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2022年6月27日 株情報追加

2022年6月27日 株情報追加

(2022年6月26日執筆)

先週金曜日のアメリカ市場において、S&P500種株価指数は前日比3.1%高の3911.74と2020年5月以来の大幅高となり、週間ベースでは6.5%上げて約1カ月ぶりの大幅上昇となりました。さて問題は強いこの上昇力が持続するかどうかですが、これまでの原稿で何度も触れてきたように、「インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇というのが機関投資家の総意」という前提がマーケットを支配しているうちは、とにかくインフレがピークアウトしたという指標数値が出現してくれない限り、空売りトレードの基本である「戻りは売り」圧力の前に株価反発は持続できないでしょう。しかしここに至り、短期的な近い未来においてインフレピークアウトを予感させる指標数値がついに出そうな気配なのです。そこで今回は、前回で述べたところの今年後半相場の最大のカギとした以下テーマについてまとめました。

【カギその1】インフレピークアウト数値出現

【1-1】機関投資家が「ゲームチェンジャー」と表現した6月のミシガン大学消費者マインド指数速報値が修正された

タイムリーなことに、非常に大きな材料が先週金曜日に投下されました。そもそも6月9日から17日に至るS&P500種株価指数の約4100ポイントから3650ポイントに至る7営業日の急落のファンダ的原因の解釈は、米ミシガン大学が6月10日に発表した1年先の期待インフレ率の「速報値」が5.4%、5-10年先の期待インフレ率のこれまた「速報値」が3.3%だったことで、FRBがこれをインフレ急加速のシグナルと解釈する危険が高いとみなされたからです。どういうことかというと、その数日後に機関投資家野村証券から分かりやすい解説が出たので、その概要を以下に引用してみましょう。

(以下引用)
衝撃を与えたのは10日のニューヨーク市場引け間際に発表された6月のミシガン大消費者マインド指数だったが、それも比較的大きく報じられる「信頼感指数」ではなく、「5-10年長期期待インフレ」という平常時にはあまり気にされない指標である。その6月の速報値がプラス3.3%と、5月の同3.0%から上振れたことは株式市場にとって不意打ちかつ明確な悪材料と言える。なぜならこの指標はコロナ禍にあっても最大で3.1%にとどまっていたので、一部のFOMCメンバーに「インフレ率はいずれ自然に低下する」という見方をさせる重要な論拠になっていたからだ。しかし3.3%という予想外の上振れになったことで論拠が失われたと言える。これまで米国の消費者は、昨年来のガソリン高、食料品の大幅値上げ、外食・宿泊の大混雑と価格高騰といった一連の現実のインフレ率上昇に歯止めがかからない中でも、これらをコロナ禍特有の現象と受け止めていたと当社は仮説している。つまり消費者の長期期待インフレは落ち着いており、それはコロナ終息とともに沈静化するだろうと消費者は直感していた。しかしウクライナ情勢の悪化という新たなグローバル要因が加わったことで、物価高に拍車がかかり、米国の消費者は「インフレは長期化するのではないか」と疑念を抱き始めたため、高賃金の要求などを通じて、自己実現的なインフレ上昇圧力は強まっていく見通しに変化した。そのために株式市場では10日以降、インフレを鎮静化させるためにFRBは大幅利上げで景気をリセッションに追い込むのをやむなしとする悲観シナリオが勢いを増したことが株の投げ売りにつながった。
(以上引用終わり)

そして結局、パウエルFRB議長は6月のFOMC後の記者会見で、この3.3%という数値を「強く目を引く統計だった」と表現し、予想を上回った5月の消費者物価指数(CPI)とともに、今回75bpの利上げを決定する一因になったと説明したのです。

上記機関投資家野村証券の他にも多くの機関投資家が、このミシガン大学が発表した消費者マインド指数(速報値)で、5-10年先のインフレ期待が3.3%(前月3.0%)に上昇して2008年以来の高水準を記録した点について深刻な懸念を表明しました。中でも今回のFOMCでの0.75ポイント利上げを最初に予測した機関投資家バークレイズとジェフリーズは、インフレ期待が不安定化しつつある可能性示す証拠にミシガン大学の調査結果を掲げ、ジェフリーズはそれを「ゲームチェンジャー(状況を一変させるもの)」とすら呼んだのです。ただ、パウエルFRB議長は会見において、今後数カ月はインフレ低下の説得力のある証拠を探すので利上げペースはそのデータ次第になるが(筆者注※後述【1-2】につながる)、指標は「短期的なインフレ率は高いが、中期的にはインフレ期待が急激に低下する」という見通しも示したのです(筆者注※後述【1-3】につながる)。

ところが?!
実に14年ぶりの高水準となっていたこのインフレ期待の速報値が、なんと確定値で下方修正されてしまったのです。5-10年先のインフレ期待確定値は3.1%と、速報値の3.3%から下向きに修正され、1年先のインフレ期待確定値も5.3%と、速報値の5.4%から下向きに修正されてしまったのです。ミシガン大消費者調査ディレクターは発表文で、6月確定値での長期インフレ期待の下方修正は、数年先に関して極めて低いインフレを予想する消費者の割合が高まったことが理由だと説明したそうです。

あれ?!
先ほどの機関投資家野村証券の見解では、5-10年長期期待インフレ6月速報値の3.3%という数字は、コロナ禍最大値3.1%より予想外に上振れてしまったので、インフレ率はいずれ自然に低下するという一部FOMCメンバーの重要な論拠を失わせたと論じていました。さらには、機関投資家ジェフリーズが表現した「ゲームチェンジャー」は言わば、勇み足的な過大表現となり、結局は5-10年長期期待インフレ6月確定値3.1%という数字は、コロナ禍最大値3.1%とギリギリ同じだったわけで、結局は「ゲームチェンジャー」という言い方は大げさだったということになります。よって、利上げペース加速を巡る米金融当局の切迫感を和らげる可能性がにわかに急浮上したとされ、それが先週金曜日のアメリカ市場の大陽線示現につながったようですね。

【1-2】次の最大の焦点は、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが「前月比」で低下するかどうか

では、そのゲームチェンジャーが幻想だったとして、今回の窓空け大陽線が本当にトレンドの大転換につながるほどのエネルギーを秘めているのでしょうか?
(●トレンド大転換のシグナルについては、渋谷高雄大百科第3章第7~8項(P135~139)等を参照)
しかし今までが今までだけに簡単には信用できないというのが現在の多くの個人投資家の心境でしょう。しかし前回の株情報原稿で筆者は以下のように述べました。

>情報入手の早い機関投資家は、例えばウクライナ侵攻を確信してイチ早く売りに動いた時と今度は反対に、インフレピークアウトを確信させる数値が出る前にイチ早く買いに動くことが予想される。

仮に今回の大陽線が、これまで様子見を続けてきた機関投資家の買い転換への変化の初動であれば、置いてきぼりされないように私たち個人投資家もせめて打診買いくらいはしておかないと後で猛烈な後悔に襲われそうではあります。例えば、6月20日付けロイター報道では、機関投資家ダコタ・ウェルスのシニア・ポートフォリオ・マネジャーの見解として「インフレ鈍化の兆しをしっかりと確認したい。それまでは余剰キャッシュを抱えたまま様子見を続ける」と語ったことが紹介されていましたが、この記事が出た時点がS&P500種株価指数の直近最安値3650ポイント付近であったのが、いきなりわずか5営業日後に今回の大暴騰が発生した不可思議から、待機を続けてきた機関投資家の余剰キャッシュに買いの大逆流が発生しつつあるかもしれないのです。なぜなら、前述のようにパウエルFRB議長は会見において、今後数カ月はインフレ低下の説得力のある証拠を探すので利上げペースはそのデータ次第になると述べましたが、情報の早い機関投資家は必ずデータが出そろう前に買い始めるのは間違いないからです。そこでまもなく到来する参考になりそうな指標に注目したいと思います。それはやはり、7月上旬発表予定の次回消費者物価指数(CPI)でしょう。前項でも述べたようにパウエルFRB議長をして、予想を上回った6月公表の5月分CPIがミシガン速報値と共に、これが75bp利上げ決定の一因になったと言わせたからです。そして、余剰キャッシュを抱えたまま様子見を続ける機関投資家の総意としては、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが、「前月比」で低下することが重要らしいのです。ちなみに5月分(6月発表)は前月比では0.6%の上昇でした。このコアCPIが重要なのは、インフレのせいで秋の中間選挙で大敗の恐れがあるバイデン民主党政権が「変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが落ち着いたのは良いこと」だと声明を出したことからも伺えるのです。ここでバイデン政権が「コアCPIが落ち着いた」と評したのは、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが、「前年同月比」で前4月が6.2%の上昇で、5月の予想中央値が5.9%上昇のところ、実際には6.0%上昇だったので、予想中央値を0.1%だけ超えたものの、前4月より0.2%の低下はしたことによるものです。しかし、秋の選挙が気になる政治家ではなく、実際にマーケットで余剰キャッシュの投入タイミングを伺う機関投資家の目線は少し違っている模様で、例えば投資調査会社22Vリサーチの創業者は、金融状況のさらなる引き締まりを意味するシグナルのひとつとして、コアCPIが「前月比」で低下しなかった(前月比0.6%上昇)ことを挙げたそうです。では、来月7月公表予定の6月分のコアCPIが「前月5月比」で低下する見込みはあるのでしょうか?それについては、過去3回のインフレ持続予想を的中させて、約1年前にアメリカで高インフレが長引くことも的確に予測したブルームバーグのコラムニストであり著名な債券市場ストラテジスト、モハメド・エラリアン氏の見通しが参考になりそうです。同氏によれば、懸念しているのは6月の「前月比」上昇率が5月よりも悪化するのではないかという点だそうです。つまり、前月比0.7%以上の上昇が見込まれるということになります。同氏の過去の的中率の高さを考えれば、次回の悪化の可能性は極めて高いと推定せざるを得ません。よって、次回CPIでヘッジファンドに大規模な売り仕掛けをかけられる危険性が大いにありうるのです。ただ、衝撃的だった6月公表の5月分CPIの次回悪化が広く予想されてしまっている以上、すでにチャートには織り込み済みかもしれません。よって悩ましいのは、仮に機関投資家がさらにその次の8月公表予定の7月分が前月比下落という情報先回り入手をしているのであれば、予想される次回CPIでのヘッジファンド大規模な売り仕掛けが、それこそ第3段階「反発が持続するか確認するために再び安値を試す」の最終段階最後の下げになる可能性は大いにありえます。
(※筆者注釈:この第3段階については、2022年6月3日 株情報(追加【Ⅱ】)の【21】5月25日「株式相場は急落した後、底入れまで4段階のプロセスに従うことが多く、現在はその第2段階の相場は反転上昇」の③調査会社ネッド・デービス・リサーチの項目参照のこと)
前回の株情報のチャート分析でのテクニカル面における今後の下値が限定的と思えることも合わせて考えれば、今の局面での打診買い+次回CPI通過での第2次買いが筆者の想定する今回のメインシナリオです。

【1-3】半導体セクターや海運セクターの調子の悪さとインフレピークアウトの相関性

次に、インフレのピークアウトを裏付けるような各種数値や機関投資家の分析については、いくつかのカテゴリーに分類できると思えます。それらを羅列していくと、以下のようになります。

・住宅市場の動向
・消費者の好みの変化による在庫問題とサプライチェーンの相関性
・労働市場と貯蓄低下、クレジットカード利用増の相関性
・石油・資源価格下落の見通し(2022年6月3日 株情報(追加【Ⅱ】)【27】6月1日「原油相場は現在の1バレル120ドルに対し、適切水準は70ドル」参照)
・仕入れ価格の下落の見通し
・需要、生産拡大の見通し

などに分類できるのですが、いかんせん今回も執筆時間の都合によりこれらを体系的にまとめるのは次回にさせて頂いて、今日は筆者が最重要と考える記事の紹介だけはしておきたいと思います。それは6月7日付けブルームバーグ報道なのですが、現在の高インフレをもたらしている供給サイドの主要ファクターのうち、
①半導体価格
②コンテナ輸送のスポット(随時契約)運賃
③北米の肥料価格

の3つの指標が既にピークを打ったとみられ、世界の消費者が待ち望むインフレ減速が間近に迫っている可能性があるというものです。その3つの指標の各詳細ですが、

①については、ノート型パソコン(PC)や自動食洗機、LED電球、医療機器など多様な電子機器完成品の将来コストの目安となる半導体価格の指標は現在、2018年7月のピーク時の半分まで下げており、昨年の年央時点の水準を14%下回っている。

②については、シカゴのアパレルやシンガポールの高級品、欧州の家具・インテリアの流通経路での費用の目安となるコンテナ輸送のスポット運賃は、過去最高を記録した昨年9月から26%下げている。

③については、世界の食料品価格上昇の先行きを示す北米の肥料価格は3月の過去最高値を24%下回っている。

さらにこの3つの指標に加えて、中国の生産者物価指数(PPI)の上昇率が昨年10月にピークを付けた後に鈍化していることも世界的な輸入インフレの緩和を示唆する有望な兆候だとオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のアジア調査責任者が分析しています。それによれば、「世界の一部地域のインフレはまだピークに達していないものの、年間インフレ率が下がり始める転換点がそれほど遠い先ではないことを示す少なくとも幾つかの兆候がみられ、購買担当者指数(PMI)のコンテナ輸送運賃が下落し、サプライヤー納期が改善したことは供給面のボトルネック緩和を示しており、年内に物価圧力は抑制される」という予測をしています。なるほどたしかに、前述のようにパウエルFRB議長は会見において、指標は「短期的なインフレ率は高いが、中期的にはインフレ期待が急激に低下する」という見通しを示しましたが、こうした価格や運賃の下落が根拠になっている可能性が大いにありそうですね。そう言えば最近の日本株でも半導体セクターや海運セクターの調子は確かに悪いですね。これは2022年5月30日 株情報(追加【Ⅲ】)【31】5月28日「いきなりバリュー株の投資判断が引き下げされる。そして、ほくそ笑むパウエル議長と相場に底を打ち始めた兆候」①機関投資家クレディ・スイスとバンク・オブ・アメリカ(BofA)の項目で「27日、バリュー株の投資判断をそれぞれ引き下げた」という記事に遠因があると筆者は考えていたのですが、それと合わせてこの①と②の影響も大きかったのでしょう。

2022年6月20日 株情報

2022年6月20日 株情報

(2022年6月19日執筆)



前回のチャート分析から約1ヶ月が経過しましたが、その後の展開と今後の予想を分析してみましょう。その前回のチャート分析の内容ではS&P500について以下のように述べました。

>カギを握るのは、やはりアメリカ株にリバウンドの動きが出てくるかどうか
>ですがS&P500には、その後も黒色のレジスタンスD、短期的下降トレンドラインC1、そして大局的下降トレンドラインA2などが次から次へと立ちはだかってくるので、アメリカ株での新しい上昇トレンドチャネルの形成はまだまだ遠そうな気配

そして「まだまだ遠そう」の予想通りにS&P500は、立ちはだかった黒色のレジスタンスDラインと、緑色の短期的下降トレンドラインC1を突破することができずにもたついている間に、インフレがピークアウトしたという手ごたえを感じさせるような指標結果が出なかったことで一挙に反落させられました。今回新たに掲示したSP500日足大局チャートをご覧下さい。株価は反落後に青色の下降トレンドラインAを割ってしまい、緑色の短期的下降トレンドラインC2に上から接近して、ギリギリ踏みとどまっているのが現在の状態です。それにしてもなぜ、せっかく反発した株価は、C1とDを上方ブレイクアウトできなかったのでしょうか?ここで改めて思い起こされるのが、前回分執筆内容の中で【Ⅲ】ファンダ要因における以下の項目です。

【1】3月30日「さらなる株価上昇の追い風が起きるとすればインフレが緩和していくことが条件だが、まだそうした状況ではない」

【18】5月6日「持続的な株価反転につながる唯一の状況はインフレがさほど過熱していないように見え始めるかどうかであり、インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇というのが機関投資家の総意」

なるほど、こうした機関投資家の分析から分かるように、とにかくインフレがピークアウトしたという指標数値が出現してくれない限り、空売りトレードの基本である「戻りは売り」圧力の前に株価反発は持続できない、ということのようです。この「インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇というのが機関投資家の総意」という見解については、前回の原稿執筆後も繰り返し機関投資家からレポートで述べられています。例えば、6月16日付けロイター報道では、機関投資家Tロウ・プライスの債券運用担当者が「インフレ緩和の明確な兆候が現れるまで下げ止まりは期待できない。ボラティリティーは高止まりし、わたしを含め市場参加者は総じてリスクを取る意欲を失っている」と述べたそうです。また他にも6月3日付けブルームバーグ報道では、米クリーブランド連銀のメスター総裁が「インフレ率がピークに達したと結論付ける前に、インフレの後退を示す数カ月にわたる数値の低下など説得力ある証拠を見る必要がある」と指摘した上で、「そうした状況をまだ目にしていない」と付け加えたそうです。

さてこうなると、どうやら今年後半相場の最大のカギが見えてきたような気がしますね。それはすなわち、

【カギその1】インフレピークアウト数値出現

これがいつなのか?ということであり、情報入手の早い機関投資家は、例えばウクライナ侵攻を確信してイチ早く売りに動いた時と今度は反対に、インフレピークアウトを確信させる数値が出る前にイチ早く買いに動くことが予想されるのです。もちろん私たち個人投資家もイナゴ習性の本領を発揮して彼らの動きにコバンザメの如く喰い付いて離さないことこそが今年後半の最重要課題となると言えるでしょう。さらには、今年前半6か月の機関投資家の予想や見解を改めてまとめて読み返してみると、他に3つのカギが想定されるのです。

【カギその2】中間選挙や過去の暴落場面から学べる株価アノマリー

【カギその3】機関投資家や各分析機関による今年の株価予想ゾーン(高値4900から安値3250くらい)

【カギその4】10年債利回りの3%割れが定着するかどうか?

これら4つのカギについては筆者渋谷がネタを大量に収集してストックしてあるので、さっそく読者の皆さまに羅列したい・・・ところなのですが・・・ いかんせん今回も執筆時間に限界があるので、まずはとにかくチャート分析の完成を優先せざるを得ないかと。そして4つのカギの詳述については今後、週に1つずつのUPを目標に取り組みたいと思います。

そこで改めて、掲示したSP500日足大局チャートをご覧下さい。今回は、機関投資家の今年の株価予想レンジやコロナ禍当初との株価比較を視覚的に把握しやすくするために、あえて期間を長めに設定しています。
(このチャート表示期間長めの設定メリットについては、渋谷高雄大百科第3章第3項(P103~)内「このとき、もし2~3ヶ月の短期間のチャートしか見ていなければわからなかったのですが~(中略)~このように短期間だけ見ていたら見えてこなかったことが長期間のチャートを見ることで理解しやすくなることもある~(中略)~それでも難しければ、もっと期間を伸ばすか、週足や月足で見てみるようにするなど、トレンドがわからなければ期間を伸ばしてみるといいでしょう。」等を参照)

ピンク色の最終サポートラインZが、コロナ前では最初はレジスタンスラインとして、その後は役割を逆転させて今度はサポートラインとして機能していたことが分かります。
(●この役割の逆転については、同大百科第3章第4項(P107)等を参照)
そしてこのZラインこそ、チャートにコメントを書き込んだように、最も弱気系機関投資家の2022年安値予想ゾーンである3400ポイントから3250ポイントに合致するのです。そして現在の株価水準は、オレンジ色の最高値4800ポイントゾーンのYラインから、すでにこれだけ下がってしまったのが視覚的に認識できます。そしてチャートに書き込んだ赤色のコメントの通りに、残りの下げしろがあとたったこれだけなら、インフレピークアウト数値出現(カギその1)や、中間選挙アノマリー(カギその2)や、最も弱気系機関投資家でも今年の高値予想ゾーンが4700ポイントから4900ポイント(カギその3)、すなわち大局的にWトップをつけにいくことに賭けて、買いに走る流れが多くなる? これが筆者の考える今年後半のメインシナリオです。
(●Wトップについては、同大百科第5章第10項等を参照)
また、短期的なテクニカル的買いサインもあります。次にSP500日足半年チャートをご覧下さい。これは大局チャートの右端拡大図です。直近において株価が緑色の短期的下降トレンドラインC2を上方ブレイクアウトした後に、上から再度C2に接近しているのが分かります。これは上記のZラインのところでも述べたように、レジスタンスラインとサポートラインの役割逆転のパターンなので、通常はZの時と同様に強いサポート機能を果たすと予想できるのです。そして株価がC2に沿ってズルズル下がったとしても、Zまでの距離はたかが知れていると言えるでしょう。

そしてこの大局チャートからおぼろげながら読み取れるのは、パウエル議長の隠された本音が「コロナ禍で国民に大盤振る舞いしたお金が今は貯蓄として滞留しているわけですが、景気をあえて多少冷やして株価をZラインまで一時戻すことによって、これを貯蓄取り崩しによる消費という体で合法的に国が回収します。これこそがコロナリセットであり他に方法がないのです、ご理解下さい。」という推定結論に至るわけなのです。筆者がこう思ったのは、6月8日付けブルームバーグ報道において機関投資家パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のポートフォリオマネジャーが、パウエル議長が数十年ぶりの高インフレを抑制しながら、景気後退を回避するという難題への解決の答えとして、「当局の望みはグロース・リセッションだ。それは成長率ゼロから1.8%へのソフトランディングとなる」とした記事を見たからです。このグロ-ス・リセッションの意味こそが、コロナばら撒きの回収ということなのかと腑に落ちたわけなのです。

そして最後に日本株の動向ですが、掲示したTOPIX日足大局チャートをご覧下さい。赤色で示した新しい上昇トレンドラインレンジB-B‘の形成は失敗となったのがチャートから読み取れます。しかし下値も限定的と思えます。なぜなら緑色の◎が現在の株価位置ですが、これもS&P500のC2ラインと同じくTOPIXにおいても緑色のCラインがサポートラインとして機能しそうだからです。加えて、もはやなりふり構わず金融緩和を続行せねばならないであろう日銀黒田総裁が1800ポイントラインでは強力な年金買いを入れてくることが想定されるからです。かといって上値も限定的っぽくて、上がったところの2000ポイントラインでは、たまりにたまったETFのステルス換金を黒田総裁がいつも通りにしてきそうなので、今年後半のTOPIXはボックスレンジに移行するというのが筆者の考えるメインシナリオです。あとは今年3月27日分の株情報でも詳述した泥濘の季節が実は晩秋にも到来するのです(つまり年2回、春と秋に来ることになる)が、つまり早ければ10月にもウクライナの大地が再び泥沼化してしまうので、その前にウクライナ軍が何らかの戦術的決定的勝利を手にすることができれば、それが世界サプライチェーンの混乱緩和=インフレ低下の連想につながる可能性もあります。何より侵略を受けたウクライナの勝利と解放を祈ってやまないのは、3月の原稿執筆時から変わらない想いです。

2022年6月3日 株情報(追加【Ⅱ】)

2022年6月3日 株情報
 
(2022年6月2日夜間執筆)

 先週及び先々週にUPした株情報の未執筆部分のうち、今回は【Ⅱ】需給要因をUPします。
 
【Ⅰ】ウクライナ情勢(近日中UP)
 
【Ⅱ】需給動向(今回UP)
 
【Ⅲ】ファンダ要因(前回UP)
 
【Ⅳ】チャート分析(前々回UP)
 
 

【Ⅱ】需給動向

 
3月27日に執筆した株情報以降、今回執筆時までに発生した需給事象を時系列的にまとめました。参考とした記事の多くは主にロイターとブルームバークです。時間を追うごとに変化していく株価と需給情勢をもとに、機関投資家の投資行動が前回のファンダ要因にほぼ沿って、少しずつ軌道修正されていく推移がよく分かるのは前回UPした【Ⅲ】と全く同じ印象ですね。
 
 
【1】3月28日「利回り逆転アノマリーによる株価ピークは平均1年後(つまり2023年3月)、景気後退は最長2年後(2024年3月)」
 
【2】3月30日「4月の外人日本株大幅買い越しアノマリーは、長期資金の現物買い需要」
 
【3】03月31日「今年の2月3月は、外人日本株大幅売り越し」
 
【4】4月2日「昨年11月同様、個人投資家飛びつき爆買いの兆候が出ると、やっぱり天井」
 
【5】4月7日「上記【4】の時、機関投資家は静観していた」
 
【6】4月19日「インフレ下で、株式に代わる投資の選択肢はないとの議論は変化しつつある」
 
【7】4月22日「市場の動揺が、プライベートエクイティー(PE)のパートナー探しを促す」
 
【8】4月25日「ディフェンシブ株が割高となってしまったことは、株価指数の急落を暗示する」
 
【9】4月27日「絶対確実と思われていた『下がったら買っておけ』戦略が消滅した。多くの投資家が全ての下落局面が買い場ではないことを身をもって学んだ」
 
【10】4月30日「S&P500種株価指数が大底を打つためには、いったんの4000割れが必要」
 
【11】5月5日「リーマンショックから14年目にして、ついにバフェットが爆買いに動く。対象セクターは石油、天然ガス、保険、ゲームセクターなど」
 
【12】5月6日「キャシー・ウッドETFに大量資金が3週連続の純流入も、その後ナスダックは最大1500ポイントの下落に見舞われる」
 
【13】5月11日「年間リターンマイナスが過去2回しかないスターマネジャー、過去最大の損失を被ったことを受け、初めてショートポジション超過に転じる」
 
【14】5月12日「まさにアノマリー通りの4月の買い」
 
【15】5月13日「これが上記【10】①で言われた『痛みと脱出』に伴うSP500指数の4000ポイント割れのことか? 全ての資産から投資家脱出こそ『本物の降伏』のシグナル」
 
【16】5月14日「2万6000円台のSQは過去1年間に例がなく、上値はいわば真空地帯という需給解釈ができるそうだ」
 
【17】5月17日「年始3か月で世界的投資家ファミリーオフィスが保有銘柄を大きく入れ替えたことが判明。中には日本株投資の動きも。そしてテクノロジー株のショートポジションは2006年以降で最大化」
 
【18】5月20日「機関投資家の懸念はインフレからリセッションにシフトしつつあり。そしてSPY空売り残高が2020年3月以来の高水準に接近したら、皮肉にも3指数は下ヒゲで急反発した」
 
【19】5月23日「年初からの下落局面終了を意味する可能性は低いが、過去2カ月続いてきた売りは一服した」
 
【20】5月24日「企業ファンダメンタルズの見解は通常正しい、企業経営者や幹部による自社株買いの動きは、2020年の弱気相場の底を正確に示唆した」
 
【21】5月25日「株式相場は急落した後、底入れまで4段階のプロセスに従うことが多く、現在はその第2段階の相場は反転上昇」
 
【22】5月25日「QTまとめ」
 
【23】5月26日「ボラティリティー市場は弱気相場を十分織り込んだ、現在の水準でボラ上昇に賭ける意味はない。そしてS&P500種株価指数の1年間のレンジは3260-4930と示唆される」
 
【24】5月27日「米国株を中心に世界の株式ファンドへの資金流入が増えており、流入額は過去10週間で最大」
 
【25】5月30日「テスラCEOマスク氏、マイクロソフト共同創業者ビル・ゲイツ氏のテスラ株大量空売りの規模を暴露して皮肉を投げる『信頼ならないビリオネア、それはゲイツ』」
 
【26】5月31日「中国株式市場に外国人投資家が急速回帰、年初来の流出額が急減する」
 
【27】6月1日「原油相場は現在の1バレル120ドルに対し、適切水準は70ドル」
 
 

【1】3月28日「利回り逆転アノマリーによる株価ピークは平均1年後(つまり2023年3月)、景気後退は最長2年後(2024年3月)」
 
<ブル派>
 
①機関投資家JPモルガン
 
景気後退は通常、利回り逆転よりも前に始まることはなく、時差は最長2年と極めて大きい。さらに、この時間軸で株式のパフォーマンスは債券を大きく上回る傾向がある。歴史的に見ると、株式市場のピークは利回り逆転から1年前後で起きている。3月の米国株は、ウクライナ戦争やインフレ抑制を目指す米連邦準備制度の積極的な利上げ姿勢を物ともせず、このまま行けば今年これまでで最もパフォーマンスの良い月になる。商品価格の高騰は経済見通しに対する懸念を引き起こし、債券相場の急落を招いたものの、株式はここまで景気後退懸念にほとんど動じていない。株式投資家は現時点で米国債の長短利回り逆転を心配する必要はない。
 
 

【2】3月30日「4月の外人日本株大幅買い越しアノマリーは、長期資金の現物買い需要」
 
<ブル派>
 
①機関投資家岩井コスモ証券
 
4月は長期資金の買い需要で、日米共に最大の現物買い現象が起きる傾向がある。次に11月と12月も買い越しが大きい。
●関連・・後述【14】
 
 

【3】03月31日「今年の2月3月は、外人日本株大幅売り越し」
 
<ベア派>
 
①海外投資家
 
日本株を9週連続で売り越し
 
 

【4】4月2日「昨年11月同様、個人投資家飛びつき爆買いの兆候が出ると、やっぱり天井」
 
米金融市場で個人投資家が再び活気付き、「ミーム株」から仮想通貨(暗号資産)に至るまで、リスク資産を買い上げている。株式市場ではここ数週間、最も投機的な銘柄の一部が上昇を続け、S&P500種総合指数を大幅にアウトパフォームした。インターネット上の情報拡散を通じて取引されるミーム株の代表格、ゲーム販売のゲームストップと映画館チェーン大手AMCエンターテインメントの2銘柄は、過去2週間で2倍近くに跳ね上がった。
両銘柄以外にも、グロース株で構成されるETF(上場投資信託)、「アーク・イノベーションETF」が2週間で約26%、暗号資産ビットコインが約19%、電気自動車(EV)メーカーのテスラが約36%、それぞれ上昇。リスク資産の価格が反発したのは、期末のポジション入れ替えや、米連邦準備理事会(FRB)がようやくインフレ阻止に照準を合わせたことへの安心感も要因だが、個人投資家が重要な役割を果たしたのは間違いない。ゴールドマンは最近のノートで、家計資産の一部が引き続き株式市場に投入されるとの見通しを示した。JPモルガンは30日のノートで、過去1週間に個人投資家が株式とETFを計50億ドル買い越したことを紹介した。過去1年間の平均買い越し額は34億ドルだった。個人投資家向けブローカー、トレードゼロによれば、個人は投機的な取引がまだ儲かると見て、有望銘柄を狙い続けているという。AMCやゲームストップなど、個人投資家に人気のある銘柄はここ数週間、投資家の強気の現れであるコールオプションの買いが活発化している。例えばAMC株のオプション建玉では、「コール」が「プット」の1.8倍と、2021年5月以来で最高に近い数字となった。ロイターがトレード・アラートのデータを分析した。バンダ・リサーチは30日のリポートで、ここ数日最も買われている投機的銘柄の1つがAMCだと指摘。AMC株への大量の資金流入は過去に、知名度の低い他の銘柄が幅広く上昇する前触れになったと説明した。平均的な個人投資家のポートフォリオは(前年比の)損失を大部分取り戻し、改めてミーム株に賭ける余裕が戻ってきているという。もちろん、ミーム株などリスク資産の急上昇は諸刃の剣にもなり得る。特に、投機熱が頂点に達した時点で購入した投資家にとってはリスクが高い。ゲームストップとAMCの株は、終値ベースの昨年の最高値に比べればなお52%と59%、それぞれ下落している。同様に、ビットコインは30%、アークETFは56%、昨年の最高値を下回ったままだ。しかし一部の個人投資家は今のところ、こうした投機的な資産の上昇継続に賭けるのをやめていない。バンダのアナリストチームによると、個人投資家は年初に人気だった大型株の買いを減らし、投機的な銘柄にシフトしているそうだ。個人投資家は年初からの損失を取り戻すために、主に投機的なミーム株、コールオプション、暗号資産を買っているという。
●関連・・後述【9】
 
 

【5】4月7日「上記【4】の時、機関投資家は静観していた」
 
<ベア派>

①アクティブ運用のファンド
 
1、2月の株価下落でアクティブ運用のファンドは現金への配分を増やし下落に備えたヘッジを積み上げたが、このディフェンシブ過ぎる姿勢が3月後半の相場反発で裏目に出た。ロングオンリーのミューチュアルファンドの成績は同月、ベンチマークを平均で1ポイント下回った。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のデータによればこれは2002年以降で最悪。相場上昇と下落双方に賭けるヘッジファンドも株式エクスポージャーを減らし、上昇に乗り遅れた。反発時にショートカバーを迫られ、3月月間成績はほぼゼロだったとゴールドマンプライムブローカー部門のデータが示した。こうしたファンドのディフェンシブ姿勢は相場上昇の兆候とされ、3月後半の相場反発はその通りの結果となった。モルガン・スタンレーやBofAは反発が弱気相場の中での幻影だと警告するものの、プロの運用者にとって乗り遅れは痛い。ソコロ・アセット・マネジメントは「3月の上昇は確かにほとんど全ての予想を超えていた」とし、ネガティブなセンチメントと米連邦準備制度理事会(FRB)利上げ予想が現金比率と全体的なエクスポージャーに反映されていたと指摘した。アンダーパフォーマンスの理由としてBofAのストラテジストは、現金保有の増加とエネルギー株敬遠という2つの主因を指摘する。また、個人投資家が3月後半にテクノロジー株の押し目買いを再開した際に、利上げ見通しからこれらの銘柄を空売りしていたヘッジファンドはショートカバーを迫られ打撃を受けたとゴールドマンは説明した。

②QTの始まり
 
米連邦公開市場委員会(FOMC)が3月15-16両日に開いた会合では、連邦準備制度理事会(FRB)の大規模な保有資産を月額最大950億ドル(約11兆7600億円)のペースで縮小することが示唆された。6日公表された議事要旨で明らかになったところによれば、ロシアのウクライナ侵攻がなければ3月会合で「多く」の当局者が0.5ポイント利上げを支持していたが、実際に侵攻が起きたことを受けて0.25ポイントにとどめたという。また物価上昇圧力が和らがない場合には今後0.5ポイントの利上げが1回以上適切になり得るとの認識も、「多く」の当局者が示した。保有資産の縮小規模については、「参加者は総じて、米国債で月額600億ドル程度、エージェンシーMBS(住宅ローン担保証券)で同350億ドル程度を上限とすることが適切になりそうだとの見解で一致した」としたほか、「参加者はまた、市場環境から見て妥当と判断される場合は縮小規模の上限を3カ月ないし、それよりやや長い期間をかけて段階的に導入し得るとの認識でもおおむね一致した」と記された。
●関連・・後述【11】②、及び【22】
 
 

【6】4月19日「インフレ下で、株式に代わる投資の選択肢はないとの議論は変化しつつある」
 
<ベア派>
 
①バンク・オブ・アメリカ(BofA)の富裕層顧客
 
BofAの富裕層顧客も昨年11月以来となる規模で株式を手放した。米株式ファンド全般からも昨年12月以来の額の大量の資金が流出。EPFRグローバルのデータが示すには、4月20日までの1週間に米大型株から引き揚げられた資金は196億ドル(約2兆5200億円)と、2018年2月以来の多額だったという。米株ファンドは4月13日までの1週間で155億ドル(約1兆9900億円)の資金流出となった。そして欧州株ファンドは9週連続の流出だった。BofAのストラテジストは、食品やエネルギー価格が上昇する中でリセッションを「誰もが懸念している」と指摘。一方で債券利回りの上昇により、株式に代わる投資の選択肢はないとの議論は変化しつつあると述べた。
●関連・・後述【15】
 
 

【7】4月22日「市場の動揺が、プライベートエクイティー(PE)のパートナー探しを促す」
 
<ブル派>
 
①米投資会社ブラックストーン
 
最近のテクノロジー株下落や経済活動の再開、旅行の回復による恩恵を同社が得られると見込んでいる。同社は1400億ドル(約18兆円)近い手元資金を確保している。ハイテク株やバイオテクノロジー銘柄を巡る年初からの厳しい環境は同社に好機をもたらした。製薬会社は医薬品開発でプライベートエクイティー(PE)のパートナー探しを迫られるだろうと述べた。ブラックストーンが手元資金の活用を模索する中、教育テクノロジーやクラウド・コンピューティングの分野も魅力的だと語った。テクノロジー株の売り浴びせは健全だ。行き過ぎだった部分があるため。経済活動や企業などの出張が持ち直す中、インフラや輸送、ホテルなども関心分野だとした。こうした発言は、インフレや地政学的要因、米経済の景気後退(リセッション)入り予想の高まりを背景にした市場の動揺が、PEにとってなお機会となり得ることを示している。
 
<ベア派>
 
②機関投資家モルガン・スタンレー
 
ここ数週間で米実質金利が急激に上昇したことについて、今のところは世界的な株式への影響は限定的だが近く変わる可能性がある。実質金利の上昇はまだ株式に響いていない。ここから先は、実質金利の一段高を相殺する余地が株式のバリュエーションにほとんど残されていない。
 
 

【8】4月25日「ディフェンシブ株が割高となってしまったことは、株価指数の急落を暗示する」
 
<ブル派>
 
①第5回「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」週間調査
 
ウォール街にとっての今年の重要ポイントに挙げられたのが以下3点。
 
・バリュー株投資は世界金融危機以来、周知の通り成長株に後れを取ってきたが、再び優勢になりつつある。
・債券利回り上昇でテクノロジー株が再び圧迫されていることが背景にある。
・一方、新興国市場の「失われた10年」は全く終わっていない。
 
調査には個人投資家やポートフォリオマネジャー、ストラテジストら世界全体で回答者1087人が参加した。MLIV読者の間では、バリュー株が年内に成長株のパフォーマンスを上回るとの回答が74%に上った。S&P500種株価指数に基づくと、バリュー株は2007年以降おおむね成長株のパフォーマンスを下回っており、現代のテクノロジー中心の経済で重要性を失っているとの懸念が強まっていた。しかし、今回の調査の回答者によれば状況はもはやそうではなく、世界の市場では債券売りや商品のスーパーサイクルを背景に、エネルギーや銀行など景気循環銘柄が回復している。回答者は過去に負け組だったバリュー株を選好している一方で、同じような状況にあった新興国株に対しては引き続き弱気だ。新興国の政治的リスクや成長見通し、米国の金融引き締めを理由に、回答者の3分の2近くが今年の先進国株のパフォーマンスが新興国株を上回ると予想している。
 
②国内株式型、「バリュー・高配当」の好調続く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB00005_R20C22A4000000/
 
<ベア派>
 
③機関投資家モルガン・スタンレー
 
米S&P500種株価指数は近く急落する。リセッション(景気後退)や米金融当局による積極的な引き締めを巡り懸念が広がる中、投資家は逃避先を見つけるのに苦慮している。ディフェンシブ株が割高となってしまい、絶対的水準の上振れがほとんど見られないことを踏まえると、S&P500種も近く弱気相場入りする状態にあると見受けられる。相場全体でこれまであまりに多くの銘柄が買われており、どこに次のローテーションの機会が存在するのかはっきりしない。われわれの経験では、そうした状況になるとほぼ全ての銘柄が一斉に下げ、株価指数が近く急落することを意味することが多い。米当局による急速な引き締めは景気減速に逆らった動きのように見受けられる。ディフェンシブなポジションは昨年11月以降うまく機能してきたが、それらのバリュエーションは膨らんできており一段の上振れは見込めない。
 
 

【9】4月27日「絶対確実と思われていた『下がったら買っておけ』戦略が消滅した。多くの投資家が全ての下落局面が買い場ではないことを身をもって学んだ」
 
<ベア派>
 
①アメリカの個人投資家
 
前述【4】のように、S&P総合500種指数が2020年3月の安値から2倍以上に上昇した局面では、個人投資家の存在感が目立っていた。個人はゲームストップ、AMCエンターテインメントなどのミーム株急騰の原動力となったほか、テスラ、エヌビディアなど大型成長株にも買いを入れていた。その間、前述【5】①のように機関投資家は打撃を受けながらも、別項【Ⅲ】ファンダ項【1】及び【18】で述べた「機関投資家の総意とは、インフレ動向の改善に基づかない相場上昇は偽物の上昇」との見解通りに慎重な姿勢を崩さなかった。そして機関投資家の相場観は正しかった。SP500指数は4月に入ってから5月20日まで下げ続け、大恐慌以来とかネットバブル崩壊以来といった不名誉な記録を塗り替えたのだから。バンダ・リサーチのオプション取引データによると、ハイテク株が多いナスダック総合指数に連動するインベスコ・QQQ・ETFのコールオプションの買いは今年最低付近まで減少。同社のデータサイエンスアナリストは「個人が損失に少々嫌気を差している可能性を示す初期の兆候が見られる。ここ数週間は相場が荒れている」と指摘した。インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジストは、これまで「安値拾いは総じて絶対確実な戦略」になっていたと指摘。割安感の出た銘柄に競って買いを入れることで市場全体の売り圧力が和らいだ。しかし米株式市場ではこのところ、株価の下落局面でも個人投資家が安値拾いに慎重になっているという。安値拾いを敬遠する今の動きが続けば、株式市場のパフォーマンスが一段と落ち込む可能性がある。インタラクティブ・ブローカーズのデータでも、投資家が安値拾いに慎重になっている可能性が窺える。同社によれば、信用取引に伴う融資が2021年末にピークをつけて以降、継続的に減少しているからだ。絶対確実と思われていた「下がったら買っておけ」戦略が消滅して、条件反射的に安値で買いを入れていた多くの投資家が、全ての下落局面が買い場ではないことを身をもって学んだという。オンライン証券トレードゼロによると、今年はすでにミーム株の熱狂も冷めており、どちらかと言えば買って保有するというアプローチに個人投資家は移行したという。
 
 

【10】4月30日「S&P500種株価指数が大底を打つためには、いったんの4000割れが必要」
 
<ベア派>

①EPFRグローバルのデータ
 
S&P500種株価指数の4000割れは、米株式から大量の資金流出を誘発する「臨界点」となる可能性がある。株式からの資金引き揚げはすでに始まっており、過去3週間に株式ファンドから流出した額は2020年3月以来の多額に相当すると、EPFRグローバルのデータに基づいて指摘。株式ファンドには2021年の初めから1兆1000億ドル(143兆円)の「巨額」資金が流入したが、エントリーポイントは平均で4274だった。つまり「痛みと脱出」には4000を割り込む必要がある。
●関連・・後述【13】①、及び【14】②、及び【15】①、及び【18】③
 
 

【11】5月5日「リーマンショックから14年目にして、ついにバフェットが爆買いに動く。対象セクターは石油、天然ガス、保険、ゲームセクターなど」
 
<ブル派>

①著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイ
 
著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハサウェイは1ー3月(第1四半期)に他企業の株式を購入する投資スタイルに回帰した。バフェット氏はここ数年、高いバリュエーションが株式購入の取り組みの妨げになっていると不満を漏らしていた。ネブラスカ州オマハで4月30日に開かれた同社の年次株主総会でバフェット氏(91)が開示したところでは、同社の1-3月の株式買い越し額は約410億ドル(約5兆3000億円)。石油大手シェブロンの持ち分を増やし、バークシャーが保有する普通株式の中で上位4銘柄の一角となった。また、マイクロソフトが1月に買収を発表したゲームソフト会社アクティビジョン・ブリザードの保有株式を合併アービトラージ戦略で9.5%に増やしたことも明らかにした。バークシャーが普通株をこれほどの規模で購入した四半期は、2008年にさかのぼるデータでは例がない。バフェット氏と側近らは近年、同社の現金をより高いリターンを生む資産に投じる方法を見つけることに苦戦していた。プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社などとの競争激化や高水準のバリュエーションがその一因だった。しかし第1四半期にバークシャーの幹部らは、石油・天然ガス会社オキシデンタル・ペトロリアムの株式を追加購入したほか、保険会社アリゲニーを現金116億ドルで買収することで合意した。この結果、バークシャーの保有現金は第1四半期末時点で1060億ドルに減少。米石油・ガス大手オキシデンタル・ペトロリアムの株式を590万株買い増し、保有比率を約15.2%に引き上げたことが規制当局への提出文書で分かった。4日夜の提出文書によると、2日と3日に買い進め、取得費用は約3億3600万ドルだった。これによりバークシャーが保有するオキシデンタル株は約1億4230万株(約88億ドル相当)となった。同社はこれに加えて、オキシデンタルのアナダルコ・ペトロリアム買収資金調達を支援するために2019年に取得した優先株100億ドル相当を保有している。また、4日の終値(61.57ドル)からややディスカウントされた水準で50億ドル相当の株式を追加購入するワラント(新株引受権)も持つ。オクシデンタルの株価はバークシャーの出資や原油価格の上昇を追い風に今年に入り2倍以上に値上がりしている。バークシャーは今年、株式への投資を拡大している。
 
<ベア派>

②米FRB、6月1日から保有証券圧縮-月475億ドルのペースで開始(QT)
 
バランスシートに関する声明で、保有証券の圧縮を6月1日から「予測可能な方法」で開始する方針を発表した。当初は月額計475億ドル(約6兆1360億円)のペースとする。システム・オープン・マーケット・アカウント(SOMA)で保有する証券の元本償還金は、月間の圧縮上限を上回る部分を再投資する。米国債の上限は当初300億ドルとし、3カ月かけて600億ドルに拡大する。この月間上限の下での米国債保有の圧縮はクーポン債に加え、クーポン債償還が上限に満たない部分は米財務省短期証券(TB)も対象となる。エージェンシー債、政府支援機関(GSE)保証付き住宅ローン担保証券(MBS)の月間上限は当初175億ドルとし、3カ月をかけて350億ドルに倍増する。連邦公開市場委員会(FOMC)は将来的には、潤沢な準備預金の下で金融政策を効率的かつ効果的に実施するのに必要な額の証券保有を維持する方針。潤沢な準備預金と一致すると判断する水準を残高が幾分上回った段階で、バランスシート圧縮のペースを落とし、その後停止する。バランスシートのランオフ(償還に伴う保有証券の減少)がいったん終了すれば、連邦準備制度の他の負債の増加を反映して、FOMCが潤沢な水準にあると判断するまで、準備預金は一定期間減り続ける可能性があると説明した。
●関連・・前述【5】②、及び後述【22】参照
 
 

【12】5月6日「キャシー・ウッドETFに大量資金が3週連続の純流入も、その後ナスダックは最大1500ポイントの下落に見舞われる」
 
<ブル派>
 
①アーク・イノベーションETF(ARKK) 
 
キャシー・ウッド氏の旗艦ETFは今年これまでに見られた急激な落ち込みから持ち直し始めており、同氏のファンがまた大量の資金をつぎ込んでいる。成長企業の株式を中心に投資するアーク・イノベーションETF(ARKK)には3日、3億6670万ドル(約480億円)が流入した。1日の流入額としては1年ぶりの大きさ。ARKKの週初から4日までの上昇率は11%で、ナスダック100指数の2倍、S&P500種株価指数の3倍近くとなっている。今週のARKKへの流入額は4億4740万ドルで、このままいけば3週連続の純流入となる。金利上昇を背景としたテクノロジー株の大幅安が響き、ARKKは4月の運用成績がほぼ29%のマイナスと、月間で過去最悪となっていた。ブルームバーグ・インテリジェンスは「これは押し目買いに違いないだろう」と語った。
 
 

【13】5月11日「年間リターンマイナスが過去2回しかないスターマネジャー、過去最大の損失を被ったことを受け、初めてショートポジション超過に転じる」
 
<ベア派>
 
①世界最大の資産運用会社である米ブラックロック
 
同社のスター・ポートフォリオマネジャー、アリスター・ヒバート氏は、株式相場の急落に伴い運用するヘッジファンドが過去最大の損失を被ったことを受け、初めて弱気に転じた。事情に詳しい関係者によれば、「ブラックロック・ストラテジック・エクイティ・ヘッジファンド」は1-4月の運用成績がマイナス13%と、これまで最悪だった年間リターン(マイナス11%)よりひどい落ち込みを記録した。関係者によると、ヒバート氏は同ファンドの2011年のスタート以降、歴史的な株価上昇の恩恵を受けてきたが、今月に入りショートからロングを差し引いたポジションが初めて売り持ちとなった。昨年末時点では差し引き約35%の買い持ちだった。インフレ急加速により各国・地域の中央銀行が量的緩和(QE)終了と利上げに動かざるを得ない状況で、ヒバート氏が弱気に転換したことは、グローバル市場で進行中の劇的な変化を浮き彫りにする。インフレと金融引き締めが相場急落要因となり、テクノロジーを中心とする成長株の一段の下げは、株式ヘッジファンドにとって痛手となった。ヒバート氏のファンドは成長株に比重を傾ける投資を行い、マイクロソフトやマスターカードといった銘柄を保有していたが、今年3月時点の投資家向けレターで「ポストパンデミックの経済正常化が必ずしも秩序立ったプロセスとなりそうにないのは明らかだ」と警戒を促していた。ヒバート氏が運用するファンドの昨年末時点の資産額は約90億ドル(約1兆1700億円)。わずか1300万ドルでスタート後、最大のロング・ショート戦略ファンドの一つに成長し、昨年までプラス約17%の年間リターンを残した。年間リターンがマイナスとなったのは過去2回しかない。ヒバート氏は長らくブラックロックで最高給のリスクテーカーの1人であり、アクティブ運用の業務展開などで中心的役割を果たしてきた。同氏の9桁の報酬は20年時点で、ローレンス・フィンク最高経営責任者(CEO、3000万ドル)の3倍余りに達した。
●関連・・前述【10】①
 
 

【14】5月12日「まさにアノマリー通りの4月の買い」
 
<ブル派>

①海外投資家
 
財務省が12日発表した対外及び対内証券売買契約などの状況(月次、指定報告機関ベース)によると、海外投資家は4月に日本株を3カ月ぶりに買い越した。買越額は3兆3881億円と、2019年4月以来3年ぶりの高水準だった。4月は外国為替市場で円安・ドル高が急速に進み、日本株への買いが優勢になった。国内投資家は海外株式を2カ月連続で売り越した。売越額は3387億円。また、大引け後に発表された5月第1週(2日と6日)の投資部門別売買動向は外国人が515億円の買い越しで、実に6週連続。
●関連・・前述【2】
 
②岩本秀雄の毎日一里ごとより
 
米国株の11日朝方は高い場面があったが午後になって暗転したのは、需給面でマージン取引の追い証投げという刃こぼれが起こったという。とはいえ、需給の崩れが底打ちを促すのは相場の常道。
 
 

【15】5月13日「これが上記【10】①で言われた『痛みと脱出』に伴うSP500指数の4000ポイント割れのことか? 全ての資産から投資家脱出こそ『本物の降伏』のシグナル」
 
<ベア派>

①EPFRグローバルのデータ
 
BofAが引用したEPFRグローバルのデータによれば、11日までの週に株式からは62億ドルが流出。債券は114億ドル、MMFは197億ドル、金からは18億ドルがそれぞれ流出した。投資家は極端なリスクオフムードの中で株式、債券、マネー・マーケット・ファンド(MMF)、金などあらゆる資産クラスから資金を引き揚げたことがデータに示されている。同社ストラテジストは「脱出が始まった」とした上で、「本物の降伏とは、投資家が選好している資産を売ることだ」として、暗号資産(仮想通貨)と投機的なテクノロジー株の下落は今やインターネットバブル崩壊や世界金融危機に匹敵すると指摘した。
●関連・・前述【10】①、及び後述【18】③
 
以下に5月11日までの週分を羅列すると、
 
ア)流出
 
債券では投資適格級とハイイールド債、新興市場債の合計で193億ドルが流出し、20年4月以来の流出規模。
新興市場株から44億ドルが流出し、2020年6月以降で最大。
米成長株からは27億ドルが流出。
そのうちアップルを含めテクノロジー株から今年最大の11億ドル(約1400億円)が流出(アップル株は今週だけで10%近く下落し、弱気相場入り)。
金融株の26億ドル流出。
素材株も今年初めての流出を記録。
 
イ)流入
 
米国債は同年3月以来となる115億ドルの大幅な流入。
米大型株は67億ドルの流入。
 
 

【16】5月14日「2万6000円台のSQは過去1年間に例がなく、上値はいわば真空地帯という需給解釈ができるそうだ」
 
<ブル派>

①オプションSQ
 
本日はオプションSQ日であり、そのSQ値は2万5951円と2万6000円割れ。ただし需給面において、昨日まで2万6000円を割らせたい勢力が動いていた模様で、それが本日の精算で落着はした。2万6000円台のSQは過去1年間に例がなく、上値はいわば真空地帯という需給解釈ができるそうで、短期の指数上昇トレードがここから始まる期待があるという。日本株をショートしていた海外短期筋が買い戻しに動いているとの需給観測もあるとのこと。
●関連・・後述【18】②
 
 

【17】5月17日「年始3か月で世界的投資家ファミリーオフィスが保有銘柄を大きく入れ替えたことが判明。中には日本株投資の動きも。そしてテクノロジー株のショートポジションは2006年以降で最大化」
 
<ブル派>
 
①スタンレー・ドラッケンミラー氏率いるデュケーヌ・ファミリーオフィス
 
16日提出した株式保有報告書「フォーム13F」 によれば、同社はグーグルの親会社アルファベットの株式約2億7400万ドル(約354億円)相当とオンライン中古車販売のカーバナ株1億1200万ドル相当を売却。3月末時点で両銘柄を一切保有していない。また、民泊仲介の米エアビーアンドビーとスターバックスの持ち株も全て手放し、カナダの資源会社テック・リソーシズと米コテラ・エナジーの株式を新たに買い入れた。16日に最高値を付けた米シェブロン株は以前からかなり買い入れていたが、前四半期に買い増しした。
 
②ジョージ・ソロス氏のファミリーオフィス、ソロス・ファンド・マネジメント
 
1-3月に米国株のポジションを20億ドル近く減らし52億ドルとした。電動ピックアップトラックメーカー、米リビアン・オートモーティブの株価下落が大きく響いた。IHSマークイットとアクティビジョン・ブリザードの保有をやめる一方で、モバイルゲームメーカーの米ジンガ株1億2200万ドル相当を加えた。
 
③米投資会社TPGの共同創業者デービッド・ボンダーマン氏のファミリーオフィス、ワイルドキャット・キャピタル・マネジメント
 
通信会社運営の米フロンティア・コミュニケーションズ・ペアレントと決済プラットフォームの米マルケタなどに新しいポジションを積み、プロコア・テクノロジーズと宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティック・ホールディングスの株式を全て売却した。
 
④ウォルマートを創業したウォルトン家の投資会社ウォルトン・インベストメント・チーム(WIT)
 
米地方債のポジションを増やし、上場投資信託(ETF)を通じ日本株に投資。新たに「iシェアーズMSCIジャパンETF」を約2億3930万ドル相当買い入れた。小型株や暗号資産(仮想通貨)交換業者の米コンベース・グローバルにも賭けている。WITは主に低コストのETFを売り買いし、前四半期末時点で米株式・ETFの保有残高は約51億ドル。
 
<ベア派>
 
⑤中国の電子商取引会社アリババグループの共同創業者、馬雲(ジャック・マー)、蔡崇信(ジョゼフ・ツァイ)両氏の一部資産を運用する香港のブルー・プール・キャピタル
 
米アドビと「フェイスブック」運営の米メタ・プラットフォームズ、中国の電気自動車(EV)メーカー、小鵬汽車の株式を全て売却した。
 
⑥運用の現金比率21年ぶり高水準、6%に上昇
 
投資家が保有する現金の比率が2001年9月米同時多発テロ以来の高水準に達したことが、5月のバンク・オブ・アメリカ(BofA)のファンドマネジャー調査で分かった。世界経済の成長見通しが過去最悪に落ち込み、スタグフレーションの懸念が広がっている中で、投資家は株式相場の一段安も見込んでおり、BofAは調査結果について「極度に弱気」と表現した。運用資産が合計8720億ドル(約113兆円)の投資家を対象としたこの調査では、タカ派の中央銀行が最大のリスクと見なされ、世界的なリセッション(景気後退)がそれに続いた。調査ではテールリスクとしてリセッションがインフレとウクライナ戦争を上回り、スタグフレーションへの懸念は08年以降で最も高くなった。同調査のリポートでは弱気度は極端なレベルに達し、市場への参入ポイントを探るBofAの逆張り指標である買いシグナルを発動させるほどなので、投資家は目先のベア・マーケット・ラリー(弱気相場の中での一時的な株高)を見込んでいるという。BofAのストラテジストは一段の米利上げが見込まれる中で、市場はまだ「完全降伏」していないと論じたが、最終的な底も打っていないと指摘した。全体として投資家は現金と商品、ヘルスケア、生活必需品を大幅なロングに、テクノロジー株と欧州、新興市場などを大幅なショートにしている。またテクノロジー株の「ショート」は06年以降の最大となっていることが、同調査では分かった。株式は20年5月以来の大幅アンダーウエート。そして米金融当局による「プット」発動水準は、S&P500種株価指数で3529の見込みという。
 
 

【18】5月20日「機関投資家の懸念はインフレからリセッションにシフトしつつあり。そしてSPY空売り残高が2020年3月以来の高水準に接近したら、皮肉にも3指数は下ヒゲで急反発した」
 
<ベア派>

①SPYの空売り残高の割合、20年3月以来の高水準に接近
 
IHSマークイットのデータによれば、米国株の上場投資信託(ETF)の「SPDR・S&P500ETFトラスト」(ティッカー:SPY)の空売り残高は発行済み口数に対する割合が7%を超え、2020年3月以来の高水準に接近。一方で、米国債のETF「iシェアーズ米国債20年超ETF」(ティッカー:TLT)の空売り残高の割合は3.5%と、20年9月以来の水準に低下した。SPYは年初来で18%下落し、一方、TLTは40年ぶりの高インフレで今年、20%強値下がりしたが、ここ1週間は市場の混乱を背景に債券に買い注文が戻っているそうだ。現在の相場環境は長期の米国債には追い風となる可能性が高い半面、株式相場は苦戦するとアカデミー・セキュリティーズは予想している。そのマクロ戦略責任者は、市場の懸念がインフレからリセッションにシフトし始めていて、こうしたポジショニングは『リセッション』見通しに沿うと指摘している。リセッションについては時期尚早だろうが、そう話す人が増えており取引にも反映されていると述べた。

②身構える米国株トレーダー、20日に運命の1.9兆ドルのオプション満期日到来
 
株式や上場投資信託(ETF)を原資産とするオプションの毎月の満期日はボラティリティーが上昇することで知られており、次回は20日に到来する。20日に満期を迎えるS&P500種オプションで最も集中した行使価格は4000。建玉残高は9万3000枚余りで、内訳はコールが4万1024枚、プットが5万2269枚。ゴールドマンによると、今回は個別株オプションで4600億ドル相当と、S&P500種関連のオプションで8550億ドル相当が満期を迎える。日々のオプション出来高が年間ベースで過去最高に向かうペースとなる中、オプション市場の変動は原資産の波乱を招く可能性があるだけに、このオプションの満期日がさらなる混乱を再びかき立てるとみられている。期待外れの企業収益が相次いだ上、米金融当局のタカ派姿勢で打ちのめされた投資家にとっては、満期は取引をさらに複雑にする要因だ。S&P500種株価指数が弱気相場入りの瀬戸際にある中で、トレーダーは推計1兆9000億ドル(約240兆円)に上る既存のポジションを手じまって新たなエクスポージャーを構築しなければならない。パイパー・サンドラーのオプション責任者は、センチメントは弱く、日々のオプション取引を踏まえると、建玉残高の状況は少なくともS&P500種関連では極めてダイナミックと指摘する。
●関連・・前述【16】①参照
 
③EPFRグローバルのデータ
 
EPFRグローバルのデータを引用したバンク・オブ・アメリカ(BofA)のリポートによると、18日までの1週間に株式ファンドからは52億ドル(約6700億円)が流出。投資信託の解約が目立った。債券ファンドからは123億ドルが流出。マネーマーケットファンド(MMF)と金からも資金が流出した。欧州株は14週連続の流出。金融政策引き締めが主要国・地域の経済をリセッション(景気後退)に陥らせるとの懸念を背景に、またも過去1週間で幅広い資産クラスから資金が流出した。世界の株式市場の時価総額は3月のピークから約12兆ドルを失ったが、流入もある。株式ファンドの中では米株ファンドに3億ドルが流入。米国債も流入。日本株も流入だった。
 
④機関投資家BofA
 
総じて株式相場の一段の下落を予想しており、マイケル・ハートネット氏ら同社ストラテジストはベアマーケットラリー(弱気相場の一時的な株高)には売りで向かうよう勧めている。ハートネット氏によると、過去140年の19回の米株弱気相場でS&P500種株価指数は平均して289日間に37.3%下落。今回も同様ならば下げは10月まで続き、S&P500種は3000になるという。
 
<ブル派>
 
⑤機関投資家BofAのカスタム・ブル&ベア指標
 
株式は「明確な」買いシグナルを示したという。
 
⑥機関投資家ゴールドマンやJPモルガン
 
差し迫ったリセッションへの懸念は行き過ぎだとした。
●関連・・前述【10】①、及び【15】①参照
 
 

【19】5月23日「年初からの下落局面終了を意味する可能性は低いが、過去2カ月続いてきた売りは一服した」
 
<ベア派>
 
①マーケッツ・ライブ(MLIV))パルス最新調査
 
回答者1009人の予想中央値に基づくと、今後さらなる痛みが待ち受けると予想が大半でS&P500種は年内に引き続き下落し、3500前後で底入れする公算が大きいという。これは20日の終値3901から少なくとも10%下落し、1月のピークからは27%値下がりすることを意味する。なお指数が終値ベースで今年の底値を付けたと考えているのはMLIV読者の4%にすぎないという。同じく少数ではあるものの、2240への歴史的な下落が進行中で、再び新型コロナウイルス禍の安値を試すと予想する向きもある。
 
②個別銘柄の下落に対するヘッジの需要は高水準を維持、そしてプットオプションのコールに対する比率は2020年3月以来の高水準
 
オプショントレーダーらの間では売りがまだ終わっていないという懸念が強い。オプション市場の指標の一つである個別銘柄の下落に対するヘッジの需要は高水準を維持している。
CBOEにおける個別銘柄のプットオプションのコールオプションに対する比率は2020年3月以来の高水準にある。指数に対するヘッジ需要は後退したものの、個別銘柄の急落に対する警戒感は根強い。実際、ウォルマートとターゲットは先週、期待外れの決算後に1987年以来の大幅下落を演じたし、シスコシステムズなども大幅安となった。オプション市場ではボラティリティー上昇を見込む取引が市場安定を予想する取引の2.2倍、SPDR・S&P500ETFトラストのプットオプションの取引はコールの1.8倍となった。ジェフリーズは、S&P500種が最高値から10%、15%、20%、25%下落した後のフォワードリターンを分析。1950年代にさかのぼる分析は、25%下落するまでは1年以内の回復は無理なことを示した。ジェフリーズのストラテジストはリポートで、底を打ったというより低迷が続く可能性が高く、最近のリバウンドにより建設的な見方も出ているかもしれないが、実際には現在の価格動向は不透明感解消よりも将来の危険を示唆していると分析した。
 
<ブル派>
 
③機関投資家キングスビュー・インベストメント・マネジメント
 
相場が反発してもおかしくない状態がしばらく続いていた。年初からの下落局面終了を意味する可能性は低いが、過去2カ月続いてきた売りは一服したと言える。
 
 

【20】5月24日「企業ファンダメンタルズの見解は通常正しい、企業経営者や幹部による自社株買いの動きは、2020年の弱気相場の底を正確に示唆した」
 
<ブル派>
 
①企業経営者や幹部による自社株買いの動き
 
ワシントン・サービスのまとめによると、5月は1100社余りの経営幹部らが自社株式を購入。20年3月以来で初めて、インサイダーが自社株買いに動いた企業が売りに動いた企業を月間ベースで上回る見込みという。企業経営者や幹部による自社株式の購入熱は、金融引き締めで景気にブレーキがかかっても利益を達成できる自信を意味している可能性がある。 アイコン・アドバイザーズの指摘では、企業ファンダメンタルズの見解は通常正しいそうだ。インサイダーが自社株式を売る行動に出た企業に対する買いに動いた企業の割合(売り買いレシオ)は15年8月と18年終盤に上昇。15年は相場の底入れより前、18年は一致するタイミングで起き、そして今月の同レシオは1.04と4月の0.43から大きく上向いている。米スターバックスの暫定CEO、ハワード・シュルツ氏やインテルのパット・ゲルシンガーCEOは、S&P500種が弱気相場入りの瀬戸際に立たされた最近の下げ局面で自社株を買った。 現時点での押し目買いの成否は、予想される企業業績にどの程度信頼が置けるかに行き着くだろう。既存の予想が正しければ、S&P500種構成銘柄の来年の1株利益の合計は248ドルとなり、これに基づく同指数の株価収益率(PER)は約16倍で従来に比べ割安ではある。リセッション(景気後退)入りを懸念し、株を敬遠している投資家は、企業内部の旺盛な自社株購入についてよく考えてみたいと思うかもしれない。企業経営者や幹部による自社株買いの動きは、2020年の弱気相場の底を正確に示唆したからだ。
 
②機関投資家ブラックロックやTロウ・プライス・グループ
 
ブラックロックやTロウ・プライス・グループなど債券市場のブームと破裂を知る運用会社やベテラン投資家は、米国債の買いを再開しても安全だという兆候を見て取っているという。小売り大手が個人消費動向の変化を報告、住宅販売が減少傾向になるなど景気減速の兆しが見えてきた中で、利回りが今年に入って大幅に上昇し10年債ではほぼ2倍になっている状況は過去の買い場を連想させる。JPモルガンの世界金利責任者は、利上げの大部分は既に織り込まれたため最悪期は過ぎた可能性が高いと指摘した。Tロウ・プライス・インベストメント・マネジメントの投資戦略責任者は、多くの悪いニュースが織り込み済みの段階に来つつあるとして、10年債利回りが3%余りでピークとなった2013年と18年に環境が似ていると分析する。これら全てを、ベテランの運用者たちは慎重ながらエクスポージャーを増やし始める理由だとみており、利回りが適正水準を上回ったと考えられる時には買いを加速させる準備をしている投資家もいる。ただ、不確実性は根強く、ゴールドマンは慎重で、年末の10年債利回りが3.3%前後になると予想している。
 
 

【21】5月25日「株式相場は急落した後、底入れまで4段階のプロセスに従うことが多く、現在はその第2段階の相場は反転上昇」
 
<ブル派>
 
①ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のデータ
 
これによると、業種別の上場投資信託(ETF)からは今月に入って約119億ドル(1兆5000億円)が流出した。業種別ETFからの記録的な資金流出と言え、投資家は過去最速のペースで業種別ファンドの売りに動いていることを示し、このペースが続けば月間ベースで過去最大の資金流出となる。こうしたETFからの資金が純流出となったのは2020年9月以来で、業種別ETFからの資金流出規模は株式市場での売りの幅広さを物語る。BIのシニアETFアナリストは、過去の広範な株売り局面では金融当局が買い支えに動いたこともあるが、現在はそうした救済策は期待できないと語る。通常は投資家がセクター間で資金ローテーションしていることを考えれば、ほとんどのセクターで資金が流出しているのは悪い兆候だと言う。とはいえ、これこそが市場が待ち望んだ「全面降伏」に該当しないのだろうか?特に需給面では、データ上ではアメリカ時間05/24(火)寄りの2時間にわたる全市場急落は、解約に伴う投信の損切り売りだという。
 
②債券調査会社クレジットサイツ
 
米社債市場から、もうすぐ株安は終息するとの歓迎すべきシグナルが発信されている可能性があるという。経済や市場の健全性を見極める手がかりの一つに社債市場がある。
その最近の良くない兆候に、米国債利回りに対する社債の上乗せ分、つまりクレジットスプレッドがこの1年間でほぼ2倍に拡大したことが挙げられ、それは米企業に対する懸念が深まっているためだとされている。ただこのところ、S&P500種株価指数は1月高値から20%近く下げたが、クレジットスプレッドの変動はそれほど大きくなくなってきたのだ。債券調査会社クレジットサイツはこれを、株式相場の底入れが近いことを示唆していると指摘する。クレジットサイツは1998年以降、S&P500種が週間ベースで特に大きく動いた7つの期間を調査した結果、S&P500種が持ち直し始める平均42日前にクレジットスプレッドの変動がピークを付けていた。では今年はいつ、クレジットスプレッドの変動がピークを付けたのかと言うと、それは42日前よりさらに遡る3月だった。クレジットサイツによれば、過去のパターンがまだ生きているとすれば、投資適格級および高利回りの社債スプレッドは絶対ベースで拡大を続ける可能性があるが、拡大幅は短期的にペースを落としていくはずであり、同時に株式の変動ペースは高くなり、S&P500種は底に近づいていくという。ブルームバーグ米投資適格級社債指数のスプレッドは23日時点で147ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)。社債市場に負荷がかかり始めると多くのストラテジストが注視する水準の150bpに近づいている。
 
③調査会社ネッド・デービス・リサーチ
 
ネッド・デービス・リサーチによると、株式相場は急落した後、底入れまで4段階のプロセスに従うことが多いという。
そして現時点では、第1段階である売られ過ぎの水準に到達した。
 
第1段階では、主要な指数が極めて売られ過ぎの水準に低下する。
第2段階では、相場は反転上昇する。
第3段階では、反発が持続するか確認するために再び安値を試す。
最終段階では、短期間に下落銘柄数と比べて上昇銘柄数が極めて多くなる「ブレドス・スラスト(breadth thrust)」のクラスターが発生する。
 
複数の指標に基づくと、現時点ではこのサイクルの第1段階「のみ」に到達している。ネッド・デービスによれば、S&P500種株価指数が買われ過ぎが売られ過ぎかを判断する際に使われるモメンタム指標、ストキャスティクス(14日間)は4月26日に0.045と、2018年12月24日以来の水準に低下した。結論を言えば、市場が第4段階(ブレドス・スラスト)に移行する進行中のプロセスの中で、市場は第1段階(売られ過ぎ)を達成し、第2段階(上昇)を試しつつある。株式市場の通常の下落・反発サイクルから判断するなら、米株式相場には第2段階(上昇)の後にやってくる第3段階で、再びさらに値下がりする余地がある。
 
④ファンド管理会社シトコ・グループ
 
シトコはヘッジファンドやプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資ファンド、不動産投資ファンドなどの資産の管理を手掛ける。ヘッジファンドは通常、解約請求を数週間または数カ月前に提出することを求める。そのシトコの試算によれば、ヘッジファンドから年末までに200億ドル(約2兆5400億円)が引き揚げられる見込みだという。ただし解約額の見通しには新規流入の可能性は含まれておらず、今後の資金動向はファンドの条件と投資家行動によっていずれの方向にも変化し得るという。例えばシトコによると、1-3月の解約は約390億ドルあったが、押し目買いを狙う新規流入のほうが実は多く、差し引きすると136億ドルの純流入となった。しかし4-6月の今四半期に135億ドル、残りの期間で63億ドルの解約が見込まれるとい、新規流入は不透明だ。参考までに、タイガー・グローバル・マネジメントやメルビン・キャピタル・マネジメントが運用する大規模ファンドはこれまでに大きな損失を出したにもかかわらず、1-3月の純流入額の79%近くが50億ドル以上の規模のファンドに流れたという。
 
 

【22】5月25日「QTまとめ」
 
①総論「最も慎重を要するものであり、米国債市場は新たな混乱の可能性を警戒」
 
米連邦準備制度理事会(FRB)は6月1日から、8兆5000億ドル(1080兆円)規模の債券ポートフォリオの圧縮を開始する。当局の利上げに続く次のステージの金融引き締めとなる。25日に公表された3、4両日開催のFOMC会合の議事要旨では、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)のランオフ(償還に伴う保有証券の減少)計画について、「幾人かの」当局者が市場に「予期せぬ影響」をもたらすリスクを指摘していたことが示された。米利上げは数十年ぶりの急ピッチで進められる軌道にあり、市場は既に混乱に見舞われ、投資家は当局の量的引き締め(QT)への準備を整えつつある。パウエル議長自身も4日の記者会見で、QTのプロセスには不確実性の要素があると警告するも、QTは金融引き締め策において「重要な役割」を担い、金融状況を「より中立的な」設定に戻すのに役立つと説明する。
 
②景気減速につながるという予想
 
TDセキュリティーズは、QTはまさに目立たない形で進められる想定であるが故に、その危険度は増すと指摘する。インフレ調整後の実質利回りを押し上げることで、金融状況の引き締まりが強化されて景気減速につながるという。ストレスが想定される複数のシナリオが列挙できるといい、主な内容は次の③~⑥の通り。
 
③利回りへのインパクト
 
QTの結果、期間が長めの金利の押し上げにつながる可能性がある。米10年債利回りは一時3.20%と2018年以来の高水準を付けたので利回りは既にピークに達したとの見方もあるが、QTのインパクトを正確に測るのは困難だ。当局は17-19年の前回の場合よりも速いペースでポートフォリオ圧縮を進める方針であり、ランオフの上限は開始から3カ月かけて月間最大950億ドルと、前回(同500億ドル)の2倍近くに拡大される。今回、当局者に多少の安心を与えているのは昨年、セーフティーネットとして整備された常設レポファシリティー(SRF)だ。米国債などを対象とした翌日物レポを日々実施することで、19年に生じたような短期市場の混乱の再発を防ぐことが期待されている。シカゴ連銀のエバンス総裁は18日、SRF設置を踏まえれば実際にどう機能するかは分からないとはいえ、バランスシートの規模は恐らくそれほど大きくなくても良いのではないか」とコメントしている。
 
④トレーディング環境の悪化
 
既に緊迫した状態にあるトレーディング環境がQTによって一段と悪化するのではないかと心配する声も多い。米国の大手銀行は資本要件もあって、ここ数年米国債マーケットメーキングの能力増強を控えており、そのことが利回りの大幅な急変動の一因となった。米財務省はトレーディング環境の問題に対処する取り組みを主導しているものの、まだ詳細な計画は示されていない。
 
⑤外国勢による購入の欠如
 
前回のQTとの顕著な相違は国際情勢だ。欧州中央銀行(ECB)など他の主要国・地域の中銀も米国と同様に引き締めに向かっており、債券への世界的な需要が抑制されて利回り上昇のもう一つの要因となる可能性が考えられる。  
 
⑥住宅ローン担保証券(MBS)
 
一部で懸念があるのは当局によるMBS売却の可能性だ。パウエル議長はMBS元本償還金が月間の圧縮上限を下回る可能性に言及した。当局者が判断を下せば、売却に道を開くことが想定される。FOMC会合議事要旨によれば、幾人かの当局者はQTが順調に進めば、MBS売却を検討するのが適切になるだろうとの見解を述べていた。多くの機関投資家はMBS売却の場合、QTの効果は増強されるとみている。
●関連・・前述【5】②、及び【11】②
 
 

【23】5月26日「ボラティリティー市場は弱気相場を十分織り込んだ、現在の水準でボラ上昇に賭ける意味はない。そしてS&P500種株価指数の1年間のレンジは3260-4930と示唆される」
 
<ブル派>
 
①キャシー・ウッド氏の旗艦ETF(上場投資信託)アーク・イノベーションETF(ARKK)
 
同ETFの下げを見込んだ投資が縮小しており、空売り比率はここ数週間、低下している。IHSマークイットのデータによると、同比率は9.2%と、4月の高水準(17%)から下がった。ARKKはこの1カ月に約28%値下がりした。一方、ARKKに逆張りで投資するタトル・キャピタル・ショート・イノベーションETF(SARK)からは資金が流出している。データが入手可能な直近の取引日には3900万ドル(約50億円)近くが流出し、1日の流出額としては1月以来の高水準となった。しかし機関投資家には、相場が大きく下げた後に一時的に反発する「デッド・キャット・バウンス」に過ぎない という声が多い。ムーアズ・アンド・キャボットは、ARKKが明確な下降トレンドであることに変わりはないと指摘。ミラー・タバクは、ARKKを大量に空売りしていた多くの投資家が、かなり値下がりした現段階で一部利益を確定させたに過ぎないという。
 
②機関投資家モルガン・スタンレー
 
ボラティリティー上昇を見込む取引はヘッジ手段としてコスト高になり過ぎているため、一部の資産については相場変動がピークに達したとみるポジションを組むべきだ。ボラティリティー市場は、スポット市場が底を打つ前にピークを付ける傾向があり、カナダ・ドルとクレジット市場についてボラティリティーのピークを想定する取引に資金を割り当てるのは意味がある。ストラテジストによると、株式とクレジット、金利、外国為替のオプション市場はいずれも、モルガン・スタンレーが想定しているよりも幅広い変動を示唆している。例えば、S&P500種株価指数の1年間のレンジは3260-4930と示唆される(25日終値は3978)。スワップのオプションであるスワップションは、10年物米国債利回り2.3-4.5%の範囲を示唆しているが、弊社の予想レンジは2.2-3.4%だ。ストラテジストは、「ボラティリティー市場は弱気相場を十分織り込んでいる」として、現在の水準でボラティリティー上昇に賭ける意味はないと指摘。インプライドボラティリティー(IV、予想変動率)は「過去の水準に照らして全体的に高い」と説明した。連邦準備制度の利上げと差し迫った量的引き締めの影響を巡る不透明からボラティリティーのロングポジションのコストは上昇し、中国経済減速とウクライナでの戦争もこれを増幅させた。
 
③S&P500種の日中価格チャートが過去4日連続で終盤に押し上げ
 
S&P500種は4日連続で日中高値と安値の中間点を上回って終了。こうした状況は過去2カ月で最長。これは投資家による押し目買いの勢いが、数カ月続く損失の後も衰えていないことを示すパターンだ。アメリカン・センチュリー・インベストメンツは、相場が大きく下げた後に一時的に反発する「デッド・キャット・バウンス」に過ぎないと指摘。負けを認めないこうしたスタンスは、最後の買い手が降参し株式相場の底打ちのシグナルが出るのがまだ先であることを示唆していると懐疑的だ。「ここで底値買いを目指している人もいるが、われわれはそうではないし、そうしないように勧める」という。インスティネットは、「午後に地合いが良い日が続く最近の状況は気づかれずに起きており、水面下ではベア派にとって非常に大きな苦痛だ。今後こうした午後の地合いの良さのパターンが目に見えてくれば、いずれは売り手が手を止める理由になる可能性はある」とした。
 
 

【24】5月27日「米国株を中心に世界の株式ファンドへの資金流入が増えており、流入額は過去10週間で最大」
 
<ブル派>
 
①機関投資家バンク・オブ・アメリカ(BofA)
 
EPFRグローバルのデータを引用すると、米国株を中心に世界の株式ファンドへの資金流入が増えており、流入額は過去10週間で最大となっている。リセッション(景気後退)懸念から大きく売られたことで、割安感から再び買いの動きが広がっていることが分かる。5月25日までの1週間に世界の株式には約200億ドル(約2兆5400億円)が流入。流入が最も多かったのは現金で約280億ドル。市場参加者が引き続き逃避先を求めていることが示唆される。一方で債券ファンドからは58億ドルが流出した。今週に入り株式相場は回復の動きを見せており、欧米の主要指数は週間ベースで3月半ば以来の大幅な上げとなる勢いだ。これまでの大きな下落を受けて押し目買いが入っている。同社は「サマーラリー(夏の上昇相場)の傾向は強まっているものの、弊社は上昇相場では逆を行くが、それは急ぎではない」とした。
(※筆者考察・・これは戻り売りのタイミングは先という意味と思われます)
 
 

【25】5月30日「テスラCEOマスク氏、マイクロソフト共同創業者ビル・ゲイツ氏のテスラ株大量空売りの規模を暴露して皮肉を投げる『信頼ならないビリオネア、それはゲイツ』」
 
<ブル派>
 
①機関投資家ゴールドマン
 
ゴールドマン・サックス・グループは、電気自動車(EV)の車載電池などに使用される主要バッテリーメタルのコバルト、リチウム、ニッケルについて、今後2年間は相場下落が見込まれるとの見方を示した。バッテリーメタルが21世紀の世界経済で重要な役割を果たすことを投資家は十分に認識しているが、この飛躍的な需要プロファイルにもかかわらず、当社はバッテリーメタルの強気相場はひとまず終了したとみている。ゴールドマンによれば、EVの急速な普及などを背景にバッテリーメタルの長期的な見通しは依然として強い。しかし、長期にわたるEV需要を見越した投資急増が供給過剰を招いているという。リチウム相場には「急速な調整」が入り、スポット価格で1トン当たり6万ドル超の水準から年内に平均5万4000ドル未満、2023年には同1万6000ドル強に下がると同行はみている。(※筆者考察・・最低約半年で1トン6万ドルから来年2023年に1万6000ドルとは大胆かつ意表を突いた予想と感じます。なおEV用メタルの価格が下がるということは、テスラ株には追い風という図式とも解釈できるので、本項はブル派としました)
 
②米国債の行方で真っ向から見方が対立-資産運用会社の見解「債券市場はインフレ対策で必要な利上げを既に織り込んだ」
 
米商品先物取引委員会(CFTC)の調整後データによると、年金基金や保険会社、投資信託などの資産運用会社のロングポジションは20年4月以来の高水準となっていた。このように下記④とは対照的に、資産運用会社は世界的な債券売りの最悪期は過ぎたとの見方を強めている。機関投資家アセット・マネジメント・ワンは、米国債は過小評価されており債券市場の最悪期は過ぎたとの見方を示した。また機関投資家JPモルガンと同モルガン・スタンレーも米国債売りの最悪期は過ぎたとみている。両社は最近、債券市場はインフレ対策で必要な利上げを既に織り込んだと指摘していた。
 
<ベア派>
 
③米マイクロソフトの共同創業者、ビル・ゲイツ氏
 
ゲイツ氏はテスラについてショートポジションを取っており、現時点で手じまいに15億-20億ドル(約1900億円-2500億円)を要するだろうと、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が27日、一連のツイートで指摘した。マスク氏によると、ゲイツ氏のショートポジションは5億ドル相当だったが、その後テスラ株はかなりの上昇を演じたという。ゲイツ氏は昨年、経済専門局CNBCの番組でテスラをショートにしているか問われ、「自分の投資については話さない」と語っていた。マスク氏はゲイツ氏について、「地球温暖化に関する支援を主張する一方、テスラでなお数十億ドル相当のショートポジションを保有している」と指摘。「ゲイツ氏についても信頼の問題があるだろう」とツイートした。マスク氏は信頼度が低いのは政治家かビリオネアかをツイッター上で問う投票の終了後、複数のツイートに回答した。
(※筆者考察・・マスク氏は昨年11月以降に保有株の利益確定に動くなど、実は機関投資家並みの相場観の持ち主だと感じます。それが今の底値反転のタイミングでゲイツ氏の大規模売りポジションを暴露したということは、何か狙いがあるのでしょう。推測されるのは、ゲイツの売りポジをあからさまにすることで、死肉を喰らうハイエナヘッジファンドやロビンフッダーにそれを喰い散らかさせようとしているわけです。そしてコイツは信用ならないと世論に印象づけようとしているわけです。マスクは中間選挙を前にしたこの時期に民主党から共和党に支持政党を変更しましたが、するとほどなくセクハラ疑惑を報じられてしまいました。誰の仕業かをマスクは分かっているはずで、腸が煮えくり返る怒りが、ゲイツに対する売りポジの暴露という仕返しとなったのでしょう。マスクが見事だと思うのは、復讐たるその暴露をマーケットにおいてブル勢力が盛り返してくるまで待ったことと、そのタイミングを見極める相場観です。どうやら秋の中間選挙は盛り上がりそうな気配ですね)
 
④米国債の行方で真っ向から見方が対立-ヘッジファンドの見解
 
米商品先物取引委員会(CFTC)の調整後データによると、ヘッジファンドは先週、米国債のショートポジションを2020年10月以来の水準に積み上げた。上記②とは対照的に、ヘッジファンドは米国債についての弱気を維持したままだ。
 
 

【26】5月31日「中国株式市場に外国人投資家が急速回帰、年初来の流出額が急減する」
 
<ブル派>
 
①海外投資家
 
海外投資家は市場接続を通じて5月に上海、深セン両株式市場に計169億元(約3250億円)相当を投じ、これにより、年初来での流出額がわずか12億元に縮小した。ロシアによるウクライナ侵攻が2月24日に始まったこと、またコロナ感染拡大に見舞われた上海市が3月下旬にロックダウンを開始したことなどで3月の株式市場は動揺し、流出の大半は3月だったという。外国勢による月間ベースの中国株売りは、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が直撃した2020年3月の680億元相当が過去最大だったが、ここにきて中国株式市場に急速に外国勢が戻ってきている。
 
 

【27】6月1日「原油相場は現在の1バレル120ドルに対し、適切水準は70ドル」
 
<ブル派>
 
①機関投資家シティグループ
 
シティグループの商品調査グローバル責任者は、景気減速懸念を受けてアナリストは需要見通しの下方修正を続けており、ブレント原油先物の適正価格は1バレル当たり70ドルだとした(現在の相場は120ドル前後)。シティは需要見通しを日量220万バレルと年初の360万バレルから下方修正。リセッション(景気後退)を見据えている世界で、石油と精製製品の需要は減少しつつあり、ディーゼルの需要が堅調ということはないと指摘した。