第1 三村氏の実在性について
(中略)
2 しかし、三村氏は紛れもなく実在しているので、原告の主張は前提を欠き、失当である(なお、「三村雄太」は筆名であり本名ではない)。
ちなみに、本件書籍(甲15)185頁以下の後姿の写真は、三村氏本人であるし、原告の指摘する「週刊SPA!」の三村氏の連載記事においても、三村氏本人やその自宅内の写真が掲載されているところである(中略)。
第2 三村氏の身分について
(中略)
3 また、株式投資の方法論という書籍の性質上、そもそも、方法論に関わらない三村氏の実在性や身分といった要素は、原告書籍の売上を直ちに左右するものではないから、本件とは関連性がない。
第3 三村氏の運用実績について
(中略)
2 しかし、三村氏が株取引により2年3ヶ月で30万円の資金を3億円に増やしたのは事実であるから、原告の主張には理由がない。
3 なお、原告は、何らの具体的、合理的根拠も示すことなく、一方的に、①三村雄太なる人物は実在しない、②仮に三村氏が実在の人物であるとしても、大学生ではない、③2年3ヶ月で30万円を3億円にしたとする三村氏の運用実績は虚偽であると主張するが、むしろ、(中略)本件書籍の各記載を見れば、その内容は具体性、迫真性があり、決して想像では記載できないものであることは明らかである。
第4 誤認惹起について
(中略)
2 しかし、言うまでもなく、株式に限らず、投資一般において、「投資」と名のつくものにはリターン(利益)のみならず、必ずリスク(損失)も伴うものであることは、周知の事実である。
(中略)
こうしたことからすれば、本件書籍を読んだ一般読者において、原告の主張するような誤認を惹起することなど到底あり得ない。
(中略)
4 また、こうした投資関連書籍における本質的な内容は、当該書籍の著者(投資家)自身の属性等ではなく、あくまでもその投資手法である。何となれば、投資関連書籍を購入する読者が関心を寄せているのは、著者の属性等ではなく、その投資手法である。したがって、少なくとも投資関連の書籍においては、著者の属性等は本質的な問題ではない。結局は、投資関連の書籍に接した一般読者において最大の関心が寄せられているのは、当該書籍に記載された投資手法を理解し、自ら投資を行う際に参考にするか否かである。
(中略)
第5 因果関係について
(中略)
2 原告の主張は、株式投資に関心がある者において、投資に関連する書籍を購入しようとする場合、新品・中古も含め、数多く出版されている投資関連書籍のうち、いずれか1冊しか買わないということを暗黙の前提にしているが、興味のある分野の書籍を複数冊購入する場合もあることは彼我のよく経験するところである。つまり、本件書籍の購入者において、本件書籍に加えて、原告書籍を購入することも皆無とは言えないのであって、原告の主張は、その前提において誤りがあり、失当である。
3 また、原告がインターネットで検索した範囲に限っても、株式投資の方法論に関する書籍は、平成17年7月、8月時点に時期を固定したとしても、67冊も出版されていた(しかし、現実には、ある書籍の購入を希望する者が現在新刊書としては市中に流通していない書籍を中古書店で購入することはよくあるし、(中略)潜在的には、原告の出版した書籍と競合する商品は無数に存在するといえるわけであるから、本件書籍の出版がなければ、本件書籍の購読者が、原告書籍を購入していたはずであるなどとは到底いえない。したがって、原告の主張には理由がない。
4 なお、原告書籍の発行会社であるダイヤモンド社から、被告らに対し、これまで何らの苦情も呈されていない。