(中略)
第2 不正競争防止法違反に基づく損害賠償請求
- 被告らによる誤認惹起行為
(1) 書籍の競合
(中略)
上記2冊の書籍は、出版時期もわずか10日強程度の差しか無く、また内容についても、経済関連書籍の中でも、投資、ネット株という非常に狭いジャンルで競合し、また書籍表面において、著者の実績を金額にて表示して、消費者の購読意欲を高めようとしているという意味でも競合をしている(甲5)。
(中略)
(7) 本件書籍の問題点 本件書籍は、被告三村が「大学生」であった当時、わずか2年3か月という短期間で、ネット株式投資によって30万円を「3億円」にしたということ、つまり①平凡な大学生が②2年3ヶ月という短期間で③30万円から3億円に殖やした、という3点を最大のアピールポイントとしている。
しかしながら、これらのアピールポイントは全部または一部において偽装されており、実際は、平凡な大学生であるという筆名「三村雄太」なる人物はそもそも実在していないか、「大学生」ではないか、もしくは2年3ヶ月で30万円を3億円にしたという実績が偽装されているものであり、被告会社らもそれらを認識して出版行為を行ったことが強く窺われる。このことは、後述するとおり、原告が被告会社に対して、提訴予告を行うと共に、提訴前照会請求を行ったのに対しても、被告会社は、2年3ヶ月で30万円を3億円にした実績、及び被告三村が当時大学生であったことを「確認した」と述べるだけで、合理的な理由もなく、何らの証拠の全部ないし一部すら開示しようとしないことなどからも明らかである。
よって、被告会社及び被告三村らは、本件書籍について、自社が出版する商品についての品質、内容について誤認をさせるような表示をしている行為、及び、同商品を譲渡する行為が、いわゆる誤認惹起行為として不正競争防止法第2条第1項第13号に該当する不正競争行為であり、これを被告らが共同して行ったことは明白である。
また、これらの行為に出ていれば、不正競争という行為の性質上、被告らは当然、他人の営業上の利益を侵害すること、及び読者を欺くことを認識し、これを容認していたといえ、不正競争防止法4条にいう「故意」、少なくとも「過失」が認められることも明らかである。
(中略) - 営業上の利益侵害による損害の発生及び損害の額
(中略)
(2) 慰謝料
被告三村の本件書籍の本質は、匿名の人物が、巨額の投資実績を強調して、被告会社らと共同して多くの読者に書籍を販売するという利益活動を行ったことにある。この点、著者の実在とその投資実績が疑われた際、仮に被告会社が主張するような出版業界の慣習等を理由として、いかなる証明も拒否できるのであれば、やらせがし放題と言わざるをえず、不正の温床となることは明白である。 たとえば、投資業界におけるやらせの事例として、平成21年9月18日、フォレスト出版株式会社に対する証券取引等監視委員会による金融商品取引法違反に基づく勧告がなされた例を挙げることができる。(中略)
このように、投資の世界で、自身の影響力を高め、販売利益を増大させるために架空人物を創作したり、投資実績を偽装するという行為が横行しがちになるのも明白であり、このような実績の偽装の横行を防止するためには、実績を公的に証明する義務を課すことが不可欠である。(中略) 原告は、株式による所得額をセールスポイントとして出版利益活動を行う以上、読者から著者に求められる本来の社会的通念として、上記のとおり著者の投資実績の積極的証明義務があると考え、自身のホームページ上において確定申告書の控えや課税証明書、特定口座年間取引報告書を掲示し、もって自身の実績を社会的に立証し、投資業界への信頼感を高め、一般投資家への投資成功への一助とするための活動を心掛けてきたものである。このように、原告は、自身の挙げた実績を偽装することなく、誠実に投資関連書籍を出版していたのであるが、被告らの上述の行為によって、原告の上記努力は水泡に帰し、これにより多大な精神的苦痛を被った。かかる精神的苦痛を慰謝するに足る金額は、300万円を下らない。
(以下略)