2022年6月20日 株情報
(2022年6月19日執筆)
前回のチャート分析から約1ヶ月が経過しましたが、その後の展開と今後の予想を分析してみましょう。その前回のチャート分析の内容ではS&P500について以下のように述べました。
>カギを握るのは、やはりアメリカ株にリバウンドの動きが出てくるかどうか
>ですがS&P500には、その後も黒色のレジスタンスD、短期的下降トレンドラインC1、そして大局的下降トレンドラインA2などが次から次へと立ちはだかってくるので、アメリカ株での新しい上昇トレンドチャネルの形成はまだまだ遠そうな気配
そして「まだまだ遠そう」の予想通りにS&P500は、立ちはだかった黒色のレジスタンスDラインと、緑色の短期的下降トレンドラインC1を突破することができずにもたついている間に、インフレがピークアウトしたという手ごたえを感じさせるような指標結果が出なかったことで一挙に反落させられました。今回新たに掲示したSP500日足大局チャートをご覧下さい。株価は反落後に青色の下降トレンドラインAを割ってしまい、緑色の短期的下降トレンドラインC2に上から接近して、ギリギリ踏みとどまっているのが現在の状態です。それにしてもなぜ、せっかく反発した株価は、C1とDを上方ブレイクアウトできなかったのでしょうか?ここで改めて思い起こされるのが、前回分執筆内容の中で【Ⅲ】ファンダ要因における以下の項目です。
【1】3月30日「さらなる株価上昇の追い風が起きるとすればインフレが緩和していくことが条件だが、まだそうした状況ではない」
【18】5月6日「持続的な株価反転につながる唯一の状況はインフレがさほど過熱していないように見え始めるかどうかであり、インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇というのが機関投資家の総意」
なるほど、こうした機関投資家の分析から分かるように、とにかくインフレがピークアウトしたという指標数値が出現してくれない限り、空売りトレードの基本である「戻りは売り」圧力の前に株価反発は持続できない、ということのようです。この「インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇というのが機関投資家の総意」という見解については、前回の原稿執筆後も繰り返し機関投資家からレポートで述べられています。例えば、6月16日付けロイター報道では、機関投資家Tロウ・プライスの債券運用担当者が「インフレ緩和の明確な兆候が現れるまで下げ止まりは期待できない。ボラティリティーは高止まりし、わたしを含め市場参加者は総じてリスクを取る意欲を失っている」と述べたそうです。また他にも6月3日付けブルームバーグ報道では、米クリーブランド連銀のメスター総裁が「インフレ率がピークに達したと結論付ける前に、インフレの後退を示す数カ月にわたる数値の低下など説得力ある証拠を見る必要がある」と指摘した上で、「そうした状況をまだ目にしていない」と付け加えたそうです。
さてこうなると、どうやら今年後半相場の最大のカギが見えてきたような気がしますね。それはすなわち、
【カギその1】インフレピークアウト数値出現
これがいつなのか?ということであり、情報入手の早い機関投資家は、例えばウクライナ侵攻を確信してイチ早く売りに動いた時と今度は反対に、インフレピークアウトを確信させる数値が出る前にイチ早く買いに動くことが予想されるのです。もちろん私たち個人投資家もイナゴ習性の本領を発揮して彼らの動きにコバンザメの如く喰い付いて離さないことこそが今年後半の最重要課題となると言えるでしょう。さらには、今年前半6か月の機関投資家の予想や見解を改めてまとめて読み返してみると、他に3つのカギが想定されるのです。
【カギその2】中間選挙や過去の暴落場面から学べる株価アノマリー
【カギその3】機関投資家や各分析機関による今年の株価予想ゾーン(高値4900から安値3250くらい)
【カギその4】10年債利回りの3%割れが定着するかどうか?
これら4つのカギについては筆者渋谷がネタを大量に収集してストックしてあるので、さっそく読者の皆さまに羅列したい・・・ところなのですが・・・ いかんせん今回も執筆時間に限界があるので、まずはとにかくチャート分析の完成を優先せざるを得ないかと。そして4つのカギの詳述については今後、週に1つずつのUPを目標に取り組みたいと思います。
そこで改めて、掲示したSP500日足大局チャートをご覧下さい。今回は、機関投資家の今年の株価予想レンジやコロナ禍当初との株価比較を視覚的に把握しやすくするために、あえて期間を長めに設定しています。
(このチャート表示期間長めの設定メリットについては、渋谷高雄大百科第3章第3項(P103~)内「このとき、もし2~3ヶ月の短期間のチャートしか見ていなければわからなかったのですが~(中略)~このように短期間だけ見ていたら見えてこなかったことが長期間のチャートを見ることで理解しやすくなることもある~(中略)~それでも難しければ、もっと期間を伸ばすか、週足や月足で見てみるようにするなど、トレンドがわからなければ期間を伸ばしてみるといいでしょう。」等を参照)
ピンク色の最終サポートラインZが、コロナ前では最初はレジスタンスラインとして、その後は役割を逆転させて今度はサポートラインとして機能していたことが分かります。
(●この役割の逆転については、同大百科第3章第4項(P107)等を参照)
そしてこのZラインこそ、チャートにコメントを書き込んだように、最も弱気系機関投資家の2022年安値予想ゾーンである3400ポイントから3250ポイントに合致するのです。そして現在の株価水準は、オレンジ色の最高値4800ポイントゾーンのYラインから、すでにこれだけ下がってしまったのが視覚的に認識できます。そしてチャートに書き込んだ赤色のコメントの通りに、残りの下げしろがあとたったこれだけなら、インフレピークアウト数値出現(カギその1)や、中間選挙アノマリー(カギその2)や、最も弱気系機関投資家でも今年の高値予想ゾーンが4700ポイントから4900ポイント(カギその3)、すなわち大局的にWトップをつけにいくことに賭けて、買いに走る流れが多くなる? これが筆者の考える今年後半のメインシナリオです。
(●Wトップについては、同大百科第5章第10項等を参照)
また、短期的なテクニカル的買いサインもあります。次にSP500日足半年チャートをご覧下さい。これは大局チャートの右端拡大図です。直近において株価が緑色の短期的下降トレンドラインC2を上方ブレイクアウトした後に、上から再度C2に接近しているのが分かります。これは上記のZラインのところでも述べたように、レジスタンスラインとサポートラインの役割逆転のパターンなので、通常はZの時と同様に強いサポート機能を果たすと予想できるのです。そして株価がC2に沿ってズルズル下がったとしても、Zまでの距離はたかが知れていると言えるでしょう。
そしてこの大局チャートからおぼろげながら読み取れるのは、パウエル議長の隠された本音が「コロナ禍で国民に大盤振る舞いしたお金が今は貯蓄として滞留しているわけですが、景気をあえて多少冷やして株価をZラインまで一時戻すことによって、これを貯蓄取り崩しによる消費という体で合法的に国が回収します。これこそがコロナリセットであり他に方法がないのです、ご理解下さい。」という推定結論に至るわけなのです。筆者がこう思ったのは、6月8日付けブルームバーグ報道において機関投資家パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のポートフォリオマネジャーが、パウエル議長が数十年ぶりの高インフレを抑制しながら、景気後退を回避するという難題への解決の答えとして、「当局の望みはグロース・リセッションだ。それは成長率ゼロから1.8%へのソフトランディングとなる」とした記事を見たからです。このグロ-ス・リセッションの意味こそが、コロナばら撒きの回収ということなのかと腑に落ちたわけなのです。
そして最後に日本株の動向ですが、掲示したTOPIX日足大局チャートをご覧下さい。赤色で示した新しい上昇トレンドラインレンジB-B‘の形成は失敗となったのがチャートから読み取れます。しかし下値も限定的と思えます。なぜなら緑色の◎が現在の株価位置ですが、これもS&P500のC2ラインと同じくTOPIXにおいても緑色のCラインがサポートラインとして機能しそうだからです。加えて、もはやなりふり構わず金融緩和を続行せねばならないであろう日銀黒田総裁が1800ポイントラインでは強力な年金買いを入れてくることが想定されるからです。かといって上値も限定的っぽくて、上がったところの2000ポイントラインでは、たまりにたまったETFのステルス換金を黒田総裁がいつも通りにしてきそうなので、今年後半のTOPIXはボックスレンジに移行するというのが筆者の考えるメインシナリオです。あとは今年3月27日分の株情報でも詳述した泥濘の季節が実は晩秋にも到来するのです(つまり年2回、春と秋に来ることになる)が、つまり早ければ10月にもウクライナの大地が再び泥沼化してしまうので、その前にウクライナ軍が何らかの戦術的決定的勝利を手にすることができれば、それが世界サプライチェーンの混乱緩和=インフレ低下の連想につながる可能性もあります。何より侵略を受けたウクライナの勝利と解放を祈ってやまないのは、3月の原稿執筆時から変わらない想いです。