市場が織り込む来年後半の利下げ確率は80%となる。
【28】5月23日「パニック売りは終わったと想定する。ボラティリティーの影響を受けにくい長期投資家にとって、適切なエントリーポイントの水準となった」
<ブル派>
①株価収益率(PER)
ナスダック100の予想利益ベースの株価収益率(PER)は新型コロナウイルス禍に膨れ上がったバリュエーション(株価評価)が低減する中で、20倍前後と長期平均の水準となった。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の向こう1年間の予想利益ベースPERは15倍前後と、昨年初めのピーク時の24倍を大きく下回った。
②機関投資家フェデレーテッド・ハーミーズ
大規模な下げが多発する中で辛抱強くなるのは難しい。しかし痛みは和らぐはずで、近くそうなる可能性がある。
③機関投資家ジェフリーズ
IT(情報技術)セクターに関して強気に転換する。投資家が一部の極端な金利シナリオを軽視する中での現金に向かう動きは、市場のPER圧縮に反映されている以上となっている。
④機関投資家ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズ
弱気センチメントが短期のピークに達したことから、グロース銘柄への否定的見方をやめると表明。実際、株価が200日移動平均を上回っている銘柄数は2020年前半以来最少。
⑤機関投資家バンク・オブ・アメリカ(BofA)
投資家センチメントの指標は同行が「明確な逆張り買いの領域」と呼ぶ水準に達した。
⑥機関投資家ヘニオン・アンド・ウォルシュ・ アセット・マネジメント
手元資金が潤沢なアップルとマイクロソフトは打撃のほとんどが片付き、ハイテク分野で好機が醸成されていることから長期的に下げを取り戻すだろうと分析はするが、回復のタイミングについては慎重であり、底入れと呼ぶつもりは全くなく、今後さらに売りが起こることも確信している。
⑦機関投資家JPモルガン
新興国債の米国債に対する上乗せ利回りは一時487ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に拡大。15年に相場反転のきっかけとなった500bpの水準まであとわずかで、11年に反転につながった水準は既に上回った。新興国株の指標、MSCI新興市場指数は今年に入り月間ベースで毎月下落。株価純資産倍率(PBR)は1.44倍に低下し、05年以降の平均の1.47倍を下回った。
⑧オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)グループ
パニック売りは終わったと想定するのが妥当だ。戦術的なポジショニングや市場のボラティリティーの影響を受けにくい長期投資家にとって、適切なエントリーポイントの水準となっている。
【29】5月24日「ブルータスよ、おまえもか」
<ブル派>
①米アトランタ連銀ボスティック総裁
今後2回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で政策金利をいずれも0.5ポイントずつ引き上げた後、9月に利上げをいったん停止する可能性があるとの見解を示した。9月に一時停止することが理にかなうかもしれないという基本的な考えを持っている。夏場を過ごし、政策に関してわれわれがどういった位置にいるかを考察した後は、多くのことがその時点で起きつつある現場の動きに左右されるだろう。
●参考・・前述の【26】②参照)
<中立派>
②機関投資家ゴールドマン
米金融当局が引き締めの終了を示唆したら株価は底値を付けるだろうが、リセッション(景気後退)入りが明白になるまでそれは起こらない可能性がある。金融状況はこれまでに十分引き締まり、当局も十分な引き締めを実行かつ示唆したと、今以上に市場が自信を強める必要がある。過去の例によれば、金融政策は株価が底入れする約3カ月前に引き締めを終了し、それから約2カ月後に緩和へとシフトしている。市場に持続的な安心感が見られるようになるには、インフレ減速の兆候を確認する必要があり、当社の米国担当エコノミストはそれを今年後半と予想している。今年後半ということは、最速で7月1日以降ということになる。
【30】5月26日「最終審判:エヌビディアと3人目のブルータス。そして利上げペースを減速させるかいったん停止するかを決める秋の時期に真のハルマゲドンがやってくるが、その前に株式相場には平均31%の健全な上昇が到来するかもしれない」
<ベア派>
①時価総額ベースで米最大の半導体メーカー、エヌビディア
株価が25日の時間外取引で急落、一時10%安となった。投資家の間ではコロナ禍の期間に急増した半導体需要が後退し、同業界の特徴である好不況の波の1つになるとの懸念が強まっているが、エヌビディアの2-4月(第1四半期)決算では需要が引き続き力強いことが示唆された。2-4月売上高は46%増の82億9000万ドルで、アナリスト予想平均の81億ドルを上回った。一部項目を除いた1株利益は1.36ドルで、これも市場予想平均(1.30ドル)を超えた。5-7月(第2四半期)の売上高は約81億ドル(約1兆300億円)の見通し。ブルームバーグ集計のアナリスト予想平均は84億4000万ドルだった。
<ブル派>
②FOMC議事要旨
要するに積極的利上げを実施すれば、年内政策の柔軟性を手にすることができるということだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)が5月3-4両日に開いた会合では、今後2回の会合で0.5ポイントずつの利上げが必要だとの認識で大部分の当局者が一致した。積極的な引き締め継続姿勢が示された形で、当局者は必要に応じて今後政策を調整する柔軟性を得られることになる。多くの参加者は、今こそ利上げをすれば委員会が年内に金融引き締めの効果を検証する好位置に付けることができると判断した。その上で秋になって、利上げペースを減速させるかいったん停止するかを決める時期に真の問題がやってくる。5月のFOMC会合では、政策金利の0.5ポイント引き上げのほか、8兆9000億ドル(約1130兆円)に上るバランスシートを6月1日に縮小し始めることが決まった。こうした中、いくらかの参加者は、インフレがもはや悪化していないかも知れないことを示す経済指標が出始めたと指摘。ただそうした向きも、インフレがピークに達したと確信するには時期尚早であることには同意した。
③機関投資家OANDA
FRBが年内に引き締め政策を調整する可能性にかすかな望みを与えたと言える。
④機関投資家チェリーレーン・インベストメント
現時点で市場が本格的に上昇するためには、米連邦準備理事会(FRB)が現状に照らして利上げペースを落とすかあるいは状況を変える、何らかの兆候が必要。市場は先を見ているため、インフレは最悪期を脱したかも知れないと感じている。エネルギー価格やウクライナ情勢は確かにワイルドカードで、大きな状況変化をもたらし得る。しかしそうしたことが起きなければ、市場はこのあたりで安定し始め、FRBが経済は十分に減速し利上げを続ける必要はないとしてガイダンスを変更する時点を先読みする。
⑤機関投資家シティグループ
世界的な株の売り浴びせでバリュエーションが魅力的な水準になってきたので、欧州と新興国市場を中心に株の押し目買いを勧める。シティの「弱気相場チェックリスト」のうち警鐘を鳴らしているのは18項目中6項目のみ。世界金融危機の前は13項目、2000-03年の株安前には17.5項目だった。過去において市場の警戒信号が現在と同じような水準まで減った際には、その後12カ月で株式相場は平均31%の健全な上昇を演じた。なお昨年の世界的な株高のピーク時には、欧州や新興国市場よりも米株市場がシティのチェックリストで警戒を促していたという。米市場での押し目買いが時期尚早だと懸念する投資家にとっては恐らく、欧州と新興国市場が比較的安全な道だ。
<中立派>
⑥投資会社大手ブラックロック
議事要旨は7月がFRBにとって重要な節目になることを示している。今後さらに2回の0.50%ポイントの利上げを織り込んでいる中で7月会合以降、FRBは利上げに関してより『経済指標次第』になる可能性が高い。7月以降の政策方針は基本的に、インフレ率の動向と労働市場の需給不均衡の是正に向けた進展に左右される。これらの要因が改善すればFRBは利上げ回数を減らす方向にシフトする余地が生まれるが、そうでなければ金融引き締めを強化せざるを得なくなる可能性がある。7月会合以降、FRBは利上げに関してより「経済指標次第」になる可能性が高いと考えている。つまり、7月以降の政策方針は基本的に、a)インフレ率の動向、b)労働市場の需給不均衡の是正に向けた進展に左右される。もしこれらの要因が「改善」していれば(つまりインフレ率が低下し、労働市場の不均衡が是正された場合)、FRBにはある程度の余裕ができ、政策金利を25bp刻みで引き上げながら、中立と推定される金利水準を模索できると考える。この場合、市場のボラティリティーは低下し、経済がハードランディングする可能性は低くなる。しかし、7月のFOMC以降もこれらの要因が改善されなければ、FRBは50bp刻みの利上げを続けざるを得なくなる可能性が高い。このケースでは市場のボラティリティーは高止まりし、好ましくない結果をもたらす確率を高めることになるとみる。さらに、この第2のシナリオでは、75bpの利上げが再び選択肢となる可能性もあるだろう。
【31】5月28日「いきなりバリュー株の投資判断が引き下げされる。そして、ほくそ笑むパウエル議長と相場に底を打ち始めた兆候」
<ブル派>
①機関投資家クレディ・スイスとバンク・オブ・アメリカ(BofA)
27日、バリュー株の投資判断をそれぞれ引き下げた。今年の株式市場では成長株を大きくアウトパフォームしてきたが、債券利回りがピークを付け、景気回復が徐々に停止に向かう中で投資妙味が薄れつつあるとの見方だ。クレディ・スイスはバリュー株の判断を2020年5月以来維持していた「オーバーウエート」から「ベンチマーク」に引き下げた。米インフレ連動国債(TIPS)の利回り上昇は大方が終了したとみている。割安なバリュー銘柄は現在かなり買われ過ぎの水準にあるとし、業績見通しが悪化したり購買担当者指数(PMI)が急低下したりする局面では、成長株がアウトパフォームする傾向にある。そしてBofAは、欧州のバリュー株と銀行株の投資判断を「アンダーウエート」とした。成長が減速し名目債券利回りが低下するとの当行予測は、来年初めまでに銀行とバリュー銘柄が成長株と比べ10%以上アンダーパフォームするとの見方に整合する。
②連邦準備制度理事会(FRB)議長パウエル氏
米国では、賃金の伸びがようやく頭打ちになりそうで、これは労働者にとっては残念な状況だが、米連邦準備制度理事会(FRB)には歓迎される。この1年は大幅昇給で気前の良さを見せてきた企業だが、これ以上の増額は利益を圧迫すると警戒するようになっている。こうした状況は人材紹介会社や企業経営者、各種調査からみてとれる。来週発表の5月雇用統計では、平均時給の伸びが前年比5.2%と、4月の5.5%からは減速が予想されている。いずれもこの指標が始まった2007年以来で最も高い部類に入る。雇用主はこれまでのところ、労働コスト上昇を顧客に転嫁できているが、価格上昇は需要を抑制し始める臨界点に近づいている可能性がある。40年ぶりの強力なインフレを退治するという責務に全力で闘うFRBにとって、それこそ望むところなのだ。人材サービス会社マンパワーグループは、雇用主が『もう限界だ』と嘆くような賃金インフレのレベルにすでに到達していると指摘した。こうした心理背景は米金融当局の励みになる。なぜなら当局は経済を軟着陸に誘導する上で、物価圧力を抑制するためにはインフレ期待がしっかりとつなぎ止められているという認識が欠かせないと考えているからだ。米金融当局がインフレ目標の基準値としている個人消費支出(PCE)総合価格指数は、4月に前月比0.2%上昇、前年同月比では6.3%上昇した。これまでの昇給分が食品やガソリンなどの価格上昇に侵食されており、労働者は苦しい思いをさせられている。機関投資家ゴールドマンによれば、賃金の伸びは年末までに4.5%に減速する見通しで、その背景は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時昇給など、一時的な要因がなくなるからだ。FRBが目標とする2%のインフレ率と整合するには、賃金の伸びは3.5%から4%に落ち着かなくてはならないと同社はみており、その水準にある程度近づくと予想される。FRBにとってそこから先の仕事はやりやすくなるというのが同社の見解だ。
(●参考・・前述【15】②参照)
③機関投資家GLOBLAT
インフレ鈍化と底堅い消費支出を示す統計を受け、米連邦準備理事会(FRB)が景気後退を回避しつつ、金融引き締めを進めることが可能という楽観的な見方が広がった。市場はネガティブなニュースやFRBの行動を消化し、企業決算シーズンも終了しようとしており、相場が底を打ち始めた兆候が見られる。米金融当局がインフレ目標の基準値としている米商務省が27日発表した4月の個人消費支出(PCE)価格指数は、前年同月比6.3%上昇。伸び率は1982年以来の高水準となった前月の6.6%から縮小した。前月比でも0.2%上昇と、3月の0.9%上昇から減速し、2020年11月以来、最小の伸びにとどまった。この鈍化が、当局に積極的な利上げを求める圧力が弱まる可能性があるとの見方が広がった。そして機関投資家の間では、米連邦準備理事会(FRB)の積極的な利上げ予想を修正する動きが広がっている。また、朝方発表された米指標はインフレ伸び鈍化と堅調な消費支出の継続を示し、景気後退を巡る懸念も和らいだ。
④機関投資家バンク・オブ・アメリカ
米国株を中心に世界の株式ファンドへの資金流入が増え、流入額は過去10週間で最大となっている。
⑤機関投資家RBCキャピタル・マーケッツ
現時点で多少の押し目買いを始めるのは妥当だが、バリュエーション自体が買いの理由になるかと言えば、それはまだ。